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2016年1月 5日 (火)

■0105■

レンタルで、『ペイルライダー』。公開当時の1985年、「西部劇の復活」と、華々しく映画雑誌に書かれていたことを思い出す。同年には、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ネバーエンディング・ストーリー』が公開され、「洋画といえば、娯楽大作」というムードがあふれていた。
18956934jpgr_640_600b_1_d6d6d6f_jpg設定・展開とも単純明快で、『許されざる者』のような曖昧さはない。が、クリント・イーストウッド演じる牧師の背中には、聖痕のような複数の傷跡がある。これが何を示すのかは、はっきりとは明かされない。牧師は、過去に因縁があるらしい保安官を撃つとき、自分の傷跡と、そっくり同じ位置を狙う。とても思わせぶりな演出だが、やはり誰の口からも、傷跡の意味は語られない。
よくよく思い出すと、牧師が舞台となる渓谷を訪れたとき、彼に救われる少女は、ヨハネの黙示録の「青白い馬に乗った、死の騎士」の箇所を読んでいた。しかし、ちょっとネットで調べだけでは、「死の騎士」と聖痕の関連は分からない。

分からずとも、その宗教的な暗示が、映画に深遠さを与えていることは間違いない。イーストウッドの爽快なガンファイトを楽しみながらも、すべては読みきれない。そこがいい。「勉強すれば、いつかは分かるだろう」と感じさせる。答えは、映画の外側に置かれている――もっと言うなら、将来の自分に委ねられている。それこそが、表現の内包する豊かさだと思う。


半年以上嫌がらせメールを送ってきた相手と直接会ってきた
非常に示唆にとんだ記事。匿名で嫌がらせメールを送ってきた本人と、その彼を探り当てて、彼をだましてまで顔を合わせ、こうして記事にする著者の企画力。この記事自体に、本物と偽者の差が、残酷なまでに現れている。

嫌がらせメールを送りつづけた彼は、メールを送った瞬間だけは、救われていたんだと思う。やがて、自分自身が努力して、粘着している相手と同レベルに立つしかないことに、気がついたんじゃないだろうか。
あるイラストレーターの方が、「自分では絵を描かない人にかぎって、“才能”という言葉を使いたがる」と、そんな意味の発言をしてらした。才能、つまり「天与の能力」、ようするに「運がいいだけ」レベルに、相手を引きずりおろそうとする。しかし、クリエーターとして名の通った人たちは、例外なく努力している。向上心がある。

向上心を失った人間は、猛烈な勢いで堕落する。本人の心中では、堕落するまでの間に、葛藤があったのだろう。しかし、一ヶ月もすれば、その葛藤すら消えうせてしまう。
たとえ才能がなくとも、努力が十分でなくとも――向上心のレールからは、降りてはいけない。「昨日よりマシな自分になろう」、その一滴で十分なのだ。


そういえば、僕にインタビューを申し込んできたライターの方がいた。ところが、取材から二ヶ月が経過しても、まったく記事にならない。連絡も来ない。
さらに二ヶ月待ち、このままインタビューが記事にならないなら、取材時の音声データをこちらに送ってもらい、相手の手元に残ったデータを破棄してもらうよう、お願いした。ところが、「この音声データをどこにも公開しないと約束するなら、送る」と、交換条件を出された。

彼女たちは、痴漢や性犯罪をテーマに、記事を組んでいる。
その本人たちが、こうまで恫喝めいた態度をとるとは……データを公開してほしくないのは、インタビューを申しこまれた僕の方だよ。この一件以来、ネット媒体で性犯罪を語るメディアへの信頼感は、ほとんど消えうせた。彼女たちは、性犯罪を黙殺するのと同程度の無神経さを、圧力として行使する。それを実感させられたからだ。


無神経といえば、もうひとつ。彼女がインタビュー収録に用いた機器。それは、単なるスマホだったんだ。プロだったら、(どんな安物であろうとも)ICレコーダーを使うものと思っていたが、それは僕の思いこみだったようだ。
スマホを出された瞬間、「この人、本気じゃないんだな」と、興がさめたことは間違いない。

人と打ち合わせするときは、ポーズだけでもいいから、メモをとったほうがいい。メモ帳を出さない人間の発言は、間違いなく軽んじられる。
「メモなんかとらなくても、俺は記憶力がいい」なんて自己評価は、相手には伝わらない。

僕は離婚の話し合いのとき、相手の両親の話をメモにとった。うっかり脅迫じみた発言をしてしまった直後、相手の親は「今の言葉は、メモするな!」と大慌てした。
だが、僕はメモなんて捨てても良かった。なぜなら、胸ポケットの中では、ICレコーダーが回っていたからだ。もし裁判を起こされれば、さぞかし有力な証拠になっただろう。メモ帳のような便利な道具は、姑息と誠実の両面に使える。

(C)1985 - Warner Bros. All rights reserved.

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