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ある人が誉めていたので、レンタルで『プレーンズ』。世界観は『カーズ』と共有しているが、本作はピクサーではなく、テレビ向けのパート2物を専門につくっているディズニー・トゥーン・スタジオの制作。……じゃあ三流の作品なのかというと、飛行シーンは望遠レンズの効果を活かして、驚くほどリアルに撮っている。
飛行機それぞれの空力的プロポーションを保ったまま、キャラクターとして成立させるデザインセンスもいい。主翼がグニャッと手のように曲がることはない。かわりに、着陸足を使って、感情や色気を表現している。
ただ、エアレースというモチーフは、ちょっとマニアックだったかも知れない(今年、日本でも開催されたが、それまでは見たことがなかった)。あと、第二次大戦の軍人(コルセア)が出てくると、どうしても日本軍が敵役になってしまう。戦勝国はいくらでも美談を語れるが、敗戦国で、余計なコンプレックスを植えつけられている国民のひとりからすると、現役空母や戦闘機が物語を強力にバックアップするのは、やや物騒に感じた(実写映画だと、そうは思わないのだが)。
大学卒業以来、ずっと兵器産業で働いている友人がいるけど、彼も「人の命を直接的に、大量に奪うような戦争の時代は終わったのではないか」という話ばかりする。
ミリタリー物のプラモデルを作っている人が、思想的に戦争を肯定しているとはかぎらない。兵器を捨てれば、戦争を放棄できるほど、人間は単純ではない。
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『プレーンズ』のレンタルDVDにはメイキング映像が収録されていて、クレイ・ホール監督がトウモロコシ畑の中にある飛行場をロケハンしたり、実際に第二次大戦機に乗ったり、空母で何日間か過ごす様子が出てくる。戦闘機の離発着を見て、大興奮している。『インデペンデンス・デイ』を見ても分かるけど、これが平均的なアメリカ人の感覚なんだろうな。
メイキングによると、物語の始まる農場は、中西部に設定されている。『キャスト・アウェイ』のラスト・シーンも、「この先はカナダ」と言っているから、中西部でしょう。『未知との遭遇』で、少年がUFOに連れ去られるのはインディアナ州。『フィールド・オブ・ドリームス』は、アイオワ州。映画の中では、もっぱら、田舎というイメージで使われているのが中西部。
そして、常に美しく描かれてきたから、僕らはアメリカの田舎に、勝手な郷愁すら抱いてしまっている。だけど、『戦後史の正体』を読んでしまうと、ストレートに「きれいな国だな」とは思えない。
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晴れたので、午前中から吉祥寺まで歩いてきた。
チマチマしたプラモデルを組みたくなったので、バンダイのメカコレ「ラスコー級宇宙巡洋艦」を買う。本屋で、情景師アラーキーさんの『凄い! ジオラマ』(アスペクト)も買ってしまう。1ページたりとも無駄にしない、細部まで丁寧にデザインされた本。
ただ、模型という趣味は「侘び・寂び」に陥りがちなので、そろそろ新しい視点が必要なんじゃないかと思った。
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「年をとると、人は自分に二つの手があることに気づきます。ひとつは自分を助ける手。そして、もうひとつは他人を助ける手」――オードリー・ヘプバーンの、この言葉が胸にひっかかっている。
残念ながら、両手とも自分を助けるために使っている人が、大部分だろう。
自分と意見や価値観の違う相手は、人権を奪われようが惨い死に方をしようが、どうでもいいと思っている。それぐらい、今の日本人は余裕を失っている。
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