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国内でも、何社かの業者が同様のサービスを開始していますが、業者側は、プリントされたフィギュアをスケールモデルなどとは考えてはおらず、3Dスキャン・フィギュアと模型趣味には、いまだに距離があるように見えます。
もちろん、タミヤは自社製品のフィギュアに3Dスキャンを導入していますし、モデルカステンは実在の人物の3Dスキャン・フィギュアをレジンキット化して、販売しています。
ただ、3Dスキャン・フィギュアを個人がスケールモデル感覚で模型趣味に導入しはじめたら、どうなるでしょう。
(海外のメーカーのサイトでは、すでに見かける光景ではありますが)1/24のカーモデルの横に、1/24のフィギュアを立たせて、簡単なディオラマを作りたいとします。どこかから同スケールのフィギュアを調達してくるのが「模型趣味」の楽しさなわけですが、3Dスキャンなら、オリジナルの塗装済み完成品フィギュアが手に入ります。フィギュア塗装が苦手な人にとっては、朗報です。
さらに、メガネやカバンなどの小物だけでもスキャンできます。インタビュー中にあるように、車さえスキャンできます。個人が、スクラッチの技術を使わず、精密なスケールモデルを手に入れられるわけです。僕は、脅威を感じますが、この脅威を積極的に活用すべきと考えます。
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もうひとつ、3Dプリント・フィギュアのサービスの顧客の多くは、冠婚葬祭で記念写真を撮るような感覚で使っています。
つまり、一般人の「ミニチュア」「フィギュア」に対する価値意識は「本物そっくりに出来て当たり前」になっていくでしょう。これまで、スーパーリアリズム・アートや写実的な絵画を描いていた人に「なんで写真のように描けないの?」「というか、なんで写真を撮らないの?」と疑問符をつきつけるような状況が、そろそろ生まれてくると思います。
もちろん、手作りフィギュアの意味や価値や面白さを知っている人は、聞き流せばいいでしょう。
しかし、正反対というか、相容れない価値観の両方ともを聞き入れる耳を持つ人たちが必要です。僕は作家ではないし、背負ったリスクも少ないから、思いついたところへ取材に行けます。打診するだけなら、タダです。
僕自身は文化を生み出せないけれど、文化を豊かにして、後世へ残す手伝いの、そのまた手伝いぐらいはできると思っています。
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三鷹市立図書館にて、『現代美術キュレーター・ハンドブック』と『美少女の美術史』を借りる。

完全な技術書で、具体性のない理念を論じた本より、よほど役に立つ。
それにしても、老いも若きも椅子に腰掛けて、じっくりと手元の本に見入っている日曜日の図書館は、僕の心を落ち着かせる風景だ。世界は、まだまだ捨てたものではない……と、肩を叩かれたような気分になる。
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