■11/2-1 ふたつの空港
ようやくアルゼンチンに入国できたのに、空港のインフォメーションで「プエルト・イグアス行きの飛行機は、どこから出ますか?」と聞くと、「この空港からは出発しません。別の空港からです」と、予想をこえる回答を聞く。どういう意味だろう、成田の第一ターミナルと第二ターミナルみたいなもんだろう……と勝手に解釈して、案内お姉さんの「バス」「一時間ぐらい」という言葉を無視して、ターミナルCへと歩きはじめた(この場所はターミナルA。なぜか、Bは存在しない)。
300メートルぐらい離れたターミナルCで聞いても、「ここではなく、別の空港」との答え。しかも、ドアの外を指差して「タクシー」と、一言。ここまで簡潔な英語だと分かりやすい。「では、その別の空港の名前を教えて」とメモ用紙を差し出すと、「AEROPARQUE」とボールペンで書いてくれた。
もう先に答えを言おう。僕の下調べが甘かったのだが、海外からの国際便が発着するのは、エセイサ国際空港(Aeropuerto Internacional de Ezeiza)。僕が右往左往しているのが、エセイサ国際空港のターミナルAとC。
そして、プエルト・イグアスへ行くには、ホルヘ・ニューベリー空港(Aeroparque Metropolitano Jorge Newbery)に、移動しないとダメである。どちらの空港もブエノスアイレスにあり、ArBusという会社がふたつの空港間に、往復バスを走らせている。片道150ペソ。所要時間1時間。
■11/2-2 タクシー
もちろん、ブエノスアイレスにふたつの空港があるなんて重要な情報は、無事にホテルに着いて、夜中に「旅の指さし会話帳」を熟読していて把握したこと。今は大急ぎで、タクシーに乗りこむしか知恵がない。
「AEROPARQUE」と書いてもらったメモを渡すと、運転手の浅黒いお兄ちゃんは「まかせとけ!」って感じで走りはじめた。あと3時間で、僕の乗るべき飛行機が離陸してしまう。最悪のケースを考える。
タクシーは高速道路に乗る。高速を下りると、海が見えてきた。いや、海ではなくてラプラタ川なのだが、まったく土地勘がないので、こんな海と市街地の間に空港があるのか、不安になってくる。
運転手のお兄ちゃんは、「航空会社はどこ?」と聞いてくる。どうやら、もう近くまで来ているらしい。チケットに印刷された「LATAM」という文字を見せると、「ああ、LATAM社ね。オーケー」と即座に理解して、両手の親指を立てて「どう? 俺、けっこう使えるでしょ!」といった笑顔で、何か決めゼリフを言った。思わず笑い声が出てしまうほど、いい笑顔だった。
だが、カードを使えるかどうか聞くと、「えー、それは無理……」と、とたんにシュンとしてしまった。「じゃあ、米ドルは使える?」と聞くと、スマホで計算してくれた。52ドルだったけど、60ドル渡した。
お兄ちゃんは満面の笑みで荷物を運んでくれて、握手で別れた。出発まで2時間もある。LATAM社のカウンターに並んでいると、お兄ちゃんは、僕が車内に忘れていったボールペンとKindleを届けにきて、またしても握手して、僕らは別れた。Kindleを忘れるなんて、よっぽど慌てていたんだな。
■11/2-3 イグアスの滝国際空港
チェックインをすませて航空券を手にすると、僕は売店でシュエップスを買った。まだペソを持っていないので、カードで支払う。
上の写真が、ホルヘ・ニューベリー空港。いい雰囲気のカフェが並んでいたので、本当はもっと、ゆっくり過ごしたかった。ここから、イグアスの滝国際空港(Aeropuerto Internacional Cataratas del Iguazu)へ飛ぶ。イグアス空港は国内の便しか離発着しないのに「Aeropuerto」、すなわち「国際空港」という名前なので、まぎらわしい。
ネットから座席指定できなかったので、窓際のシートで2時間をすごす。そろそろ暑いので、日本から着てきたジャケットを脱ぐ。昼間の気温は、11月でも30℃前後だ。
■11/2-4 プエルト・イグアス
もう迷うのはゴメンなので、イグアスの滝国際空港に着くなり、プエルト・イグアス市内へのバスを探す。ホテルには「16時ごろに着く」とメールしてあるので、ちょっと焦っている。バスは1時間後に出発とのことなので、タクシーにしよう。空港にあるタクシー会社のカウンターで、米ドルが使えるかどうか確認して、さっさと前払いしてしまう。そろそろドルをペソに替えたいのだが、ホテルのカウンターで両替すればいいや……ぐらいに考えていた。
先に書いておくと、イグアスの滝国際空港からプエルト・イグアス市内までは、タクシー代300ペソだ。市内と空港をバスで往復したい人は、ネットで調べておくといい。いきなり市内のバス・ターミナルに行っても、「別の場所でチケットを売っている」らしいので、事前確認したほうがいい。
ともあれ、僕は米ドルでタクシーを利用した。端正な顔立ちの運転手は、「ホテルの名前は?」と聞いてくれた。ホテルの地図を見せると、プエルト市内のはずれにある、小さなホテルまで車を走らせてくれた。いつも、ホテル探しで死ぬほど迷うので、とっても助かった。
■11/2-5 ホテル
ホテルは、小さくて頑丈な鉄扉をあけてもらわないと、中に入れない。出入りするにも、鉄扉用の解除キーを使う。それだけ物騒なエリアということなのだろうか、とにかく何もない住宅街にある建物だ。僕に割り当てられたのは、4人部屋で広い。周囲は静かだ。
ホテルのオーナーは、若い長髪のお兄さん。彼の飼い犬が、大喜びで僕に飛びついてくる。荷物を置いて、半そでのシャツに着替えると、僕はバス・ターミナルを探すために出かけた。日本で印刷した地図を、バッグに入れる。それと、米ドルをペソに換金しないと……このペンションのような、フロントすらない小さなホテルでは、両替は無理な気がした。
両替所は、現地語で「Cambio」だ。「旅の指さし会話帳」にそう書いてあるので、メモ帳に書き写しておく。
ホテルの周囲は閑散としているが、日本で印刷した地図を片手に、まず大通りに出てみた。中心街に向かうと、さすがに人が増えてくる。
Av. Victoria Aguirre(ヴィクトリア・アギーレ通り)、街を斜めにつっきる、この大通りさえ覚えておけば、まず迷わない。……そう確信するまで、もちろん1時間ほど汗だくでさまよったわけだが。中央車線にヤシの木が植えてあって、それがヴィクトリア・アギーレ通り。
さて、日本のブログで見つけた地図によると、ヴィクトリア・アギーレ通りにバス・ターミナルが面していることになっている……が、それは間違い。面していない。地殻変動でバス・ターミナルが移動したのでもないかぎり、誤りである。
正しいバス・ターミナルの場所は、次のブログに掲載しておこう。(つづく)