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Febri Vol.26 25日発売予定
●Febri Art Style 構成・執筆
今回は、『四月は君の嘘』の美術で、薄井久代美術監督にインタビューしました。
オープニングのハーモニー処理には、美術は関わっていないそうです。ただ、本編は光のフレアを撮影で入れるのではなく、美術で描いている箇所もあったりするので、そのあたりを中心に聞いています。
あと、影の付け方とか、絵を描いている人には、けっこう参考になりそうな話も出てきます。
(基本的に、アニメの美術のお話は、取材する側も絵が好きでないと、どうにもならないですね……当たり前の話だけど。)
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ムービープラスの早朝映画で、『コンタクト』。
公開当時は、宇宙へ移送されてからのイメージが、宇宙人の造形から逃げているような気がして、好きになれなかった。今は、下手にひねったデザインを映像に出すより、観客の意識からイメージを掘り起こすような作劇に好感が持てる。
父親の葬儀の日、寒風の中、子どもの頃の主人公が憂鬱そうに座り込んでいるシーンが、とてもいい。ああいうイヤな寒さを、僕も、過去に味わったような気がする。
(そのシーンの終わり近く、遠くの犬の吠え声が、offで入るのが寂寥感をかきたてる。)
『エイリアン』のように、現実にプラスオンする形で、稚気にまかせてデザインを増やしていく表現も好き。だけど、現実を実感的にとらえて、普段は忘れている感覚や感触を掬いあげる力が、映画にはある。歳くってくると、日々の実感を呼び覚ますシーンや演技に心惹かれる。
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無責任に「宇宙には、夢や可能性があります」と言っているんじゃなくて、現実といかにして付き合うべきかを、シビアに描いた映画だと思う。どんなに生々しい体験を経ていようと、それを他人に伝えるすべがなければ、現実は遠ざかっていく。
査問委員会で何も証明できなかった主人公は、ふたたび、ニューメキシコ州の電波望遠鏡の町へ帰っていく。モニュメント・バレーの岩山で、彼女はこれまでにない孤独を、冷たい指先に感じている。18時間の至高体験のゆるやかな余韻、長すぎる残響の中に、彼女の人生は続いていく。
査問委員会のシーンで思ったが、愛のない知識や理屈は、ただの暴力でしかない。
知識を得れば得るほど、愛情や寛容さが必要になるんだ。
WarnerBros./Photofest/ゲッティイメージズ
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