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2016年7月26日 (火)

■0726■

月刊モデルグラフィックス 2016年9月号
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●組まず語り症候群第45夜
今回のキットは、バンダイ製『ファイティング・ドリー』キャラクラフト、ニモです。
体色のオレンジとホワイトが、ゆるくカーブを描いたボディにぴったりとフィットする美しいキット。だけど、原稿を書いたのは組み立てる前なので、晦渋で通りの悪い文章になってしまった。

だけど、キャラクターキットだからこそ「よく似ている」「イメージを再現できている」といった投げやりな言葉ではなく、「なぜ面白そうに感じるのか」言語化しておきたい。
そのために目があり、言葉があるんだと思います。


原稿と原稿の短い中休み、映画を3本レンタルしてくる。ソフィア・コッポラ監督の『ブリングリング』。
Tbr_main_large親と離れて暮らす不幸な少女たちが、ほんの遊び心からハリウッド・スターの豪邸に忍びこむようになる。高価な服やアクセサリーに魅了された彼女たちの窃盗は、やがて組織的になり、警察にマークされてニュースに取り上げられ、ついにはテレビでインタビューを受けるほどの有名人になってしまう。
誰ひとり感情移入できないのに、最後まで飽きさせないテクニックとモチーフの拾い方が見事だ。

「感情移入」という言葉は便利だけど、それゆえに警戒すべきで、「登場人物の言動がひどいので、この映画もひどい」といった平面的な感想を導きやすい。
登場人物のひとりが「セレブの生活って、誰でも憧れるもんでしょ?」と言い訳するが、もちろんそんなことはない。だが、そういう価値観の人物をどうして出したのか、なぜそういうセリフを言わせたのか、どんな効果が出るのか考えると、シナリオという「ハードウェア」に触れることができる。
セリフを聞いて、「ひどいヤツだ、最低の人間だ」と反射するのは、「ハードウェア」の存在を忘れているだけ。


どんな表現物でも、ソフトウェアとハードウェアに分離できると思う。ハードの存在に鈍感なまま、ソフトに文句を言うだけの人生を、僕は送りたいとは思わない。

映画の中盤、盗品でゴージャスなパーティを開けるまでになった少女たちのひとりが、シャンペンのボトルに、花火をさして現れる。そのまばゆい光を、カメラはハイスピードで撮影する。その動きにあわせて、ゆっくりと音楽が入る。
息をのむほど美しいカットだ。被写体を24フレームで撮り、そのスピードを調整可能な映画のメカニズムがむき出しになっている。それと同時に、薄っぺらな欲望につき動かされる少女たちの淡い人生が、そのはかなさが、残酷に浮かびあがる。ハードが、ソフトをうまく転がしている、機能させている……と、僕は感嘆する。
そういう瞬間を、いつだって探している。理屈と必然が合致して、奇跡を起こす瞬間を。

もちろん、女優めあてに映画を見ることもある。バカになりたいときだってある。
だけど、ハードの存在を軽視したくはない。

(C)2013 Somewhere Else, LLC. All Rights Reserved.

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