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アニメ業界ウォッチング第24回:今年75歳、やぶれかぶれのアニメ人生! 丸山正雄インタビュー!(■)最初は、『この世界の片隅に』の支援のつもりで、インタビューをお願いしました。
しかし、お話を聞いているうちに大きなうねりが生じて、すっかり丸山さんのペースに乗せられ、意外性に富んだ記事になりました。
飄々としているようで、とてつもないオーラをもった方です。普通に、惰性で生きていたら、こんな魅力的な75歳にはならないでしょう。
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『傷物語II 熱血篇』。月曜に予約したのだが、台風がすごいので断念(ネット予約は天変地異が起きてもキャンセル不可能)。やむなく、台風の去った火曜に再予約して、最前列で見てきた。トータル3,000円も払ってしまったわけだが、その価値はあった。2Dアニメの手法を借りているだけで、ヌーヴェルヴァーグに近い。ATGの映画や、ピーター・グリーナウェイのような実験精神に富んだ奇作。
それでいて、おっぱいが揺れるとか、パンティを脱ぐとか、下世話なシーンを忘れず入れて、余裕を持たせている。すさまじい暴力描写があるので、PG12指定。
雨の降っているシーンで、実写かと思うようなフォトリアルな、シズル感の強い水の表現がある。それはリアリティを志向したのではなく、他のカットとの違和感を狙っている。
人物同士が、向きあって会話している。だが、セリフの中で感情が高まると、いきなり走りながら叫んでいるような絵が入る。もちろん、カットはつながらない。つながらなくていいのだ、他の映画では絶対にやらない表現が見られるのだから。
「アニメだから、これでいいんだよね」「こういう表現をすれば、アニメとして整合性がとれるよね」といった約束事を、片っ端から破壊して、「美しければ何でもいい」衝動だけで出来たような映画。暴力描写すら、美しいんだ。
夜のシーンが多いんだけど、しっとりとした背景の美しさに陶然となる。ラスト近く、阿良々木と羽川が会話するシーンは、夕暮れの寂しい原っぱで、雑草が風に揺れている。その雑草は3DCGだと思うんだけど、おそらくトータルバランスなんて無視してるんだけど、とても綺麗。
孤高であることって、それだけで美しい。価値がある。「詩は歴史に対して垂直に立っている」という稲垣足穂の言葉があるけど、この映画にも当てはまる。孤独で、気高い映画。
(追記:70年代以降のテレビ出身のアニメ映画って、「映画」という媒体に対するコンプレックスが多かれ少なかれ、あったと思う。そのコンプレックスが、エネルギー源にもなっていた。しかし『傷物語』には、実写映画すら取り込む、利用するような不敵さを感じる。)
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男性フェミニストが東京五輪PR映像のJKが性的であるとして炎上→ブログから制服JK好きを告白した部分を削除(■)
森岡正博さんの『感じない男』と同じだね。森岡さんもたまに、「俺を興奮させる表現は、すべて禁じてくれ」と受けとれるような、素っ頓狂な発言をしている。
児童ポルノ規制法は、「一般男性が性的に興奮するもの」だけを規制しているので、被写体の児童の内心を無視して、大人が大人を罰する法律に堕してしまっている。「性的に興奮すること=汚いこと、悪いこと」。大人だったら、成熟した大人の女性にのみ、魅力を感じなさい。興奮しなさい……心の動き、情動をコントロールしたがっている人たちがいる。
こういう性癖はいけない、こういう表現は性的搾取だ……などの表層の話に明け暮れるほど、性犯罪被害者への視線がボヤけていく。社会の根底は、ドロドロと澱んだままだと思うのですよ。
女学生の制服が性的アイコンだと騒ぐ人は、池谷孝司さんのルポルタージュ『スクールセクハラ』でも読んで、己の浅はかさを思い知ってほしい。
(C)西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
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