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2015年10月28日 (水)

■1028■

レンタルで、『ランド・オブ・プレンティ』。ヴィム・ヴェンダース監督の2004年作品。
322993_0039.11テロから、3年をへたロサンゼルス。ベトナム帰還兵のポールは、誰にも頼まれることなく、監視カメラ付きの車で、市内をパトロールし、不審なアラブ人の動きを記録している。
そんなポールの姪であるラナが、叔父をたよって、イスラエルから帰国する。

だが、ポールの興味は「アラブ人のテロを未然に防ぎ、米国を守る自主パトロール」にしかなく、ラナには冷たい。
ラナは、さまざまな人種の集まる教会に寝起きし、周囲とうまく付き合っていく……が、治安の悪いその地区で発砲事件があったことから、ポールはラナと一緒に、犯人さがしをはじめる。

35ミリフィルムの、ざらついた質感が、むしろ新鮮だ。誰もがヴェンダースの映画を追いかけていた、80年代後半の香りが、濃厚に残留している。
だがあの頃より、テーマは生々しくなった。9.11以降、米国内に大量にいたであろう偏狭な愛国主義者、ホームレス、急速に広がる貧困……ヴェンダースの米国民にそそがれる視線は、厳しい。
(自警団きどりで、ペッパースプレーやトランシーバーをラナに持たせるポール、そのごっこ遊びに、年下のラナが付き合ってやっている様子は、痛々しかった。)


ラナの人徳のおかげで、ポールは、自分の追っていたアラブ人たちが、テロリストでも犯罪者でもないことを知る。

茫然自失としたポールは、ラナとドライブに出かける……ラスベガス、ホワイトハウス、砂漠の向こうにポツンと立つ大工場の、目に染みるような、さみしい灯り……。それでも、まともに故郷を見たことのないラナは、嬉々として、アメリカの風景を見つめている。この映画の、ラスト10分間は、ヴェンダースお特異のロード・ムービー。時間と距離の制約をキャンセルした、自由な時間が流れる。

ヴェンダースは、欠点だらけのアメリカの人々を疑いの目で見つめつつ、最後には解放する。そのおおらかな手つきには、長く生きてきた者ならではの、底知れぬ慈しみを感じる。


Twitterで、気になること。
誰かが「栄養ドリンクで体調を壊した」というツイートをすれば、「栄養ドリンクには、このような副作用があり」「そんな常識的なことも知らなかったのですか」と、ここぞとばかりに「正解」を言いたがる人がいる。

今年春、焼肉店で食中毒がおきたときも、同じだった。
最初に、「肉用のトングと、野菜用のトングを区別せずに使った客がいるのでは?」という推理が出ると、あたかも以前から知っていたかのように、「こりゃ、トングが原因だね」と、後だしでも受け売りでも、とにかく正解を口にしたがる。

この社会には万古不易の真理があり、自分はそちら側に属しているのだ……という慢心を感じる。
戦後教育が、つねに「絶対的な答え」を用意し、「完璧に正解を言い当てられたら百点、99点以下は不完全」という強迫観念を植えつけてきたのだから、しかたのないこととは思う。


漫画の児童ポルノ禁止を要請されたということですが
「人の性癖はさまざまですから、何に性的興奮を覚えるのかもさまざまです。しかも、道徳的・宗教的あるいは教育的な問題は別として、個人が抱くその性的イメージがたとえ背徳的・犯罪的なものであっても、それが個人の内面的世界にとどまる限り、どのような性的イメージを抱こうとも、法的問題としては自由であり、国家は個人に対して好ましくない性的イメージをもつことを禁止することなどできません。」

上の文章は、刑法学者で弁護士の、園田寿さんの書かれたものです。
僕が、【実在児童への性暴力写真に関する請願書】)を書くとき、まっさきに相談した方です。「性暴力の記録」である写真が、「一般人が興奮しないから」「ワイセツではないから」という理由で、野放しになっているのはおかしいと、ずっと言ってこられた方です。
そのような矛盾をかかえたまま、児童ポルノ法の規制範囲を拡大しようというなら、まるでナンセンスな話です。痴漢被害すら減らすことのできない、いまの日本人には、荷が重すぎます。

もとになった、国連特別報告者のマオド・ド・ブーア=ブキッキオさんの発言については、媒体によって、かなりのブレがあります。琉球新報()の記事から、引用します。
「子どもが被害に遭いかねない事態を受け入れる社会の寛容性、行為を犯した本人を処罰しないということが被害を増やしている」……この発言については、完全に同意します。

(実際の会見映像を見たので、追記を書き直します。ブキッキオさんは、「性虐待記録物」と「ポルノコンテンツ」という言葉を、しっかり分けて使っています。漫画をさす場合は「児童を題材にしたポルノコンテンツ」と呼び分けているように、聞こえます。)

(C)2004 Reverse Angle International GmbH and Independent Digital Entertainment Inc.

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