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神山健治Walker 発売中神山健治監督、美術監督の竹田悠介さん、大野広司さんのインタビューを担当しました。
竹田さんは『攻殻機動隊S.A.C.』シリーズや『東のエデン』の美術監督、大野さんは神山監督がキャリアをスタートさせたスタジオ美峰の方ですから、必然的に過去作の話が多くなります。
バランスをとるため、神山監督ご本人には『ひるね姫』の話題だけをお聞きしました。
本全体としては、過去作の美術ボードなども豊富に掲載した、資料性の高いものになっています。
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レンタルで、1979年のイギリス映画『さらば青春の光』。原題は“Quadrophenia”で、「四重人格」という意味。この頃の邦題のタイトリングは、本当にセンスがよかった。内容は、モッズと呼ばれるファッションに身をかためた青年の無軌道な生活を、これといった筋立てもなく、アバウトに描いている。モッズはロッカーズと対立しており、後半は彼らとの抗争がメインとなる。
主人公たちの衣装が、とにかくカッコいい。ヌードピンナップを切り抜いて壁に貼っていたり、食堂で食べるランチにいたるまで、いちいち決まっている。ちょっと白々しいぐらいディテールを強調しているな……と思ったら、モッズが流行したのは1960年代の中ごろまでで、実は十年以上前のちょっと懐かしい風俗を描いた映画なのだと分かった。
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すこし調べてみたら、この映画は38年ぶりに続編が製作中なのだという。
その話は、いささか唐突に聞こえる。というのも、この映画は線で結ぶことができないから。ある時代の、局所的な風俗を描くためだけの映画で、いま観てもそれ以外の価値は感じられない。だけど、僕はこの映画のおかげで、ドラッグや音楽と絡みあったモッズというカルチャーを知ることができた。というより、この映画を観なければ、知ることはなかった。映画には、そういう役割もあると思う。
1979年は『エイリアン』や『スーパーマン』、『Mr.Boo! インベーダー作戦』『マッドマックス』などの話題作が国内公開された年だ。邦画も『戦国自衛隊』や『太陽を盗んだ男』など、活気を取りもどしていた。ついでに言うと、アニメ映画もブームを迎えていた。
だけど、そういう華やかな部分だけで映画を語るのとは、別の視点も持たないといけない。一本の映画に、特殊な文化が濃縮的に記録されていることがある。「面白い/つまらない」「ヒットした/コケた」だけで映画を観ていると、そうした価値に気づかないまま人生が終わってしまう。
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旅行用の下着やTシャツを買ってきて、ようやく荷物をまとめはじめた。昨年のアルゼンチン行きで買ったサンダルも、洗って干してある。
いまひとつ準備不足なんだけど、ケアンズは日本語の通じる(らしい)旅行地なので、困ることはないだろう。今までの旅行の中では、最も近い海外だ。
【追記】『さらば青春の光』という邦題は、モッズというライフスタイルがあまりに局所的なので、日本の観客の視線を「誰にでもある青春の一時期」に誘導するための苦肉の策だったのだろう。
“Quadrophenia”という原題は、ザ・フーを知らないと、いったい何のことだが分からない。だが、その普遍性の欠如にこそ、「忘れられた時代を切り取る」意味があったんじゃないかな……。
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