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2015年12月 6日 (日)

■1206■

仕事で『ガールズ&パンツァー』の取材をすることになり、OVA『これが本当のアンツィオ戦です!』をレンタルしてきた。かなり楽しめたので、その気分のまま劇場版を見に行こうかと思っていたら、編集者が白箱を送ってくれた。
Gup_movie_b_14_web_large少年野球をモチーフにした『がんばれ!ベアーズ』は、えんえんと続く日曜日の試合を描いた美しい映画で、最後の試合にむけて、思わぬ助っ人があらわれたり、問題が発生したりしてクライマックスを盛り上げる、部活映画の教本ともいえる内容。
劇場版『ガルパン』の構造は『ベアーズ』調で、冒頭の戦いが終わった後、どうしても試合に勝たねばならない難問が設定され、そこから這い登っていくチームの結束を描いている。構成は、シンプルだ。

クライマックスは、一時間もつづく手の込んだ戦車戦で、テーマパークを舞台にして西部劇風にしたり、『シャイニング』のような迷宮庭園の中を走ったり、果ては観覧車を使って『1941』のパロディまでやっている。豆戦車がジェットコースターのレール上でチェイスしたり、まったく飽きさせない(「さすがにそれは無理では……」と思わせるシチュエーションを、履帯のたるみから音響にいたるまで、精緻に描写するセンスがいい)。

ふと、いまパロディの元ネタを探ろうとして『1941』をレンタル店に探しに行っても、置いていないのではないか……という懸念が、頭をよぎる。僕は気がつかなかったが、『戦略大作戦』のパロディまであるらしい。『戦略大作戦』は、さらに置いてない可能性が高い。
セリフの中で『ケイン号の叛乱』とも言っていた。古い映画ほど、鑑賞できる機会は減っていく。しかし、レンタル店で見れようが見れまいが、「かつて、そのような映画があった」「少なくとも、制作サイドは知っている」ことを明示しないと、教養は育たない。


『ガールズ&パンツァー 劇場版』は、編集のテンポがいい。
たとえば、ポルシェ・ティーガーを山道で走らせるシーンがある。砲塔のうえから頭を出したキャラが、セリフをいうところでカットが切れるのだが、切れる直前、頭に当たりそうな木の枝をヒョイとよける。それだけで、テンポが生まれる。(もうちょっと細かく言うと、キャラのアップをカメラがフォローしていて、木の枝は画面外からインする。)

その少し前、自動車部が「最後のドリフトを決めよう」と車を走らせるシーン。画面奥で、車がドリフト走行しはじめたアクションの始まりで、カットを切っている。アクションを最後まで派手に見せるより、始まったあたりで切るほうが、次のカットが生きる。

映画を見ていて「飽きない」「気持ちいい」とは、つまり編集が上手いということ。観客の生理を、もっともコントロールできる工程が編集かも知れない。
画面内の情報を、短く効率的に見せるという意味では、レイアウトも優れている。後半戦の敵となる大学生チームの斥候が、停車した戦車の上にシーツをしいて、双眼鏡をのぞいている。望遠ぎみの落ち着いた構図で、戦車とシーツにはブラシで質感が描きこんである。絵に重みを加えている。すると、敵の斥候が威圧的に見える。「敵は強い」と感じさせる。そのような絵を、しかるべき流れの中に、効果的に配置することこそ「作劇」なのだと思う。


少なくとも、ふたつの大きな戦車戦だけで、十分に見る価値のある映画。しかし、たまたま目にする機会は少ないだろうと思う。
子ども向けでないアニメ映画が誕生しはじめたころ、たとえば総集編の『ガンダム』三部作でも、ちゃんと映画評論家がとりあげていた。おすぎの出ている映画レビューのラジオ番組で、酷評されたりもした。無視されるよりは、一般向けの番組で酷評されるほうが、認知度は上がる。

ところが、いまはアニメ映画でも、深夜アニメ発のものは別枠扱いだ。
80~90年代、スクリーンで上映された邦画がすべて同じまな板に乗せられ、逐一、批評されていた時代があった。皮肉にも、それは邦画の本数が少なく、質的にも貧しい時代のことだった。今は質が向上したのか、観客や業界が互いに敷居を設けているのか、それは分からない。

(C)GIRLS und PANZER Film Projekt

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コメント

戦略大作戦のパロディは、映画じゃなくてTV シリーズ最終回ですね。
劇場版の魅力はとにかく「音響」ですね
やはり劇場、評判の立川で観るのがオススメです

投稿: ガルパ二スト | 2015年12月13日 (日) 09時47分

■ガルパ二スト様
コメント、ありがとうございます。

>戦略大作戦のパロディは、映画じゃなくてTV シリーズ最終回ですね。

そうみたいですね。ありがとうございます。

投稿: 廣田恵介 | 2015年12月13日 (日) 11時19分

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