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2016年6月 6日 (月)

■0606■

レンタルで、アパルトヘイト後の南アフリカを描いた『イン・マイ・カントリー』。劇場公開されず、DVDのみリリースされた作品。監督は、『未来惑星ザルドス』のジョン・ブアマンである。
326611view004アパルトヘイト時の白人の罪を明らかにする、「真実和解委員会」を二人のジャーナリストが取材する。
ひとりは、サミュエル・L・ジャクソンの演じる新聞記者で、彼は黒人だがアメリカ国籍。もうひとりは、ジュリエット・ビノシュの演じる白人の南ア人。本来なら黒人を弾圧した側だが、彼女は正義感が強く、白人の罪を告発する報道をおこなう。

この人物設定は、テーマを語るのに安易すぎる。だが、安易にしないと、見えてこないテーマもある。ケース・バイ・ケースだ。


公聴会での残虐行為の証言を聞いたあと、衝撃をうけたジュリエット・ビノシュ演じるアナは、呆然と立ち尽くす。

彼女の向こうには、バスが止まっていて、取材の仲介をしてくれた黒人が「おい、バスが出てしまうぞ」と、アナを呼びにくる。アナは無言で、彼のくわえていたタバコを手にとり、自分で吸いはじめる。
「あんた、タバコ吸うんだっけ?」と黒人は驚き、やむなく新しいタバコに火をつける。すると、彼の後ろに、サミュエル・L・ジャクソン演じるラングストンが来る。ラングストンは、彼の新しいタバコを手にとると、やはり無言で吸いはじめる。
「人のタバコを奪って吸う」アクションを重ねることで、アナとラングストン、2人の気持ちが通じていることが分かる。
単純なカットだけど、単純だからこそ「これが映画だ」と、ホッとさせられる。映画は構造だ。メカニックだ。「面白い」ことには、必ず理由がある。それを解きあかして、人生を豊かにするんだ。

また、ラストに流れる詩が、とても美しかった。
「国は、頭蓋骨のゆりかごで歌う。僕の舌に、火をつける。千の物語を語るうち、僕の肌は焼き尽くされてしまった。もう、元には戻らない」……


前回の「自分の考えを書きたければ、小説でも書けばいい」()は、多くの方に読んでいただけました。

この発言の根底には、「俺だって、自分の意見を言いたいのに、我慢してるんだぞ。お前も我慢しろよ」といった、卑屈な平等意識があるように思います。
また、「仕事というのは、嫌なことを我慢すること」「不自由なもの」「その不自由を我慢したご褒美に、給料がもらえる」といった奴隷根性も、作用しているのでしょう。

言うまでもなく、他人の役に立つ、社会に還元するから、お金をもらえるのです。
「アニメーターは好きな絵を描いているのだから、彼らの給料など上げる必要はない」と言った人がいました。アニメーターさんは、絵を描いてアニメをつくることで、僕たちの心を豊かにしてくれます。「作品をつくる」という形で、人の役に立っているんです。
また、彼らが好きな絵を自由に描いていたとして、それのどこがいけないのでしょう? 自分の好きなことを、のびのびやって、それが他人の幸福に貢献し、結果としてお金をいっぱいもらえて、自分も幸せになる。それの、どこがいけないのでしょう?

ゆっくり休みながら、じっくりと良い仕事をするのは間違っていますか? 徹夜して、食事も抜いてバリバリやるのが「がんばった証拠」なのですか?
「忙しい」「寝てない」「調子悪い」より、たっぷり寝て、友だちと遊びに行って、心を豊かにして仕事に生かしたほうがいいに決まってますよね?


理想を失った人間は、猛烈な勢いで堕落します。堕落ついでに他人を貶め、「どうせ誰も理想を実現できていない」というニヒリズムに浸ることで、安心しようとするのです。

僕は、イヤです。理想を実現したいです。
そして、僕が楽しく本をつくることで、読者さんも楽しいひとときを過ごしてくれて、つまらない、理不尽なことがあろうとも、ご自分の幸福をつかんでくれると良いな……と、僕はそう思いながら仕事をしています。

BLIDALSBIRK/FILMAFRIKA/PHOENIXPICTURES/TheKobalCollection/WireImage.com

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