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【懐かしアニメ回顧録第21回】「人物が何に触れていたのか」気にするとわかる、「ほしのこえ」の距離感(■)
アキバ総研の連載です。
『ほしのこえ』の冒頭、ヒロインの美加子は、携帯電話と階段の手すり、ドアノブにしか触れていません。しかし回想シーンでは、彼女はボーイフレンドの昇の肩に触れているのです。
僕は、それが「ドラマ」だと思います。どのセリフより雄弁に、美加子が何を失ったか、物語っていると思います。
「物語」がセリフのみによって理解できるなら、それは映像作品である必要はないはずです。……が、声優の語りで「聞かせる」タイプの作品があるから、日本のアニメはいびつで面白いんです。
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公開前から「見なくちゃなあ」と思いつづけていた『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』。すみません、今ごろレンタルで見ました。まず、作画がすごいです。「そこまでやらなくても……」という地味派手な動きを、随所で見せてくれます。
で、幼児のようなヨヨとおっとりしたお姉さん風のネネが主人公なんだろうと思っていると、実は14歳ぐらいの姿に成長したヨヨが、ほとんど出ずっぱりで活躍します。
ちょっとした事故で人間界に来てしまい、幼稚園児から14歳ぐらいに急成長したヨヨは、服が小さくなってしまう。スカートの裾がヘソの上に来て、ノースリーブの袖もビリビリに破れたようになる。さらに、靴も小さいから、脱ぎ捨ててハダシで走りはじめる。このヨヨの姿が、とってもキュート。
ヨヨ本人は「服が小さすぎる」と、魔法で歳相応の服装をまとうんだけど、ちょっとした拍子に(魔法が弱って)、ビリビリになった服に戻ってしまう! この演出は、エッチです。『キューティーハニー』に匹敵する。
本当はビリビリになっておへそが見えているような格好なのに、それを魔法で隠している、その構造がいい。隠しているのに、(本人の意志とは関係なく)うっかり露呈してしまう、その演出がいい。
僕は「いつヨヨが、もとのビリビリの衣装に戻るのか」ドキドキしながら100分間を楽しめたし、その楽しみ方を間違っているとも思わない。
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もう一本、レンタルで『ロック・ユー!』。冒頭、クイーンの「We Will Rock You」にあわせて、民衆が手を叩いている。では、『ジーザス・クライスト・スーパースター』のような、カッとんだ歴史物なのかというと、そこまでは突き抜けていない。
だが、重たい鎧をまとい、木製の槍で突きあう騎馬試合のシーンは声が出るほどの迫力だ。打突力だけで相手を殺すことさえ可能な速度で突っ込むため、槍は粉々に砕けとぶ。
そのシーンは景気がよくて、何度見ても壮快だ。槍試合のシーンのためだけに見つづける気になれる。
撮影用の槍はバルサで作り、中にはパスタを詰め込んで、派手に破片が散るように工夫してあるという。音楽でいえば、僕はサビの部分を誉めているにすぎない。しかし、どこかひとつでも原理的な快楽と発見があれば、十分に嬉しい。
(C)物語環境開発/徳間書店・魔女っこ姉妹のヨヨとネネ製作委員会
SonyPictures/Photofest/ゲッティイメージズ
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