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アキバ総研 【懐かしアニメ回顧録第3回】セルアニメ版「アップルシード」。唯一の実写映像付きOVA!!(■)
さて、第3回ですが、どうでしょうか。誰もが心からガッカリしたOVA版『アップルシード』です。あの、ぜんぜん見たこともないキャラが出てきて「うわ、どうしちゃったのコレ?」って、悪い意味で驚くセルアニメ版ね。
前回が『プラトニックチェーン』だったので、何となく方向性が見えてきたでしょ? そうでもない? 懐かしアニメというより、「あんまりよく覚えてないアニメ」再評価です。この連載は。
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『Gのレコンギスタ』第22話「地球圏再会」、良かった。
月のコロニーで、自分の生家を見てきたベルリが、育ての母と再会する。もちろん会話はかみ合わないが、母に抱きしめられたベルリをゆっくりとPANするカットが残酷なようでいて、ベルリの心情に寄り添うような手つきで、ゾッとするほど上手い。殺伐と哀しくもあり、なぜか少し嬉しくもある……その繊細なあわいを描き出すのが、演出の役割だと思う。
もうひとつ、記憶喪失になったのか人格改造されたのか、まるっきり説明されていなかった
マスク(ルイン)と、彼を慕いつづけたマニィの再会。マニィは敵と見なされつつも、発光信号で「ルイン」と、マスクの本名を伝える。すると、マスクはマニィを「圧倒的な味方」と呼ぶんだよね。論理的整合性はない、説明されないんだけど、だから泣けるんだろうな。
いくら言葉にしても伝えられない矛盾や苛立ちを、「ルイン」という名前で、しかも信号にして伝えたから、だから伝わった。どの組織がどういう思惑で動いて……とか、もう関係ない。富野おじいちゃんは、頑張って伝えたかったんだな。生きているうちに、知っていることすべて。「お前さん方、誰かにとって、圧倒的な味方になれよ!」って。確かに、これはオジサン向けではない。
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そうして再会できたマニィとマスクが抱き合っている横で、マスクの右腕だったバララが、私は何も気にしてませんよって顔で、ひとりで伸びをしている。だけど、マスクの前を去るとき、バララは自分のヘルメットを、彼から乱暴にひったくってるんだよね。しかも、その芝居はフレームの外でやっている。カメラが撮ったのは、バララの背中だけだった。それがまた、寂しくていい。
パイロットたちが雑魚寝しているシーンの次に、ブリッジで仕事している人たちが映る。誰かが寝てるときは、誰かが仕事している。フレームの外で、いつも必ず誰かが生きている。そう考えると、実は主人公たちの人生の晴れ舞台ってのは、この全26話には入ってないような気がする。シリーズの前後に広がってるんだ。
組織の中であれこれ争っている大人たちを見限って、子どもたちが「……行こう」と冷めてしまう。もう、大人たちの人生は終わっているから。彼らは、子どもたちを支配できない。世界は、フレームに収まらないほど大きかった。それが、富野おじいちゃんの生きてきた実感なんじゃない? とても誠実だし、スケールの大きな作品だと思う。
(C)創通・サンライズ・MBS
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