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ホビー業界インサイド第21回:あまりに広大で自由な「ゲームズワークショップ」の高密度なミニチュアと世界観に、ホビー業界の沃野を見た!(■)モデルグラフィックス誌の連載、「組まず語り症候群」でミニチュアを取り上げさせていただいて以来、ちょくちょく客としてうかがっていたゲームズワークショップさんへ、ついに取材を申し込みました。
あの壮絶な成型のランナー写真を掲載したのは2014年12月ですから、遅すぎるようなしつこいような、不思議なタイミングでの取材となりました。
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すっかり巨匠監督となったチャン・イーモウの2000年の作品、『至福のとき』をレンタルで。
冒頭、白髪の混じった冴えない男と太った中年女性が、お見合いしている。男は、結婚を焦っているが、女には離婚した元夫との間に、子供が2人もいるという。女の家に行くと、たしかに丸々と太った男の子がいる。老けた男と太った母子、こんなパッとしない人たちの映画なのか……とウンザリしはじめた矢先、家の奥に、スラリとした背格好の少女が座っているのに気づかされる。静かに座っている姿を、背中から美しく撮っている。その、凛とした佇まいに、思わずハッとさせられる。
少女は、目が見えない。父親は、少女を置いて失踪してしまった。なので、母親がわりの女は少女を家から追い出して、どこかで働かせたいと愚痴る。それを聞いた男は、目の見えない少女なら簡単に騙せるだろうと、ニセの職場をつくる。
察しのいい観客なら早々と読めてしまうと思うが、男は少女を騙しているうち、彼女を娘のように大切にしていく。少女は騙されていると気づきながらも、不器用な彼を慕っていく。
この甘酸っぱいウソは、いずれバレる。その、ウソの滞空時間に漂う心地よさを、ひたすら堪能する映画だ。
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新人の美少女俳優の発掘に長けたチャン・イーモウ監督は、美醜に容赦がない。最初に冴えない中年男と太った女性を同じフレームに押し込め、さらに太った子供を出して画面をギュウギュウに暑苦しくしておいてから、きれいに痩せた少女を出す。
その外見の対比は残酷といってもいいぐらい極端だが、そうでもしなければ、幸薄い少女の美しさが引き立たない。
また、「中年男が盲目の少女を密室で働かせる」設定には、どこか性的な淫靡なムードが入り込みそうなものだが、それについても、先手が打たれている。
金策に困った男は、同僚からの提案で、小さなラブホテルのような施設をつくる。密室にベッドだけ置かれた部屋を、カップルに貸し出すのだ。
当初、男はその部屋で少女を働かせようとするが、部屋は目の前で撤去されてしまう――つまり、性的なムードをもった舞台を、物理的に排除しているわけだ。
それなら、もう映画に性的な関係を持ち込む必要はない。必要はないのだが、少女の下着姿は頻繁に登場するので、海面下でセクシャルな要素は持続している。
プロット上では、性的な要素をしっかり排除している。だが、ビジュアル面では少女の下着姿を隠さない。この二律背反が、映画に力を与えていることは、間違いない。
そして、論理と情動との両方を機能させる作家を、体の芯から尊敬する。そうした作家の才覚に気づける、優れた観客でありたいと努めている。
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