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モデルグラフィックス 4月号 発売中
●組まず語り症候群 第28夜
今号は、アオシマのオーディオ・シリーズのプラモデルが二つ手に入ったというので、久々にメカ物です(サブタイトルは「カラオケのオケはオーケストラのオケなんだぜ」)。しかし、このページも人気があるんだかないんだか……。編集部からの「一冊にまとめませんか?」って話も、どっかへ消えてしまいました。
だからというわけではないのですが、僕のコピー誌[Fig 50's]を、『組まず語り』の感想を書いてくれた読者の方、20名にプレゼントします。20名というと、おそらく応募者全員でしょうけどね。
よろしくお願いします!
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4月に、ギリシャのサントリーニ島に旅行するので、あまりお金を使わずにおとなしくしようとしていたのですが、3月に引っ越すことにしました。いま住んでいるマンション(……に見えるけど、中身は木造アパート)が、あまりに耐え難いから。
最初は旅行から戻って、5月ごろから物件を探してみようかと思ったんだけど、下手にネットで問い合わせてはいけませんね。不動産会社をたらい回しにされ、その中のさらに一社にたらい回しにされる。
あのね、去年の秋ぐらいに湯浅誠さんの本などを図書館で借りて、貧困について調べたんです。僕がライターという引きこもりがちな仕事をしている間に、世の中は激変していた。僕が大学を卒業した年って、まだバブルの余熱がたっぷりで、「就職すれば一生安泰」と信じられていたし、「バイトで食いつなぐ」ことが、気楽な生き方だと肯定されていた。
今、ワンルームを貸し出している不動産屋や引っ越し業者は、あの頃の浮ついた感覚で「サービス」している。いまが繁忙期だから強気なんだろうけど、自分で「繁忙期なので」と、満面の笑みで、割増料金を要求してくる。
「お金に余裕のある方からは、早めにとるようにしてる」なんて、平気で口にしちゃう。
若い彼らは、人のいなくなった、あの寂寥としたパーティ会場を見ていない。
僕らは、見たからね。三年間もバイトした模型会社で、アルバイト全員がいきなり解雇された瞬間を、僕はまだ覚えている。16億円もつぎこんで、一本もゲームを完成させられなかったゲーム会社から、次々と人が消えていった朝も、よく知っている。
パーティは、いつか必ず終わるんだ。
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だけど、不況になってバイトが全員クビとか、社員半分リストラとか、まだ目に見えていたからマシだったのかも知れない。「ああ、これで終わったな」って分かるから。
今の不幸って、目に見えづらいんじゃない? 医療被曝は分かるけど、原発事故で自分がどれぐらい被曝してるか、そこまでは分からないじゃない? 後から、「実は基準値ごえの汚染水、ずーっと垂れ流しでした」なんて言われても、もう元には戻らないじゃない? だから、怒るタイミングさえ貰えないわけ。感情の動きさえ、えぐり取られている。後から、気づくんだ。
不幸な人って、自分が不幸であることに気がついてない。僕だって、そうかも知れない。不動産屋や引っ越し業者が、盛大に金を要求するから「待てよ、ちょっと変だろうよ」と言い返せる。「俺のこと、騙してねえか?」って睨みかえせるうちは、まだマシなんですよ。
だから、「いま幸せな時代だな」って、漠然と思っているとしたら、それが怖い。不幸も幸せも、この目で見て確かめるまで、信じてはいけない。
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