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2016年1月 3日 (日)

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「奴隷業者」に売られたスター・ウォーズ ルーカス監督の嘆きに業界騒然

Exf16010300000001p1「私が作ったSWは宇宙船も惑星も(前作とは)全く違うものになるよう懸命に努力した」 ……ジョージ・ルーカスの一言に、涙が出てしまった。

ルポルタージュ『スター・ウォーズはいかにして宇宙を征服したのか』を、全970ページ中、430ページまで読んだ。ルーカスが苦悶しながら書いた、シナリオの第一稿~第四稿にいたるまでの流れを、部分的にセリフを抜粋しながら、詳細に追っている(『隠し砦の三悪人』を参考にした……という俗説を、資料を用いて否定しているのが良い)。
著者のクリス・テイラーが言うとおり、「急に大金と時間を手にした映画マニアによる、壮大な実験の結果」が『スター・ウォーズ』なのだと思う。参考にしたコミックや小説、映画のジャンルがあまりに多岐にわたっているため、脚本の第一稿は映画5本分ぐらいのアイデアが、ごちゃまぜに詰めこまれている。そして、70年代の若者が考えたとは思えないほど、クラシカルなムードにあふれている……完全に、趣味の世界なのだ。

『フォースの覚醒』のレビューを見ると、「しょせんは娯楽映画なのだから、この程度でいいんだ」と言っている人がいる。「娯楽映画」と言われると、僕はちょっと首をかしげてしまう(「実験映画」と呼ばれると、ピンとくる)。
『スター・ウォーズはいかにして宇宙を征服したのか』によると、さんざんな苦労と妥協を強いられた第一作の撮影直後、ルーカスは「もう一度、五年という時間と八〇〇万ドルの予算をもらえるのなら、僕たちはもっと壮大な何かをつくってみせる」とインタビューに答えている。ともかく、表現したい欲望だけは煮えたぎっていた。『スター・ウォーズ』の動力源は、燃えさかるような表現欲なのだ。だから僕は、「あれもこれも」と、実現可能ならば何でもかんでも無造作に詰めこんだエピソード1~3が好きだ。表現欲に突き動かされて、道なき道を爆走するルーカスを愛する。

その一方で、今回の新作映画が『スター・ウォーズ』を延命させるため、多くの犠牲を払っていることも理解はしているつもり。すぐに犯人さがしや責任者さがしを始めるのは、僕たちの悪い癖だ。


年末年始にレンタルで見た映画は、英映画『ワンチャンス』、『グッドモーニング、ベトナム』など。レンタル店になかった『ワルキューレ』は、CSで見ることができた。
Operacaovalquiria_4敗色が濃くなったドイツで実際に起きた、ヒトラー暗殺計画をトム・クルーズ主演で描いた作品。『X-メン』シリーズを撮ってきたブライアン・シンガー監督の経歴をふりかえると、史劇というよりはサスペンス映画としてのスリル感を強く感じる。基本トーンは寒色系で、コントラストを効かせた映像。被写界深度は浅く、クローズアップ撮影が息づまるような緊迫感を生む。

作戦中、重要な電話がかかってくる。それを主人公が受けとるストレートな絵は見せず、無造作に机に置かれた受話器が、重みで左右に揺れているカットを入れる。神経質で暗喩的な演出が、全編に散りばめられていて、息をつくひまもない。
ただ、トム・クルーズの容貌はヒロイックなイメージをまといすぎている。キャスティングは、ややマイナスに働いたように思う。


『RWBY』のブルーレイを、毎夜のように見ていたが、吹き替え版が制作されるまで待てずにVolume-2の配信を見はじめた。アメリカからの公式配信ながら、第2話までは、ちゃんと日本語字幕が入っている。
Rwby_volume_2_dvd第4話で、ハリウッド映画によく出てくるような、逆関節のロボットが大暴れする。このロボットの密度や質感、これまで出てきたメカやキャラクターたちと、まるでマッチしていない。だが、その統一感のなさ、むき出しの荒々しさこそ、『RWBY』のスタイルなのだ。

嬉しいのは、それまでバラバラに動いていた主役4人が、ロボットを倒すために力を合わせるクライマックス。4人が連携プレーを見せるのは、Volume-1でもワンシーンしかない。高まっていく危機感のなか、主役たちが頼もしい戦いぶりを見せる、この安堵感。『ジャイアントロボ 地球の静止する日』の第2話で、全エネルギー停止現象の中、ロボだけが悠然と動き出すシーンに匹敵する。
それにしても、『RWBY』のアクション・シーンは、原作・監督の故モンティ・オウム氏に全面的に任されていたようで、こんなに才能のある人を失った痛手は、いかほどのものだったのだろう……と、新参ファンの僕は、今ごろ呆然としている。
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