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2015年2月19日 (木)

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ニコラス・ローグ監督の『WALKABOUT 美しき冒険旅行』。1971年のイギリス映画。
Walkaboutオーストラリアに旅行に来た姉と弟。だが、特に理由もなく父親が発狂し、砂漠の真ん中で、子どもたちに発砲しはじめる。その不条理な行為が気持ち悪くて、なかなかゾクゾクする出だしだ。

姉は弟を連れて逃げ出し、小さなオアシスを転々とするうち、アボリジニの少年に助けられる。
「美しき冒険旅行」という無理やりな邦題がついているが、動物の死骸はこれでもかと出てくるし、カンガルーを原始的な武具で叩き殺したり、残虐なシーンが多い。そして、アボリジニの少年は、美しい姉と結婚し、廃墟で暮らしていくことを夢見るが、彼女に拒絶されてしまう。その末路は、あまりにも惨い。

では、何が「美しき」なのかというと、白人の姉を演じたジェニー・アガターのヌードだろう。『2300年未来への旅』や『狼男アメリカン』、最近では『アベンジャーズ』にも出演している女優だから、そっちの方が僕らのようなオタクには、馴染みぶかいはず。
そのジェニー・アガターが全裸で泳ぐ美しいシーンがあるのだが、アメリカではカットされて公開されたという。彼女は当時、16歳だったそうだ。


僕の借りてきたDVDはHDリマスター版で、つい今月、出たばかりらしい。
しかし、「16歳の全裸のシーンがある」と言われたら、今どきは「児童ポルノ」と烙印を押されかねない。22歳の歌手が、アメリカのファッション誌にトップレスのセミヌード写真を掲載したところ、国内で「童顔なので13歳に見える」「児童ポルノ」と批判されたらしい。笑ってすませられない、ある種の病理を感じる。⇒“米歌手セレーナ・ゴメスのトップレス写真に「まるで児童ポルノだ」の批判”(

それだけ、アメリカでは児童を狙った性犯罪が多いのだと思う。イギリスでも、たまにギョッとするような数字を目にすることがある。
だが、犯罪性のないヌードをいくら取り締まったところで、犯罪が減少するわけではない。欧米での聖職者による性虐待のニュースを見ると、彼らは何を正すべきか混乱をきたしてしまい、出口のない泥沼にはまっているかに見える。
なので、「先進国は日本などと違って、これだけ厳しいのだ、立派なのだ」と言われても、性犯罪の数字を見てしまうと、説得力が消し飛ぶ。

……にも関わらず、アメリカ映画もフランス映画も、その表現の幅はとてつもなく広く、自由だ。もちろん、この『WALKABOUT』も。その獰猛なまでの開拓精神には新鮮な気持ちにさせられるし、カンヌ国際映画祭に出品されたと聞くと、異質な文化を受け入れる柔軟さに胸を打たれる。


『WALKABOUT』でジェニー・アガターの全裸が出てくるのは、アボリジニの儀式で少年が「妻を得てもいい」と許されるからだ、との解説をネットで見つけた。つまり、ヌードが出てくるのには必然性があるし、エロチックに描かれる必要がある……と。
僕には、そこまでは読みとることは出来なかった。だが、ばっさりとカットして何か為した気になっている大国より、まだこの国には文化の解読者・理解者がいるのだ。

……いや、『WALKABOUT』のヌードシーンをカットしただけで、アメリカを文化的に野蛮だと断じてもいけないな。もっともっと、よく勉強しないと。

(c)1971 Si Litvinoff Film Productions. All Rights Reserved.

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