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2014年7月28日 (月)

■0728■

レンタルで、『ルビー・スパークス』。
343830_01_01_02成功者だが友だちの少ない若い小説家が、夢の中に出てきた女性をモデルに、恋愛小説を書きはじめる。ルビーと名づけられた小説のヒロインは、ある朝、生身の女性となって小説家の前に現れる。似たような設定の物語は無数にあると思うが、不思議な美しさをもった映画だ。

主演の二人は、実生活でもカップルだという。そのせいか、多様に変化する二人の関係が、「こういうこと、確かにあるよなあ」と思わせるほどリアルに描かれている(ルビー役のゾーイ・カザンが、脚本も手がけている)。

特に心を惹かれたのは、「墓地でゾンビ映画を見る」シーンだ。観客はみんな、酒を片手にバカ笑いしながらゾンビ映画を見るわけだ。そんな粋なイベントに誘ってくれる女の子がいたら、確かに、ぞっこん惚れこんでしまうかも知れない。
現実は、そこまで理想どおりに進まないから、小説家は物語のつづきを書くことで、ルビーの振る舞いをコントロールしてしまう。だが、当のルビーには、自分が作中人物だという自覚がない。『惑星ソラリス』で、何度も再生される亡き妻の不条理な存在感に通じるところがある。


ルビー役のゾーイ・カザンは、他にこれといった出演作に恵まれていないのだが、そこがまた新鮮でよかった。監督は、『リトル・ミス・サンシャイン』のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス夫妻。風変わりな登場人物のディテールをつくり込んで、ふわりとリアリティの衣をかぶせるのが上手い。
ロケ地の選択も、センスがいい。

この映画は、とても不思議な構造をもっている。映画自体が閉じられた一篇の物語なのだが、その中に「書きかけの小説」があり、その小説から生まれたルビーとの出会いが、さらに「別の小説」として書かれることで、虚構が虚構を二重、三重にサンドイッチしていく。その狭間で、ルビーとの出会いという最も明確なウソだけが、唯一の生の体験として、温かく浮かび上がってくる。
その構造が、何より美しい。『バニラ・スカイ』が好きな人なら、きっと気に入るんじゃないかな。


先週末は、小学校時代の友人3人と、『GODZILLA』を見に行った。
翌日、「国産のゴジラ映画は、もっと面白かったはず」と、録画してあった『ゴジラvsデストロイア』を見てみた。
『~デストロイア』も、第一作とのつながりを大事にした作品なのだが、この頃のゴジラ映画は「始めてしまったことを、どう綺麗に終わらせるか」に腐心しており、その悲壮感が、独特の味わいになっている。

それなのに、なかなか綺麗に終われないところが、また可愛らしくもある。
どうか、傑作/駄作のような冷たい二項対立だけで、映画を断じないでほしい。

(C) 2012Twentieth Century Fox

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