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2016年9月27日 (火)

■0927■

昨夜は『ゼーガペインADP』、関係者&マスコミ試写会。新宿ピカデリーにて。
18b18b63764ae18b僕は劇場用パンフレットやBDのブックレットを構成したので、セリフが入ったアフレコ用の映像(CGは大部分が完成ずみ)を見ていました。その映像を見て驚く前に、関係者から「今度の新作は、こういう構造になっている」と知らされて、すでに十分、驚いていました。
にも関わらず、実際に完成した映像から、とめどなく溢れるサービス精神を感じて、終わったあとは笑顔になっていました。多分、この作品を見て、「どこも面白くなかった」という人はいないでしょう。どこかひとつは、見て良かったと思える要素が入っているはずです。

「アレが駄目なら、コレをどうぞ」「コレが駄目でも、まだアレが残っている」という具合に、次から次へとお楽しみ要素を盛り込んで、料理がお皿から溢れている状態です。「絶対に楽しませる」「決して飽きさせない」前向きなエネルギー、バイタリティは、テレビ版を凌駕しています。

一度きりの登場ではもったいない、個性の際立った新キャラクターたち(僕はテレビではワンカットのみの登場だったツムラ・サチコ推しです……)も楽しいのですが、個人的にはメカ! 主役のアルティールの密度感も素晴らしいし、ザコ級の敵メカまで「こんな動きをするのか!」と唖然。メカ目当てで見ても、十分に満足できるはず。


日本のテレビアニメは『鉄腕アトム』の時代から、バンク・システムと二人三脚でした。最近は少なくなりましたが、かつては戦闘シーンなどで「同じ原画を何度も使う」手法は珍しくありませんでした。

しかし、そもそもセルアニメは「同じ絵を繰り返して使う」ことで成り立っています。たとえば、歩く芝居がそうです。一歩ずつぜんぶ原画を描きなおしていては、二度手間になってしまいます。髪や服のなびきも、リピートです。きれいなリピートは、見ていて楽しいものです。
そして、口パク。会話するカットです。閉じ口・開き口・閉じかけの口の三枚だと思いましたが、セリフに合わせて巧みにタイミングを変えつつ、繰り返して使っています。
そのデジタル的な構造は手抜きではなく、セルアニメの基本概念、考え方の根本、いわば「原理」です。

さて、『ゼーガペイン』は、「ごく限られた生活空間を擬似的に再現した仮想現実」がメイン・モチーフです。その仮想空間は数ヶ月でリセットされ、人々(のデータ)はまったく同じ暮らしを、何度も何度も繰り返しています。
この物語設定が、セルアニメの「繰り返して同じ絵を使う」原理と、あまりにも密接にリンクしているため、『ゼーガペイン』は「アニメである」ことに自覚的な、自己批評的な作品になっていると思うのです。


たとえば、第7話で主人公のキョウが、ガールフレンドのカミナギを抱きしめます。
まったく同じ原画が、第20話で使われています。しかし、このときはカミナギが感情表現できなくなっているため、第7話の「戸惑って目をパチパチさせる」芝居はありません。じっと目を開いたままです。同じ原画でも、撮影で意味を変えることが出来るわけです。

むしろ、第7話と第20話で同じ絵を共有しているからこそ、キョウとカミナギ、2人の関係が決定的に変化してしまったことがハッキリと分かるのです。「同じ絵だからこそ、細かな差異が際立つ」わけです。

さらに言うなら、キョウたちはサーバー内で生活している記憶体にすぎないため、他者との共通部分の多い身体データは、「欠損部分を平均化して補っている」設定です。しかも、同じ生活を無限に繰り返しているため、行動も仕草もパターン化されているのではないか?
劇中でも、「今日は誰がケガをする」と、細かな出来事まで予定調和に組み込まれていることが明言されます。
この世界設定を映像化するとしたら、セルアニメが最も適しています。セルアニメの構造自体が、「繰り返される動作」を懐胎しているからです。
まったく同じ絵が使われているのは、この世界が無限にループしているからだ……と、説得力をもって説明できるわけです。テレビの絵を転用している『ゼーガペインADP』で何が起きるのか、何となく察しがつくのではないかと思います。


そして、新作カットを挿入したり、サーバー外の「現実世界」のシーンでもテレビの絵を転用することで、『ADP』は「ループする世界を同じ原画で表現する」約束事を、少しずつ壊していきます。

何かが変化することなしに、セルアニメで物語ることはできない……と、『ADP』を見て、あらためて気づかされるのです。昔の絵に手を加えることの意味、まったく新しく描くことの意味など、類推したり、批評しがいのある、奥行きをもった作品です。
さらに痛快なのは、テレビ版の『ゼーガペイン』を裏打ちしているように見えて、完全に合致してはいないこと。あえてズラしたり、ボカしたりしてある箇所に気づいて「!?」となります。
謎を解くには、輪をかけて大きな謎をかけるしかない――その大胆不敵さが、『ゼーガペイン』の鮮度を保ち、リニューアルし、レトロではない「2016年の新しい作品」たらしめているのです。素晴らしいことです。

(C)サンライズ・プロジェクトゼーガADP

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