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レンタルで、『さらば冬のかもめ』。
“The Last Detail”という味気ない原題に対して、水兵の話で、雪の降るシーンがラスト近くにあるので、邦題は『さらば冬のかもめ』。映画全体を詩的に包みこむ、見事なセンス。
3人の水兵が、「世界一うまいソーセージ・サンド」など、ジャンク・フードをあれこれ食べる。安そうな缶ビールを次々と買ってきては、いっぱい飲む。3人のうち、ひとりは囚人として護送中なのに、どんどん寄り道していく。その寄り道の数日間を描いた映画だ。
最後に、3人は冬の公園にたどりつく。ジャック・ニコルソンのモノローグとともに、雪景色をえんえんとPANする。その長いPANが「この映画の終わりも近いんだな」と、しっとり伝えてくれる。
PANが終わると、3人は公園でソーセージを焼いて、木の枝にさして食べている。ホットドッグを作るつもりが、バンズを買い忘れてしまったのだ。ランディ・クエイド演じる、まだ18歳の新兵が、焼いたソーセージをマスタードの瓶に直接つっこみ、うまそうにかぶりつく。
冷たい雪とソーセージを焼く火。買い忘れたバンズと新品のマスタードの瓶。「寒い/暖かい」、「無い/有る」の静かなコントラストによって、「楽しい時間は、そう長く続かないのだな」といった無常観がただよう。
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この映画では、囚人として拘束されたランディ・クエイドを、自由放漫なジャック・ニコルソンが解放する。その二年後、ジャック・ニコルソンは『カッコーの巣の上で』劇中で、精神病院に入院する。
誰もが完全に自由な映画は、どういうわけか面白くない。
不自由な身から自由へと解放されていく、あるいはその逆に、不自由に追いこまれていくシチュエーションを描いている映画ほど、面白い。
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【先行レビュー】デアゴ版『バック・トゥ・ザ・フューチャー』デロリアン1/8モデル、重さ8kgの怪物だった(■)
たったひとりで、模型ジャーナリズムを開拓している、からぱた氏の鮮烈なレビュー。
たとえば、ガンプラの新製品をちょこっとレビューするんでも、この人に挑むつもりで取り組まないと、模型の世界は進歩しないと思う。
「工作や塗装の知識と技術を身につけ、苦しくても頑張ってプラモデルを完成させる」根性論は、多様化しつづける模型シーンに追いついていないと思います。多色成形、接着剤不要キットが、わずかながらスケールモデルの世界へも広がり、部分塗装用・お手軽仕上げ用のマテリアルが各社から販売されている状況下、プラモデルは必ずしも「上達」を目的とするホビーではなくなってきているのではないか(……という話を、いまだ疑問形で話さないと、保守的な人たちから怒られそう)。
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僕は、年末年始、タミヤのスケールキットばかり、8箱ほど未塗装で作りました。
塗装は苦手だし、なによりも製品の“素”の味わいを楽しみたいし、吸いつくように組み合わさるパーツ間に接着剤を流すだけで、かなり贅沢している気分に浸れます。
他人に見せることが目的でなく、単に組み立てることが楽しい……という人は、僕のほかにもいるかも知れないし、「基本工作ぐらい覚えろ」「色を塗らないと話にならない」といった金科玉条が、僕たち野良モデラーにとって圧力になるような状況が生じているとしたら……もしそういう状況でも、野良モデラーはニッパーとヤスリと接着剤だけで、生き延びると思いますけどね。
ただ、素うどんを味わうようなこの楽しみを、うまく言語化したいなあ……とは思います。
(C)1973,RENEWED 2001 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES,INC.
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