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2017年3月 4日 (土)

■0304■

レンタルで、『シチズンフォー スノーデンの暴露』。2014年製作のドキュメンタリー。
640エドワード・スノーデンのことをよく知らない、名前ぐらいしか聞いたことがない……という人でも、大丈夫。彼が何者で、2013年に何が起きたのか、とても丁寧に解説されている。
国家安全保障局(NSA)の市民監視プログラムをリークしたのに、アカデミー賞を受けたのだから、面白い。

映画は、まだスノーデンがマスコミに姿を現す前、暗号でメールをやりとりしているところから始まる。やがて、米国法の及ばない香港のホテルの一室で、スノーデンとジャーナリストとの間で、NSAの内情をマスコミに暴露すべく、慎重に話し合いが進んでいく。
スノーデンが、ホテルの電話を指差して「このタイプの電話機は、盗聴機として遠隔操作可能なんです」と話しているとき、なぜか火災警報器が鳴るあたりから、緊張感が増してくる。


監督は、米政府からマークされ、ベルリンに滞在しているローラ・ポイトラス。後々、スノーデンの存在が大きくなることを見越して、彼の一挙手一投足を、粘り強く撮りつづける。それこそ、鏡の前で髭を剃っているときの表情まで、余さずに。
いよいよリークした情報がテレビで騒がれはじめた翌朝、ホテルの窓から、曇天の香港の風景を見渡すスノーデンの言葉がいい。「何だか、こんな気分は初めてですよ。なんと表現すれば……言葉では、伝えられません。一時間後に、何が起きるか分からない。怖いけど、同時に解放感もある。変化する予定がないから、計画も立てやすく、とにかく行動するのみです」と、パチンと指を鳴らす。
「僕はコソコソしたくないし、する必要もない。堂々と出ていくほうが強力だと思うんです。僕は怖くないし、誰も怖がる必要もない」。この言葉にも、強く胸を打たれた。
スノーデンと今後の計画を相談する記者の言葉も、力強い。「帰ったら、すぐ投稿しよう。調査だ何だと言うヤツらに、宣戦布告だ。この精神と態度を……相手の脅しへの怖れを知らぬ態度を、今後は維持しよう」。
「最高ですね」と、スノーデンは返す。「これまで、真実を言う者は、匿名で隠れて言うものでした。そんなの、クソくらえです」。

政治の映画というよりは、勇気の映画だ。権力やシステム、社会に対して、どんな態度を持つべきか。それについて真面目に考えてこなかった人には、むしろまったく縁のない映画。
どの政党を支持するとか、どの政策に反対するとかいう話ではなく、自分の接する状況に、どう抗うか。スノーデンの気骨、気概は、そのことを教えてくれる。
抗わない人生は、創造的ではない。ひたすら、退屈なだけだ。


『この世界の片隅に』、日本アカデミー賞、最優秀アニメーション作品賞、おめでとうございます。
公開直後、「のんさんの事務所の圧力で、テレビでは『この世界の片隅に』の情報を流せない」といった流言を、facebookで、僕にささやいて来た人がいた。「不満があるなら、テレビ局にメールしては?」と返事したけど、それきりだった。
おそらく、「そうですよね、ひどいですよね」と共感してほしかっただけなのだろう。

その場かぎりの共感のみが期待され、真実を知らず調べず、ただ「溜飲が下がればいい」だけの時代。でも、だからこそ『この世界の片隅に』の静かな広がりは、一縷の希望なのかも知れない。『君の名は。』だって、東宝配給以外これといった武器もなく、熱烈なファンにのみ支えられている映画だと思う。

(C)Praxis Films (C)Laura Poitras

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