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GOODS PRESS 2016年 09 月号 本日発売
おすすめの工具やキットの紹介、越智信善さんによる「成形色を生かしたスミ入れだけの仕上げ法」など、企画から提案させていただき、模型誌ではできないような記事で構成されるよう、知恵をしぼりました。
僕のところへ話があった時点では、「業界でマイスターと呼ばれるような偉い人にプラモづくりの教えをこう」、よくある企画でした。
「それでは、既存のハウトゥ本と変わらない」「読者とプラモデルとの出会いを楽しいものにしたい」「“上達”することにこだわらない、ゆるやかな特集にしたい」と、二時間ほど話すと、担当編集さんも同意してくださいました。
その夜、僕は越智さんとMAX渡辺さん、松本州平さんに打診して、参加をお願いしました。この方たちなら、プラモづくりのハードルを無闇に高くすることはないはずです。
それでも、ちょっとすると、「偉い人から教えてもらう」路線に戻りがちなので、担当編集さんを、元モデルグラフィックス副編集長の高久裕輝さんに引き合わせました。
高久さんなら、ミリタリーモデルや実車に詳しいうえ、業界の裏事情にも通じているし、なにより誌面構成の経験が豊富です。彼に特集のひとつひとつを吟味してもらい、忌憚のない意見を述べてもらい、再度、慎重に軌道修正をはかったのです。
それで、僕は僕の担当ページだけに専念していたのですが、デザインが上がってくると、なぜか膨大にテキストが書き足されています。しかも、根本的に間違った記述が多く見受けられ、そのままでは、とても書店に並べられる状態ではありません。
他の仕事をとめて、必死に赤を入れ、間違いをつぶしていきます。ちゃんと直っていて、他のページが構想どおりに出来ているなら、なかなか新鮮な誌面になっているはずなのですが……祈るような気持ちです。
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そんなこんなで、7月の予定はギッシリで。僕の脳内スケジュールでは、パンツ本(■)発売後、仕事は激減するはずだったのですが、まったく逆でした。
パンツ本は、Amazonでのレビューが濃くて、コメント欄でのやりとりまであって、本当にありがたく読ませていただいてます。
次はどんな本を出そうか、編集者と飲みながら話しました。もうメチャクチャな話が出てきて腹をかかえて笑ったんですけど、「もうちょいパンツ本が売れてくれないと」「もうちょっと伸びるはずなのに」……とのことです。
双葉社の偉い人は、パンツ本を「石川啄木みたいだ」と評したそうです。
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今日も、『シン・ゴジラ』の話。
シンゴジラ最高に素晴らしいが、しかしフクイチ原発は…(■)
きわめて真摯に書かれた批判意見とは思います。だけど、以下の箇所が気になりました。
「フクイチに自衛隊を特攻させれば
(チェルノブイリにはソ連政府が兵士に特攻させています)
福島の土地は助かったかもしれない。でもやらなかった。」(引用)
『シン・ゴジラ』劇中、自衛隊員は犠牲になりはしたけど、自爆攻撃のような「特攻」は一度もしていません。
なので、福島第一原発に「特攻させる」具体的な意味が分からないのですが、あの状況で自衛隊が何をどう努力すれば、「福島の土地は助かった」のでしょうね。
むしろ、死を実感しながら努力していたのは、原発作業員の方たちだったのではないでしょうか。「自衛隊がフクイチに特攻して冷却に成功していた」などと仮定してしまう神経、あまりに雑すぎて、かえって怖いです。
「実際の日本政府はどうでしょうか?フクイチの凍結に成功してますでしょうか?
成功してませんよね。いまだに汚染水を流し続けています。」(引用)
だけど、現地で対策を練られる状態にはなっているんです。福島第一のためだけに、新型のロボットを開発し、研究者の方たちが交代で操作し、格納容器内の状態を探る様子がテレビで放送されました。なぜ交代するかというと、被曝を少しでも低減させるためです。
いま、福島第一原発にはコンビニがあり、ジュースの自動販売機も設置されているそうです。一日に7千人も働いています。だから安全だと言いたいのではなく、危険な場所で毎日、今も淡々と働いている人たちがいることを、忘れてはいけないと思うのです。
「福島の土地が助かった」「フクイチの凍結に成功していない」と大雑把にくくるぐらいなら、いま現場で、あきらめずに努力しているのは誰か、知っておくべきではないでしょうか。その誰かにも、日常があるんですよ。
「ある夢から覚めた瞬間、また別の夢へと眠りこんでしまう」という寺山修司の言葉を、ふと思い出した。『シン・ゴジラ』は、現実を対置させねば決して語れない、重たすぎる虚構なのだ。
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