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2014年12月11日 (木)

■1211■

レンタルで、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』。
Jppubphotosub1reveot_large原作は日本のライトノベルだが、英語圏で出版されるかされないかという初期の段階で、早くも映画化企画が立案されたらしい。さすが、ハリウッドは企画に飢えている。
日本のアイデアが輸出される形でのハリウッド映画化は、ホラー映画をはじめ、過去にいくつも例がある。でも、オタク・コンテンツを作っている人は、別にハリウッドで映画化されることを夢見てはいないんだよね。そんなことより、国内でアニメ化してほしいんだ。
「内輪で熱狂的に愛されれば、それで満足」って価値観が、ハリウッドに搾取されつくされない防波堤にもなっている。『ブラック★ロックシューター』は、pixivとニコ動から深夜アニメへ展開したからサクセスなのであって、深夜アニメが「あがり」なんです。クールジャパンがどうこう議論している議員さんには、この感覚すら分からない。うまく行くわけないじゃない。

でも、ハリウッド版『オール・ユー~』には好感をもった。ダグ・リーマン監督はSF映画は初めてで、別にマニアではない。それゆえの実直さが、端々に感じられる。強化外骨格の管制システムが日本語音声だったりするのも、さり気ないリスペクトになっていた。


強化外骨格をCGにせず、実際に着用してアクションするメイキングは事前に見ていたが、レンタル用ブルーレイには、外骨格をFRPで作成しているシーンも収録されている。それぞれ細部が異なるので、何十人というスタッフが、えんえんとFRPを磨き上げている。
時間をループさせられる主人公が、いよいよ敵のそばまでたどり着けたのか……?というタイミングで、バッテリーの切れた外骨格を脱ぎ捨てていくシーンがいい。自由になった主人公の背後で、じっと動かなくなった外骨格……それは、彼が何十回と体験させられてきた過去の亡き骸のように見える。

この映画は、計算づくで撮影されたわけではなく、80回も書き直された脚本は完成せず、撮影しながら、現場で細部を決めていったという (スクリプターが、「このシーンはこう変わったから、あのカットはキープだ」とプロっぽい会話をかわしているメイキングには、見ごたえがある……何百人という細分化されたプロたちが、映画を支えているのだ)。
少し似た構成の『メメント』がソリッドなのに対して、『オール・ユー~』には、その先どうなるのか分からない揺らぎ、柔軟性がある。だから、そのバッファの中で、自分のプレイしてきた様々なゲームや、何度もリプレイしてループを脱したときの達成感、そのループが実体験としてどんな意味を持つのか?などなど、好き勝手なことを考えていられた。

おんぶにだっこで、最後の1秒まで飽きさせない映画に価値があるのかと言ったら、見ながらあれこれ考えられる映画にだって価値はあるし、それぐらいの余裕は見る側にもほしい。


だけど、いまは映画に付随する情報が多すぎるので、誰もがハズレを引きたくない。だから、100点満点で何点だとか、★がいくつあるとか、減点法のネガティブなレビューばかり当てにする。しょせんは減点法だから、いい部分を見つけたら星が増える、悪い部分が多いからマイナスといった程度の、ケチくさい評価しかできない。
つまり、「満点をこえる体験」を、ハナっから拒否してしまっているのだ。せっかく予想外の出会いがあっても、「どこで点を減らせるか」ばかり考えている。初対面の相手のどこがダメなのか、あら探しするのに似ている。
そういう人ばかりになってしまったら、映画は30年もたたずに滅びると、僕は思っている。

(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS(BMI)LIMITED

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