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2016年2月 8日 (月)

■0208■

昨日は、ワンダーフェスティバルへ行ってきた。
手ごろなお値段の金属製完成品、イワシ金属化さんのアカイシガニモドキを買った。
Dsc_2533このイベントも、来るたびに混沌としてきて、開始当初の「メーカーの販売しないキットを勝手に作って、気に入った人だけに買ってもらう」危うさは、もはや過去の風景だね……という話を、たまたま帰り道で出会った、知り合いのライターさんと話した。
「売れるアイテムを作って儲ける」には、ガレージキットは手間がかかりすぎる。なので、作品発表の場としての色合いが強いように思う。キャラクター物ではない、木彫りや陶器の作品を販売している人もいる。
一方で、中小メーカーにとっては、新製品アピールの場であり、連動するアニメのキャンペーンの場であり……(僕も、過去にアニメ連動イベントの司会をやったものだ。)

レジンキットには、プロのモデラーとしては瀕死の状態だった90年代後半、文字どおり死ぬほど苦しめられた(山ほど完成品を作らされた)ので、正直、愛着はない。
だが、個人が「模型」という観点から立体物を自作することには、まだまだ計り知れない価値が秘められている。フィギュア造形=「美少女キャラ萌えの一手段」「性嗜好の発露」などと、簡単に切り捨ててほしくない。
「よく出来たオモチャ」「高価なオマケ」以外の価値を、どうすれば垣根の外へ届けられるか、考えている。


“映画という表現ジャンルの形式性そのものが、音楽という表現ジャンルの形式性そのものに、強烈に憧れているというか……あるいは映画のなかの物事が、まるで音楽を演奏するかのように演じられているというか……。”
“だから演技なら演技で、その演技というものがある瞬間、現実の単なる形態模写であることを超えて、あるかたち(「形式」)」を持ったとき、それが現実の反映だから力があるんじゃなくて、もはや現実を超えて、ひとつのかたちがかたち自身の表現としての強さによって、あるリアリティを持ってしまう……人の心を動かすことができてしまうときにね、ああ、これは音楽だって……。”
塩田明彦著『映画術』より。

本の中では、『男はつらいよ』シリーズのセリフまわしなどを参照して語られているのだが、僕には、アニメの話に聞こえた。
アニメ独特のセリフまわし、発声のしかたは「形態模写」ではない。実写映画よりも「劇」としての側面が大きいとは、そういう意味だ。演劇に近い表現なので、「リアルである=現実に近い」かどうかは、アニメでは本来、問題にされないはずだ。

“問題にされないはず”だからこそ、現実の「形態模写」に近い演技が入り込んだとき、独特のムードが出る。形式が破壊されたとき、独創性が生まれる。僕は、その独創性を期待している人間だ。
もっと正確に言うなら、形式と独創の狭間を、アニメに期待している人間だ。


『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第18話で、『ガンダム』の約束事として、仮面の男が主人公たちの前に現れ、謎めいた言動をとる。ところが、主人公は「なんで、チョコの人がいんの?」と、あっさりと正体を見破ってしまう。
この瞬間、「強敵は、仮面で正体を隠す」という『ガンダム』の演劇めいた形式が破壊され、僕らは、不意に「よくある、日常の光景」に出くわす。こういう瞬間を、僕は常に待っているような気がする。
(塩田明彦さんの言う「形式がリアリティを獲得する」、それを上回った現象が起きているように、僕には見える。)

この場合、声優の演技がリアルだというのではなく、「仮面をかぶった男が強敵」という形式が一定の強度を持っているからこそ、「なんで、チョコの人がいんの?」という形式から外れたセリフが、独創的に聞こえるわけだ。


僕が『RWBY』に熱中している理由も、ちょっと似ている。
「4色のキーカラー、4種類のキャラクター」という陳腐化した形式を維持しつつ、あちこちで人物同士の関係を掘り下げ、次々と視点を変化させることで、(形式に忠実に演技しているはずの)声優たちの声音に、ぎょっとするような生々しさが加わる……形式をつきつめた結果、かつてないスタイルを獲得してしまった、そんな風に聞こえる。僕は『RWBY』という作品を“聞いている”。それこそ、音楽にたとえたいのだが、音楽の知識がないので、やきもきしてしまう。

セルアニメの作られ方そのものが形式的で、かつ音楽的なのだと思う。(初めてスタジオを見学させてもらったとき、「セルアニメは、そもそもデジタル的な作り方なので、デジタルに移行しやすい」と説明を受けた。90年代後半のことである。)
パターン化されているからこそ、ブレイクする隙間が生じる。単なる形式の連続だったら、僕はとっくに飽きていただろう。

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