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2014年12月15日 (月)

■1215■

シナリオは面白いことが大前提!アニメ「妖怪ウォッチ」監督 ウシロシンジが語る制作の裏側
T640_663403『妖怪ウォッチ』のウシロシンジ監督に、パワフルなシナリオ会議の様子を聞きました。実は、かなり打ち合わせ時のノリで内容を決めているのですが、この打ち合わせは、才能のない人にとっては地獄です(笑)。
才能がなければ見ることのできない、努力しきれずに力尽きたからこそ見えてくる風景というのも、あるんです。


才能がないのに、「ある」と信じこんで努力していると、大変な苦労を強いられることになります。それでも、20代のうちは立て直しがきく。「30歳をすぎて、才能があるくせに世の中に出られないのは、そりゃあ性格の問題だよ」と、ある人にいわれて、僕はあきらめがついたんです。性格をあきらめたのではなく、「自分には、創作の才能がない」と認められたんです。
それはやっぱり、失敗してみないと分からない。人にアイデアを見せて、首を横にふられないと、分からない世界です。そういう恥を、僕は20代のころ、百回ぐらい味わってきたので。

でね。己の才能のなさに絶望しつづている間、「その裏で、しっかり蓄積できているものがあるはずだから、それを見つけろ」と、僕は言いたいんです。
ぜんぜん絵がヘタクソ、物語をつくるオリジナリティも筆力もない。そんな風にけなされて、うなだれて帰ってきた経験のある人は、何万、何十万といるはず。その帰り道に、ちょっとずつ熟成されていくものがあるんだと、僕は信じている。それは、他人に対する接し方かも知れない。「もうちょっと愛想よくすれば、担当者のウケも少しは良くなるかも?」と反省できたなら、笑顔をつくる習慣が身につくでしょう。だったら、笑顔を活かせる仕事についたほうが、絶対に幸せ。
それは、隠れた才能の発見であって、妥協ではない。


実体験にとぼしい僕は、かじりつくように本を読んで、そこからビジュアル的に面白そうなアイデアをひねり出した。だけど、アイデアを具体的に映像化していくのは、また別の才能です。現場でおおぜいのスタッフに指示を出せるぐらいのコミュニケーション能力、寒くても元気に屋外で動きまわれる体力も必要。僕には、どちらもなかった。

すると、現場でどんどん撮れる才能の持ち主に、アイデアだけ持っていかれる(笑)。
最初は怒っていたけど、「いやいや、待てよ。こいつの実践していることは、俺には出来ないすごい事だぞ?」と気がつく。そうすると、どうやって彼がアイデアを形にしているのか、興味がわく。……それで、僕は「取材すること」が好きになったんです。
自分でゼロから創るよりは、もう完成している作品から帰納的に「作家の考え」を類推することが面白くなってきた。ある編集者が「雑誌に書いてみない?」と誘ってくれて、初めて僕の成果物が、世に出たわけです。
それまで、10年かかりました。だけど、その後、16年間も雑誌や本に記事を書いているのだから、無駄な10年ではなかったでしょう。


だけど、「ライターの才能」は文章力なんかではないと、僕は思っています。ひとえにスケジュール管理能力。シメキリを死守するため、複数の仕事を調整していく。プロジェクト全体からすれば、ライターの文才なんて、「ないよりは、あった方がまし」レベルでしょう。
そこが、小説家や脚本家と違うところです。別の種類の才能です。

それでも創作をやりたかったら、趣味の世界でやればいい。そのほうが幸せなはずです。
どうしてもプロになりたいがため、長年かけて構築した人間関係、もともとあったはずの才能、すべてご破算にしてしまった人を、何人か知っています。

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