■ケアンズ旅行記-2■
■4/2-1 ケアンズ・セントラル
前日の夜に成田を発って、ケアンズ国際空港に到着したのは、朝の5時。
すぐに持っていた現金をオーストラリアドル(AUD)に換金し、バスの受付で「ケアンズ・セントラル」までのチケットを買う(16AUD)。乗ったバスは……バスというより、ワンボックスカーにスーツケース運搬用のワゴンを繋げたもの。ホテルの名前や行き先を告げると、そこで停車して、スーツケースを下ろしてくれる。
僕が「ケアンズ・セントラル」という大型ショッピングセンターへ行ったのは、その裏からキュランダ(熱帯雨林の中の小さな村で、最初に泊まるホテルは、その近くにある)へ向かう鉄道が出ているから。鉄道のカウンターが開くのは、朝の8時。すでに日本人の観光客が二組ほど並んでいて、一時間ほど待っている間に、どんどん増えてくる。
ところが、もうここからして最初の失敗が始まる。「キュランダ鉄道は観光用なので、スーツケースなんて持って乗れません」と、カウンターのお姉さんにピシャリと言われてしまったのだ。あくまで、日帰りで遊びに行く観光鉄道であって、旅行用には使えない……と分かって、愕然とする。
では、一体どうやってキュランダ村まで移動すればいいのか? 後になってシャトルバスで安く行けると教えられるのだが、そのときの僕は、ケアンズ・セントラルの正面入り口に止まっているタクシーに乗るしか思いつかなかった。少しずつ気温が上昇してきたので、僕はジャケットを脱ぐ。
端正な顔立ちの青年ドライバーの運転するタクシーは、どんどん山の方へ向かう。一時間ぐらいで着くはずだ。
■4/2-2 カードが使えない
青年は、ちょっと迷いながらも、僕の泊まるホテルの前まで運んでくれた。
現金を確保しておきたいので、カードで支払う。ところが、青年は「カードでは支払いが完了しない」という。これが、二番目の失敗だった。そのときから、「なぜかカードが使えなくなっている」と、僕は思い込んでしまった。
とりあえず現金で払い、「明後日の朝、またこのホテル前まで迎えに来てくれないか」と、英語でメモ帳に書いて交渉する。ところが、青年はカードが使えないので、現金で払ってほしがっている。彼はスマホの翻訳ソフトで、「カードが使えない」「このホテルの宿泊費はカードで払ったの?」と、しきりに聞いてくる。しかし、「明後日の朝、またケアンズへ戻りたいので、迎えに来てくれ」という話には、渋い顔をする。タクシー代は、65ドルもした。
そうこうするうち、宿の主人が出てきた。立派なヒゲとハゲがワイルドな雰囲気をかもす人で……僕は、その人にすっかり惚れこんでしまうのだが、本名は書かずに「オヤジさん」とだけ言っておこう。ホテルも、観光地のキュランダ村から妙に離れた場所にあって、おそらく一部では有名なんだと思う。
熱帯雨林の広い一画に舗装道路をしいて、ぽつぽつと別荘のような建物が建っているエリアがあって、2~3軒ぐらいが宿泊業を営んでいる。そのうちの一軒に、僕は二日間お世話になった。敷地内にあるコテージを、丸ごと貸してもらえるのだ。
■4/2-3 キバタン
オヤジさんは、僕をコテージに案内した。広々としたキッチンダイニングもあれば、ベッドはふたつの部屋に分けて置かれている。完全に、家族向けだ。とにかく、まずはシャワーを浴び、軽装に着替えた。
まだ、前に泊まっていた家族が残っているらしく、もうひとつの建物(オヤジさんと奥さんの2人が住んでいて、事務所も兼ねている)から子供の声がした。無理もない、まだ朝の10時なのだ。
僕は奥さんに呼ばれて、事務所で話をした。といっても、僕の英語聞き取り能力が、あまりに低いと知った奥さんは、PCのネット翻訳で会話をはじめた。
彼女は「今晩、私たちと一緒に夕飯を食べる?」「ヒクイドリを間近に見られる場所があるけど、行ってみたい?」などと提案してくれた。だが、どちらの話も曖昧になってしまった(オヤジさんと奥さんは、たまに意見がぶつかるので、そのせいかも知れない)。
奥さんはキバタンを飼っていて、僕の腕にもとまらせてくれた。このキバタンは、「ハロー」のほかに、ちょっと長い英語を話せる。
また、オヤジさんはアフリカの色鮮やかな鳥たち、フライング・フォックス(オオコウモリ)なども鳥舎に飼っていた。
しかし、とにかく観光場所はキュランダ村に集まっているので、「歩いて行ってみたい」と日本で印刷した地図をオヤジさんに見せた。
オヤジさんは、「今日は車で出かけるから、連れてってやるよ」。奥さんは「ヒロ(僕の名前が発音しづらそうなので、ヒロと呼んでもらうことにした)は、自分の足で歩きたいのよ」と、微妙に意見がずれる。
オヤジさんは、「それなら、キュランダ村から帰るとき、スマホから俺に電話しろよ。車でピックアップしてやるから」と名刺を差し出した。しかし、海外ではデータローミングを切っているし、通話できるのだろうか。
(つづく)
| 固定リンク
コメント