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ホビージャパンエクストラ 2017spring 発売中
●バンダイ『スター・ウォーズ』ビークルモデル
●バンダイ『ファインディング・ドリー』クラフトキット
●マックスファクトリー、コトブキヤ、バンダイ、各社の美少女プラモデル
上記のレビューというか、それぞれ「どこか商品として面白いのか、特筆すべきか」分かりやすく書きました。
昨年出た「模型のホメかた。」同様、作例だとか作り方だとかは載っていません。組み立て前のランナー、組み立て途中、塗装していない素組みが、美しく大きな画像で掲載されています。
果ては、説明書とデカールの写真が見開きで載っていて、パーツすら映っていないページもあります。その記事では、キットの説明書のどこがどう優れているのか、何の知識もない人にも分かるよう、丁寧に書いてあります。説明書がなくては誰もプラモデルを組み立てることは出来ないので無視するほうがどうかしているし、記事は「しかし、果たして説明書どおりに組み立てている人はいるのだろうか?」という視点から書かれています。
ようするに、プラモデル・メーカーが「ここをセールスポイントにしたいので、ここを見てください」とアピールしたい点は、ほとんど見ていない。書き手が「ここが凄い」と主体的に感じた部分を、真摯に書く。正攻法のアプローチで、プラモデルという商材の魅力を炙り出しています。
商業媒体のレビュー記事は、だいたいメーカーのアピールしたいポイントだけを列挙してますよね。そして、メーカーの言うことをおとなしく聞くのがライターの仕事だと言わんばかりに、コピペのような記事を量産している人もいます。「います」というか、大多数です。
しかし、僕は知っています。「プラモデルは、もっと面白い!」「メーカーが意図している以上に面白い!」 そんな当たり前のことを、商業媒体は外部に届く言葉で発信してこなかったと思うのですよ。
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僕は、自分でキャンプをしたり山登りしたりするわけでもないのに、アウトドア用品の雑誌を買うことがあります。それは単に、文章に豆知識のような面白さが込められていたり、写真やレイアウトが魅力的だからです。アウトドア趣味のない僕にも、ストレートに届くものがある。僕からすれば、雑誌として面白くて美しくさえあれば、アウトドアでも料理でも、何でもいいのかも知れません。ファッション誌もスニーカーの雑誌も、服や靴は買わないけど、眺めていて楽しいから見るわけです。
そういう自由な場所に、模型雑誌は立てていないような気がするのです。表紙に超絶テクニックで工作・塗装された作例が載っていても、そのプラモデルが何をモチーフにしているのか知らないと価値が分からない。そもそも「これはプラモデルです」と書かないと、実車や実機と区別がつかない場合も多い(だから、号によってはカー雑誌の棚に入れられてしまう……)。
それは「本物そっくりに組み立てて仕上げなければ、プラモデルに価値はない」という思い込みに、模型雑誌が数十年ほど縛られてきたためです。だから、外部から来た人に「こんな大変なの、僕には作れない」と敬遠されてしまう。
どんなに大変でも、塗装や工作に面白さを見出した人は、トライするんです。情報がなければ探すんです。エアブラシも試してみたいから買いもするし、練習もします。
だけど、塗装や追加工作は、プラモデルの魅力の一側面にすぎないと思います。
たとえば、あるプラモデル・シリーズの「箱の数字をそろえる」ためだけに、えんえんと買い集めている人がいます。その楽しみ方は間違っているのでしょうか? 「数字をそろえることが面白い」という人に向かって「とにかく作れ! 作るからには塗れ!」と頭ごなしにルールを押しつけ、無理やりレースに参加させてきたのが我々だったのではないでしょうか。
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だけど、僕は知っています。プラモデルは「次に何を買おうかな」と考えるだけで、すでに面白い。パーツが多いキットにしようか、たまには大きなものを組み立ててみようか、飛行機にしようか船にしようか、あのメーカーのキットはまだ組んだことがないぞ……と検討するだけで、最高に楽しい。
ヤフオクで単に「プラモデル」と入力して検索し、無造作に羅列され、詰めあわされたプラモデルの写真を見るだけでも面白い。プラモデルマニアが出品しているわけではないので、年代も種類もバラバラなんですよ。こうして書いてるだけで、もうワクワクしてきます。
こういう気持ちになっている僕に向かって、あなたは「ちゃんと色を塗れ」「合わせ目を消せ」と強いるのでしょうか。もうそういうのは飽きたし、好きにやらせてくれってのはナシですか? 「作れない言い訳はやめろ」とでも言うのですか?
たまに、そうした脅迫的空気を感じることがあります。「パーツ数の少ないものから作るといいですよ」と、求めてもいないアドバイスをくらったりもします。塗装や工作の上達を目指すのは、価値観のひとつにすぎないのに、アドバイスした本人は、それだけがプラモデル趣味の楽しみ方だと固く信じているかのようです。
けれども、僕は知っています。買うだけ、選ぶだけでプラモデルは面白い。色を塗らず、メーカーが苦しまぎれに選択した成形色で、へんな配色の完成品になったとしても、むしろそのほうが面白い。そして、「塗るのが楽しみ」だという人に、「塗るな」とは僕は言いません。
今号のホビージャパンエクストラだって、塗装を前提にした評価も載っています。
だけど、最終的に塗るのか、組み上げるのか、そもそも買うのかどうかは別問題なのです。僕が、山登りしないのにアウトドア用品の雑誌を見るのと同じことです。誰かから「見てばかりいないで、ちゃんと山登りしろ!」と怒られたりはしないわけです。いきなり、「初心者はこの山に登るといいですよ」などとアドバイスを投げつけられたりもしないのです。
そういう当たり前の自由さを、プラモデルの世界に広げてあげたっていいじゃないか。
途中で投げ出しても、そもそも買わずに眺めているだけでもいいんじゃないの? 「次は、これ買うぞ!」「あれがプラモデルになったら……」と夢想するだけで面白いって、すごい趣味じゃないですか。みんなで上達だけを目標にした窮屈な世界にしてないか、立ち止まって考えてみてほしいと、たまに思います。
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