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スター・ウォーズ モデリング アーカイヴ 発売中●廣田恵介の「組んだ語ったSWキットレビュー症候群」
●プラモデルの充実は、僕らとスター・ウォーズの関係をどう変えるのか?
上記、二本の記事を、別冊用に大幅に加筆しました。
後者は、『スター・ウォーズ』のビークル、クリーチャー類に詳細な名前の設定されたと思われる90年代にさかのぼり、ハスブロ社のオモチャやジョージ・ルーカスによる初期シナリオにも触れています。
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レンタルDVDで、ダニー・ボイル監督『トランス』、『エージェント・ウルトラ』、ゴダール率いるジガ・ヴェルトフ集団の『ウラジミールとローザ』。こんな政治色の強い実験映画が86円で借りられる日本の、どこが文化後進国なものか。
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キッズステーションで、『銀河漂流バイファム ”ケイトの記憶”涙の奪回作戦!!』。
『バイファム』は、実は全話とおして見たことはない。番外編OVA『消えた12人』で、男言葉で話す赤毛の女の子、シャロンが「おばけを怖がる」シーンに魅了された。この『ケイトの記憶~』でも、シャロンの描き方は、際立っている。
他の子どもたちが楽しそうに肩を寄せ合っているシーンでも、シャロンだけは、ぽつんと離れたところにいる。
彼女の友人は、軍事マニアの少年、ケンツだ。ケンツはシャロンのことを「ガリペチャ」「ペチャパイ」とからかうが、彼女は「ちょっとは大きくなってきた」「見せてやろうか」と、まったく臆するところがない。そんなオープンな態度を、たまに他の女の子に注意される、その立ち位置がいい。
『ケイトの記憶~』は、大人の女性であるケイトと子どもたちの再会、ケイトの失われた記憶を、子どもたちが呼び覚まそうと奮闘する様を描いている。
その奮闘の核心をになうのは、いつも男とばかり口をきいているシャロンなのだ。
シャロンは、ケイトにもらったバンダナを、なんとタンクトップの胸元から取り出し、自分の髪に巻く。ケイトの髪型をまねることで、彼女が記憶を取り戻してくれると思ったのだ。このときのシャロンの芝居がいい。「見覚えない?」と髪にバンダナを巻き、ケイトに見せつけるように「ほり」と自分の髪を指さし、「ほりほり、おうおう」とヒジでこづく。声の原えりこさんのアドリブっぽいのだが、なんてキュートなんだろう。
(原えりこさんのシャロン、川浪葉子さんのココナ……サンライズの80年代ロボアニメは、蓮っ葉な女性キャラに恵まれていた。)
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さて、シャロンが決定打となる小道具を取り出したのに、ケイトは何も思い出せず、場が白けてしまう。ケンツが「モデルが悪いんじゃねえの?」と、余計な一言をつぶやく。
シャロンはバンダナを指先でくるくる回しながら、ガッカリしている一同の後ろを歩く。去り際、そっぽを向いたまま、「聞こえたぞ」と、ケンツの頭を軽く叩く。その力の抜け加減が、気持ちいい。
結局、ケイトの記憶が蘇らないまま、子どもたちは空港で彼女と別れる。このとき、シャロンは離れた場所で、旅行カバンの上に座っている。みんなが右を向いてるとき、ひとりだけ左を向いて寂しそうにしているキャラクターなのだ。
タンクトップの上から羽織った、大人っぽいコート。その胸元には、ケイトにもらった赤いバンダナ。シャロンは、何かひらめいて、足早にケイトに駆け寄る。
「オレより、やっぱりケイトさんの方が似合うよ。さよなら!」とバンダナをケイトに押しつけて、振り向かずに立ち去るシャロン。このとき、シャロンの顔は見えないのだが、涙声になっている。
飛行機が離陸する寸前、ケイトは記憶を取りもどすのだが、シャロンの返した赤いバンダナは、何の役にも立っていない。その空回りぶりが、シャロンなりの無駄なあがきというか、彼女の不器用な誠意のあかしに見えて、よけいに寂しい。
シャロンは、自分が女らしくないことを知っている。それでもいいじゃないか、と開き直る。自分の居場所がないと知っているから、いつも一人旅をしているような、風のような人生なのだ。
(C)サンライズ
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