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売り切れ直前だった、ハセガワの1/35メカトロウィーゴを入手。
どうして、原作アニメすらないこのプラモデルが売れているのか、ここ数年、あるいは十年ぐらいのポップ・カルチャーを掘り起こさないと、説明不可能ではないかと思う。
このキットには、昭和レトロな少年と少女のフィギュアが付属していて、まずは大阪万博世代にリーチする手堅さがある。だけど、同時に平成不況のもとで根づいた、シンプルで簡素なものを求める、軽やかな嗜好にもマッチしている。
(例えば、ゆるキャラのセンスなんかも、どこかでリンクしていると思う。)
あと、昨夜、友だちとファミレスで話していて気がついたんだけど、90年代後半のガシャポンの高品質化と食玩ブームが去って、ベンダートイには、当時とは違う客層がついている。マニアだけがホビー業界を支えているというのは、尊大な思い込みであって。
広くて薄いライトユーザーの価値観って、必ずコアなユーザーに影響を与えている。しかし、ことにプラモデルというジャンルでは、頑迷固陋なマニアの声しか、テキスト化されてこなかった。
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1/35メカトロウィーゴは、パッケージ・アートが、漫画家のあらゐけいいち氏というのも驚きだった。商品のもつ軽さや自由度を、このうえなく奔放に表現していて、「リアル」とか「重厚」とかいった、メカ物の陥りがちな陳腐さから、解放されている。
プラモデルの世界は、「とにかく作れ」「色を塗れ」「自分で改造しろ」という、年寄りの根性論が支配的で、「精密なら精密なほどいい」という泥沼にはまってしまっていた。その反動は、すでにあちこちから起きはじめている。
アニメもそうだけど、緻密さを極めてしまったら、あとは上手にUターンしてくるしかないと思う。Uターンが下手だと、単なる手抜きになったり、特典に頼ったくだらない商法に落ちぶれてしまうわけだけど。
説明書には記載されていないけど、メカトロウィーゴには、ちゃんと女の子フィギュアも乗れます。そんな仕様も含めて、本当にキュートなプラモデルになったなあ……と、ほれぼれ。
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レンタルで、『42 ~世界を変えた男~』。第二次大戦直後、メジャーリーグ初の黒人選手が、野球界の偏見を塗りかえていく。
「もともと、世の中は複雑なんだ。野球界も、もはや見て見ぬフリはできないぞ」と、ブルックリン・ドジャースの経営者(演じるのはハリソン・フォード)が、野心満々に言う。彼には、黒人のチームメイトを差別から救えなかった苦い過去がある……ひとつ残らず、実話である。
映画の冒頭、ラジオから日本の全面降伏についてのニュースが、さりげなく流れる。映画は差別撤廃の美談を語る一方、少なくとも70年前、アメリカを覆っていた、見るにたえない傲慢と不寛容を暴きたてる。
白人がリベラルなんてウソっぱちなのに、僕らは「白人のようになりたくなる」教育を受けてきた。たとえば、その惨めな敗戦コンプレックスに切りこめる日本映画は、見当たらないわけです。「欧米に比べて、日本は……」と嘆いていたほうが、戦わなくてすむし、楽だから。
黒人差別は対岸の火じゃない。日本人だって、海外に行けば、きっちり差別されるよ。
アメリカ映画は、しばしば、自国のダークサイドに言及するからね。その姿勢は見習うべき。この映画で描かれたように、「すごいのは白人だけじゃない」と証明してこそ……だと思うんだ。
(C) Warner Bros. Entertainment Inc.
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