■0705■
レンタルで、『スプリング・ブレイカーズ』。
4人のセクシーな女子大生が、強盗してつくった資金で、ビーチのある街へ旅行に行く。旅先で、彼女たちは水着か、あるいはトップレスのまま、男たちと体中に酒をかけ合い、コカインをやって、昼となく夜となくパーティを楽しんでいる。
警察につかまった彼女たちを、銃と金とピアノが自慢のギャングの男が釈放し、泥沼のような快楽の日々へと没入していく。
その無軌道で退廃的な日々を、映画は時系列を無視しながら撮り、前後を入れかえたり、同じセリフをリフレインしながら編集していく。映っているものは毒々しく暴力的なのだが、詩のように美しい。
まるで、カメラを経由せず、誰かと誰かの記憶を抽出して、断片的につなぎ合わせたかのような映画。
酒に酔った明け方に見る、支離滅裂な夢のような異様なセンチメンタリズムを味わった。まるで、あの世をのぞいたような気分だった。
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「ここんとこ、美味しいラーメンが減ったよなあ」とつぶやけば、「はあ? ウチの近所の○○屋のラーメンは、すごく美味しいんですけど? 食べてないのか、お前。○○屋に謝れよ!」と返される理不尽な場がインターネットだとは知りつつも……
結局、「過去に自分がやられてイヤだったこと」を赤の他人にぶつけ、過去の恨みを晴らす人があちこちにいて、やるせない気持ちにさせられる。
「我々は如何にして美少女のパンツをプラモの金型に彫りこんできたか」著者・廣田恵介さんインタビュー(■)には多くの反響があり、ハゲもふくめて僕の醜いルックスに対する感想もチラホラ……。
この本が発売されて2週間ほど経ちましたが、面白い仕事が意外な方向から来るようになりました。そのうちのひとつは、学生時代からの友人からの紹介で、会うのは数年ぶりです。
「俺、めちゃくちゃに太りました。たぶん、会うと驚くはず」と、事前に言われていたものの、彼の性格の温厚さ、発想の柔軟さ、場を和らげる会話術は変わっておらず、何よりそこに安心しました。
自分で醜いとわかっている顔をさらすことは、ひとつのリスクです。僕は持っている武器が少ないので、リスクをとる(顔や名前をさらす)ことで発言に説得力が出るなら、お安いものだと思っています。
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学生時代、とくに体育の時間に教師やクラスメイトから嘲笑われたことで、僕は自尊心を失いました。50歳にちかい今でも、対人恐怖症が治癒しないのは、自分のルックスや能力に自信がない、自分に価値を感じられないからです。
ただ、学生時代に片想いしていた女性から、「あなたは、自分の心の欠点を、すべて顔のせいにしている」と言われたことを、たまに思い出す――。
醜い顔は変えられないけど、心は変えられる。努力や工夫によって変えられる部分が、その人の値打ちであり本質なのだろう。
20代までに自尊心を奪われた人間は、残りの数十年すべてをかけて、自尊心を獲得するために生きる。それはそれで、誇り高い生き方ではないか……と、自分に言い聞かせるのです。
そして、「自尊心」と「他人を踏み台にした優越感」を混同しないようにしなきゃ、とも思います。
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