■0809■
大河原邦男展 図録
各人コメントのうち、富野由悠季さん、安彦良和さん、天野喜孝さんの取材と執筆、小田雅弘さんの執筆を担当しました。
富野さんのコメントには、『Gのレコンギスタ』のメカニック演出の話、この展覧会に対するサブテーマが含まれています。自分たちの世代だけが共有している同質性に甘えていては、明日は見えてこない、と読むことができます。
では、どうすれば明日が見えるのか……それは、各々が、自分の現場で具体的に考えていくしかないんです。
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先週後半は、連日取材がつづき、最終日は静岡県まで足をのばした。
8月6日広島原爆の日、たまたま原爆の出てくるアニメ映画の取材に行って、スタジオ近くの杉並区役所に寄ってみたら、原爆の絵を何点か展示していた。絵を見ていると、ひとりのお年寄りが「どうぞ」とチラシを手渡してくださった。そこには、原爆に関する基礎的なデータが書かれており、恥ずかしながら、東京にも何人かの被爆者の方が暮らしているのだと、初めて知った。あと、原爆を伝える会なども、東京にある。
帰宅してから、NHKスペシャル『きのこ雲の下で 何が起きていたのか』を見た。
爆心地から2キロ離れた橋で、爆発から間もない時間に、二枚の写真が撮られた。その現場にいた人たちの証言をもとに、写真を立体的に解析し、CGで動画にしている。皮の剥がれた火傷の跡も専門家が分析し、色をつけている。
それらの動画に、かすかなうめき声や風の音なども混ぜて、まるで目の前で起きているかのような、むごたらしい映像ができあがった。悪趣味なようだけど、絵では伝わらない凄惨さが、まざまざと感じられる。世界中の人々に見てほしい映像(特に、アメリカの人たち)。
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僕は、二度旅行したクロアチアを人に説明するとき、「戦後20年しかたっていない国」という言葉を使う。
かくいう自分も、終戦から22年後に生まれた。当時は、経済成長がつづいており、家に『鉄腕アトム』の絵のついた子ども用のタンスがあったのを、よく覚えている。
吉祥寺のオモチャ屋で、バルタン星人のソフトビニール人形を買ってもらったのは、4歳のころ。身のまわりには、娯楽があふれていた。
だけど、それから40年以上、たったんだよね。戦後70年のうち、50年は僕も知っているはずで。だけど、「戦後70年」を、つい自分の生きてきた時間と切り離して考えてしまう。
豊かであることは、ぜんぜん悪いことではないです。中学の社会科の教師に、「君たちの家の食卓には、山海の珍味が並び……」と、不自由のない生活に反省をうながすようなことを言われたけど、豊かでも貧しくても、人の心は堕落するだろう。「豊かさは敵ではない、味方だ」と、今ならはっきり反論できる。
ただ、心が堕落しないために、過去に起きたことを知っておく必要があるんじゃない?
酸いも甘いも噛みわけないと、幸せって分からないんだよ。ひとりでも幸せを感じられるけど、ひとりだけ幸せでもしょうがないなって分かってくる。その根底には、「豊かな時代に生まれた」、物質的に恵まれた幼少期があるんだ。
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