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2017年4月22日 (土)

■0422■

立川シネマシティで、『キングコング: 髑髏島の巨神』。
640僕たちはもう、何が出てくるか分かりきっているSFX映画に、文脈を期待できないのかも知れない。『ジュラシック・ワールド』は、テーマパークなので、島に行けば恐竜が鑑賞しやすいポジションで待ってくれている。物語内の設定がどうとか言うより、映画としてストレスを感じさせないよう、プロット上の段取りを省いているかに見える。
『フォースの覚醒』では、30年も昔に使われていたミレニアム・ファルコンやXウィングなどが、「お客さんの要望に応えて」何の説明もなく登場した。
3Dや4DXにお金を払って「娯楽映画なのだから細かい理屈はさておいて」とレビューに書きたい観客にとっては、文脈をすっ飛ばしてモンスターやメカニックが出てきたほうが有難いのだろう。

『キングコング: 髑髏島の巨神』では、巨大クリーチャーたちが、拍子抜けするぐらいストレートに現われる。コングは、どこで寝て、どこをどう歩いて生活圏を獲得しているのだろう? そもそもエサはどうしているのか? 突如として海から這い上がってくるが、島の周囲は、そんなに深い海ばかりなのか?
たとえば、宮崎駿という人は、「ここからここまで歩くのに、これぐらいの時間が必要」と、いちいち考えながら「娯楽映画」をつくってきた人だよね。宮崎アニメを見て育った人が「娯楽映画なんだから、細かい理屈は置いといて」などと虫のいいことを言っているのを見ると、軽い虚無感をおぼえる。(もちろん、宮崎アニメを好きとか嫌いとかの問題じゃない。)


さて、『キングコング: 髑髏島の巨神』で、僕らはハイエンドなCGを目撃しに来たはず。
この映画を観にいく動機も結果も「すごいCGを見た」に尽きる。その「見る」という映画の外側の行為を、ブリー・ラーソンの演じる戦場カメラマンが、映画の内側でトレースする。
640_1彼女はカメラを手に、島の原住民や第二次大戦からの生き残り軍人などにカメラを向ける。モンスターには、たった一度しかカメラを向けていない。つまり、彼女だけが観客とは違う視点をもっている。彼女のセリフは多いとは言えないが、モンスターではなく人間を見つめつづける、撮りつづけることで、ドラマが発生している。

この映画のラストは、キングコングの勇姿で終わっているけど、エンドロールが流れはじめると同時に、第二次大戦中に島に流れ着いた老人が、十数年ぶりに実家に帰るシーンが16ミリ・フィルム風の荒れた映像でインサートされる。老人は、夢に描いたとおり、ビールとホットドッグを手に野球の試合を見ている――このドキュメンタリックなシーンが無理なく成立しているのは、ブリー・ラーソンが彼の写真を撮るシーンがあったからだ。
「物事の最前線でカメラを構える」行為が、「16ミリ・カメラで撮ったような自然な映像」の質感に、きれいにバトンタッチされている。
つまり、「島に流れ着いた老人がアメリカに帰宅する」傍流のプロットだけが、しっかりと文脈を保っている。見世物映画としては、あってもなくてもいいようなプロットなんだけど、「見る」描写の積み重ねから人間臭いドラマが生じていく過程には、感動させられた。


レンタルで、押井守監督の『ガルムウォーズ』も観た。
640_2CGがバレバレだと言われるだろうけど、たとえばミニチュア特撮映画を撮りたい人は「本物みたいだ」ではなく、「凄いミニチュアだ」と言ってほしいんじゃないかな。
『ガルムウォーズ』は企画当初、ミニチュアもCGも使うハイブリッドな作品だったと聞く。だったら、冒頭の戦闘シーンは、CGバレバレぶりを楽しむのが正解なんだろう。あんな奇想天外なデザインやギミック、本物と誤認させられるわけないんだから。

同じように、キャラクターたちの甲冑も『紅い眼鏡』のころと変わらない、一点豪華主義だと割り切って見るべきだと思う。「お金かけて甲冑を作ったんだから、後は見逃してくれ」ってスタイルは、ぜんぜんアリ。それとは別に、第三章の森の中のシーンは、人工的な美しさに溢れていて、ちょっと陶然とさせられた。
水面に木々が映るカットなんて、まるでタルコフスキー。この手の低予算SFX映画で、水面のアップなんて普通は撮らないじゃん。そこに「SFXとコスプレが売りの映画だけども、映画としての自我だけは保ちたいんだ」という押井監督のアテイテュード、彼の美学や矜持がギッチリと込められているように感じた。
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