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ホビー業界インサイド第1回:3Dプリンターは美少女フィギュアを革新するか? 有限会社アルターのクリエイターたちの期待と不安!(■)
今月から毎回、フィギュアやプラモデルの製作会社や、個人のクリエイターに取材していきます。第一回は、「美少女フィギュア」という、誰でも目にしたことのある商品の制作舞台裏を知りたくて、有限会社アルターに取材しました。
すると、「男性キャラを求める、女性ユーザーの視点」という、思いがけないテーマが浮かび上がってきました。実はいま、女性向けフィギュアが、猛烈な勢いで増えてきています。
市場が変化して、文化のあり方が変容しているのに、既存のホビー誌は、その実態を伝え切れていないと思います。メーカーさんが「今、これを売りたい」という商品が、どうしてもトップに来てしまう。すると、メーカーと出版社、両方の事情だけで誌面が成り立ってしまう(だから、宣伝力の強いメーカーばかりが、何度も取材される。雑誌が全面広告のようになっていく)。
だけど、ユーザーは、もっとダイナミックに変化している。その最前線の、繊細に震える空気を、僕は吸っていたい。ほかに取材しようとする人がいないので、僕がまず、こういう連載を始めてみました。
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「今度、こういうガンプラが発売されます」という告知は、僕自身も楽しみに見ています。だけど、ガンプラに限らず、メーカー側が綺麗に色を塗った塗装見本が、いちばん多く目に触れると思います。
しかし、「理想的な状態で仕上げた商品写真」は、インスタントラーメンの「盛りつけ例」写真と同じで、メーカーの提案するイメージの一形態にすぎない。
たとえば、工具も塗料も持っていない、そこまでお金を使うつもりがない人も、プラモデルの面白さを感じているはずです。そもそも、組み立てずに「買う」だけでも、プラモデルは面白い。
インスタントラーメンは、何も具を加えずに調理しても、いちおうは食べ物として完成されるように出来ている。プラモデルも、そうなっているはずです。「箱の中にあるものを組み立てる」だけで、面白い/つまらないと感じられる。色を塗らないと何も分からない、なんてことはないはずですよ。
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色を塗らず、ゲート跡やパーティングラインも処理せずに組み立てた「素」の状態のときこそ、「プラモデル」という商品のスペックが、最大限に発揮されているんだと思います。
(少なくとも、僕は成型色そのまま、何ひとつ手を加えていないプラモデルの写真に、いちばん興味をおぼえます。美しいとも思います。)
「苦労しないと楽しめない」「苦労したヤツが、いちばんエラい」という価値観が、イヤなんですね。結果として、苦労がともなうのは仕方ない。「苦労したんだから認めろ」と、はじめから対価を求めているところが、きらい。
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GEOで、『神々と男たち』をレンタル。カンヌ国際映画祭でグランプリをとった映画が、たった86円で見放題なのだから、割安な趣味だと思う。
アルジェリアの修道院に滞在するフランス人宣教師たちが、イスラム過激派の人質にされた事件を、静かなトーンで再現する。宗教のことが分からなくても、寂れた村の情景、抑制のきいた映像を見ているだけで、まったく飽きない。
冒頭の修道院のシーンで十字架が映るので、「キリスト教の話なんだな」と、日本人にも分かる。自分の記憶をたどると、井の頭公園の近くのカトリック吉祥寺教会の十字架。あれが、原風景だと思う。
幼少期から、せいぜい20歳ぐらいまでに見た情景。それしか、リアリティを感じる手がかりはないのだと思う。20歳以降に見聞きするものは、現実を理解するための追加オプションでしかないような気がする。
(C)2010 ARMADA FILMS - WHY NOT PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINEMA
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