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2016年11月24日 (木)

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モデルグラフィックス 12月号 明日発売
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●組まず語り第49夜
今回は、SMER社の“オーセベリ船”のキットです。
こういう、無味乾燥とした地味キットから、何とかして見どころを探しあてるのが、いちばん楽しいのかも知れない。「すずさん勝手に立体化計画」も、先月終了しておいて良かった……今月も連載があったら、「あの素晴らしい映画に対して、あまりにもチャチな連載」と、怒られそう。今月から、正常運転です。


友だちに自主映画の試写会に呼ばれた翌日、第7回三鷹コミュニティシネマ映画祭()。僕は、実行委員のドカン隊長から、片渕須直監督のトークショーの聞き手に指名されていた。
片渕監督の会場到着が16時で、その時間には打ち合わせが始まる。ということは、会場で『マイマイ新子と千年の魔法』は見ることができない。なので早朝、Blu-Rayで見ておいた。会場では、『アリーテ姫』のみ、35mmフィルムで見ることができた。

今までのトークショーは、自分で企画したり、いつも話している仲間と盛り上がって、ワンフェスやマチアソビで計画性もなく話してきたものばかり。今回は、ボランティアのスタッフの方たちがお茶を淹れてくださったり、ゲスト待遇なので、戸惑う。徒歩数分のところにある会場で、僕も客として行ったことはあるけど、まさかスタッフの皆さんが、こうまでしっかりしているとは思わず、何だか恥ずかしい気持ちになった。

片渕監督と一緒に、『マイマイ新子と千年の魔法』の岩瀬智彦プロデューサー、『この世界の片隅に』でも宣伝を担当している山本和弘さんも見えられて、時間が7年前に巻き戻ったような感覚になる。


トークの内容は、先月、実行委員会の方たちと綿密に話して決めてあったが、前夜、ドカン隊長から「声優のたちばなことねさんがお客さんとして来るので、飛び入り参加してもらいましょう」とメールがきて、とにかく40分以内に話を進めるのが、精一杯であった。
終盤ちかく、片渕監督が「『この世界の片隅に』のクラウドファンティングの原型は、『マイマイ新子』の署名活動がベースにある」とおっしゃって、面食らった。もちろん、その場では笑顔で返したが、自分から署名活動の話だけは、決してすまいと思っていた。

七年前の自分の未熟さ、粗暴さが想起されて、悲鳴が出そうになるからだ。
むしろ、劇場に直接交渉したり、貯金を切り崩してポスターを刷ったり、映画上映に携わったことのほうが実りある活動だったと思っている。僕だけではなく、全国で自主的に活動された方たちが『マイマイ新子』を延命させた(そういえば当時、浜松で劇場に働きかけた方が会場に見えられて、7年たって、初めてお会いできたのであった)。
劇場やイベントでの上映が増えつづけて、もう自分では追いきれなくなったし、追うのもやめた。いま、『この世界の片隅に』を誉めるさいの枕詞のように、『マイマイ新子』の名前が挙がる。DVDがレンタル店に並んだことも大きいのだろうが、どこの誰が見ているのか分からないぐらい、広く拡散する状態を望んでいた。いつまでも、熱烈なファンのみが中核にいる状態は、僕は好きではない。
これからも永遠に増えつづけるであろう、世界中の鑑賞者全員が、映画に命の薪をくべつづける。


どんな貧しい興行状態で上映された無名の映画でも、未来永劫、誰にでも鑑賞するチャンスが与えられている――その即応可能なアイドリング状態こそが、文化なのだと思う。
特定の映画タイトルを挙げて、ことあるたびに「歴史に残るクソ映画」などと決めつけている人を見ると、「何も分かってねえな」と苦笑してしまう。「クソ映画」なる評価は、いつでも誰かによって覆される可能性がある。その可能性を考慮しない、他人の秘めた未知の評価軸を尊重しない人間は、文化に見離されている。「好き/嫌い」「快/不快」といった曖昧な、動物的感覚の中で一生を終えるのだと思う。

ちょっとでも自分の気にいらない感想に出会うと、「本当は見ていないんだろう」と検証をはじめる人がいるが、それは自分を牢屋にとじこめることだ。
☆5点評価、百点満点評価など、分かりやすく目に見えやすい評価に固着すればするほど、自分の身動きがとれなくなっていく。
映画は、無限に解放されている。風のように自由でなければ、未知なる映画と出会うことはできない。変化の可能性に自分を泳がせておかねば、自らの価値観や美意識は、決してアップデートされない。


昨夜は「第7回三鷹コミュニティシネマ映画祭」の最終日だったので、イベント後、打ち上げImg_9792 パーティが催された。片渕監督はネットテレビに生出演するとのことで、サイン会を終えて、スタジオに向かった。打ち上げには、飛び入りでステージに登壇していただいた、たちばなことねさんが参加された。
帰り際、ドカン隊長が建物の出口まで送ってくれた。今はなき吉祥寺バウスシアターで『マイマイ新子』を上映していたときも、深夜に酔っ払って、ドカン隊長にタクシーに押しこめてもらったものだった。

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