■0709■
昼に原稿が上がったので、夜、編集者と飲みにいくまでの間、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』を見ることにした。
しかし、新宿バルト9とは相性が悪い。今回もスムースにチケットが発券されず、隣の席のカップルのおしゃべりに悩まされた。
新キャラクターが2人も出てきたら、話がゴチャゴチャになるのでは?と危惧したが、スカーレット・ウィッチとクイックシルバーの双子は、なかなか良かった(話は十分に混乱していたので、この2人のせいじゃない)。
東欧の紛争地域に生まれ、爆撃で両親を失ったという生々しい過去が、感情移入をうながす。
2人が20代前半だとしたら、ひょっとして、90年代のユーゴスラビア紛争に巻き込まれたんだろう。「ソコヴィア」という架空国家が出てくるけど、東欧~中欧だろうな。リアリティを出すため、冷静に世界情勢に目を向ける誠実さが、このシリーズの魅力のひとつ。
もうひとつ。韓国が、舞台のひとつになる。
ハリウッド映画にとって、もっとも大きな海外市場は日本から中国へ移行しており、いま、韓国が日本を抜きつつあるという。
『トランスフォーマー/ロストエイジ』は、日中合作映画だったでしょ? なぜなら、前作の『ダークサイド・ムーン』が、中国国内だけで200億円も売り上げたから(■)。日本での、同作の興収は、たった42.5億円(■)。
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』冒頭に出てくるメモ帳は、各国語バージョンが用意されている。だけど、韓国バージョンはあっても、日本バージョンは作られなかった。ハリウッドから見ると、日本はかつてのような、おいしい市場ではなくなってしまったわけだ。何だか、おいてきぼりをくらったようで、寂しい。
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何もかもCGで造形し、ことごとく破壊しつづけける『エイジ・オブ・ウルトロン』は、情報量が飽和して、観客の理解が追いつかなくなっていると思う。何が起きているのか認識する前に、「すごいCGだな」と反応してしまい、それ以上考えることが出来なくなってしまうのだ。
『ジュラシック・パーク』の公開が、1993年。この20年間は、「やっぱり、実物のセットやミニチュアのほうがいいよな」と再確認するための、長い回り道であったとさえ思えてくる。アナログの良さを生かした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』と『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が、アクション映画の潮流を変えるだろう。
『君と歩く世界』で、両脚を失った女性が義足をつけて歩くまでのプロセスには、心から驚かされた。後からCGだと聞かされても、いまだに信じることができない。映画におけるCGの役割は、時間をかけ、静かにフィックスされていくのだろう。
……CGがバレまくったパニック映画や、モンスター映画も、それなりに味があって良いんだけどね。このCG万能の20年間を回想する日々も、遠からずやってくるんだろうな。
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ロバート・ゼメキスの『フライト』に、末期がんの患者が出てくる。
「宗教(キリスト教)は、楽でいいぞ? 何が起きても、神様のせいにして、神が俺を試していると思えばいいんだからな。だが、“なぜ、俺をがんにしたのですか?”と神に問いかけたが、答えはなかったよ」。
彼は、だいたいこんな話をする。もちろん、彼は運命への皮肉をこめて宗教に傾倒しているポーズをとっているにすぎないが、大震災のときに折り鶴をおって、ひたすら「祈る」不可解な行為の理由が、ちょっと分かったような気がした。
(C) Marvel 2015
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