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月刊モデルグラフィックス 10月号 発売中
●「組まず語り症候群」第22夜
この連載も、そろそろ開始して二年ぐらいになるんですね。今回のサブタイトル、「てめえらの爪はなに色だーっ!!」の意味は、本文を読めば分かります。ネタは『北斗の拳』と『伝説巨神イデオン』のフィギュア・キットです。
80年代の、ほんの3年ぐらいの間、「とりあえずプラモデルにすれば、子どもに認識してもらえる」文化がありました。その感覚は、後に「擬人化」「萌えおこし」などのキャラクター文化に吸収されていったと思うのですが、プラモデル文化まで把握して語る人は、なかなかいませんね……。
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昨日は、友人に誘われ、「平成26年度 富士総合火力演習」(総火演)を見学してきました。
ロボットアニメをつくるとき、あるアニメ監督が「本物の兵器を知らなければ架空の兵器など描けるわけがない」と、スタッフを総火演に引き連れていった逸話があります。
自衛隊も兵器も、日本ではフィクションに近しい存在なので、無料配布のパンフレットには『ガールズ&パンツァー』と『白銀の意思 アルジェヴォルン』(ミリタリー調のロボットアニメ)の広告が刷られていました。
総火演の後半は、「敵に上陸された島を奪還する」シナリオでの訓練で、ナレーションを交えるとますます虚構性が高まり、見た後は「USJのような、実物大のプロップを使った大迫力アトラクション」を堪能したように感じられます。
もし、ミリオタっぽい男性ばかりが観客なら「派手なアトラクションだったな」という、お気楽な感想は出なかったのかも。観客は親子連れ、夫婦連れが多く、中には迷彩柄のタンクトップを着たセクシーなお姉さんも……。
「そういう普通の人たちが、本物の兵器を楽しむために集まるなんて異常だ」と、神経質な人には言われてしまいそう。食べ物の屋台は出てるし、自衛隊関連のグッズも売っているし、完全に「お祭り」なんだよね、雰囲気は。
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誘ってくれた友達は、兵器関連の仕事をしているので、帰りの車中ではいろいろな裏話を聞いた。彼とは『コンバット』ごっこをしていた小学生時代からの付き合いで、そもそもミリタリーモデルの楽しみ方もプラモデルの塗装なども、すべて彼から学んだ。
今では二児の父親となった彼は、思想的に偏っているわけではなく、現政権への批判も多い。
それは別にして、僕がちょっと気になるのは、『ガルパン』や『艦これ』のような萌えミリタリー・ジャンルが「日本の右傾化に拍車をかけている」などと、ネットで批判されがちなことなんだよねえ……。
社会からの批判に対して、アニメ業界は対抗手段を持っていないと思う。児ポ法改正後、毎日新聞の社説で「アニメ業界は自粛に取り組むべき」とまで書かれたのに、それすら知らない業界人が大半だろう。
そして、萌えミリタリー物が叩かれる理由は、「アニメだから」「ゲームだから」「アニメやゲームのファンは気持ち悪いから」という、ありきたりな偏見が原因だと思う。児ポ法改正の煽りをくらったのと、たいして変わらない。
児ポ法改正に関して、漫画業界の動きは活発だったけど、アニメ業界は沈黙したままだった。社会とのケーブルが断線しているかのように、僕には見える。批判に対して、何のリアクションもないから懲りてないように見えてしまうし、それゆえ、(漫画より)叩きやすいんだろう。
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結局、性犯罪も右傾化も「気持ち悪いオタクのせい」にされてしまって、「とにかくオタクを叩けば、意見が正当化される」という風潮が出来ているとすれば、それはこの後も、ずっと続くでしょう。
どうしてオタク文化が「気持ち悪い」と思われてしまうかというと、「よく知らない」「見たことがない」から(これも毎度のことだよなあ……)。もしかすると、僕らから「外部」に向かってアピールしていくことが必要なのかも知れない。
「こっちには、こういう事情があることを分かって欲しい」とオープンに言い合える社会になれば、かなりの誤解や憎悪、差別を取り除けるのではないでしょうか。
やっぱり、話し合いと語りかけが大事なんですよ。僕は二度の署名でお金も力も使い果たしてしまったけど、まだもうちょっと、出来ることがないか考えてみます。
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