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2014年6月30日 (月)

■0630■

近所の歩道橋を渡ったら、階段の隅っこに鳩がうずくまっていた。
僕が通りかかるとき、ビクッと驚いていたが、その場から動こうとしない。よく見ると、左の羽が不自然に曲がっているので、骨折してしまったのかも知れない。
――どうしよう、と考えた。線路の反対側には獣医があるが、連れて行ったら、迷惑がられるかも知れない。今から友達と会うので、家に連れて帰ることはできない。せめて、水だけでも与えられないかと思案したが、鳥がどうやって水を飲むのか見たことがない(いま考えると、ボトルのキャップに水を溜めてやれば、飲めたのかも知れない)。
しばし佇んで、「どんな生き物にも宿命があるのだ」と自分に言い聞かせて、歩き去った。

助けないまでも、気にはかけたのだ、とここに書くことで、僕は許されようとしている。
その直後に会った友人は、「ネットには現実を虚構化する力がある」と言っていた。


「現実の重力を持った出来事が、ネットに書かれた瞬間、その重みを失ってしまう」とも、その友人は言っていた。だから、物事を遠くに追いやって他人事にするには「あれはクソだな」「あいつはカスだな」と、匿名のままネットに書き散らすにかぎる。

先週は、ほぼ毎日、かつて接触のなかったジャンルの人たちの元へ足を運んだ。
そこで得られる情報は、話し手の表情や声色によって、いく重にも意味が膨らんでいく。そうして得られた実感も、ネットに書いた瞬間、「はあ? 今ごろ気がついたの?」などと見知らぬ他人に笑われてしまう。あるいは、頭でっかちな理屈で「あいつの行動は得策とは言えない」などと批判されてしまう。

集団的自衛権に抗議して、男性が焼身自殺をはかった。「バカなことを」「無駄なことを」と、安全圏から小石を投げる人たちで、ネットは溢れかえっていることだろう。


オタクという人種は、現実の生きづらさを嫌というほど肌身に感じてきた人が多いと思うので、匿名で物事を遠くにおいやることで「現実からの退避」をはかるのは、理解できる。「ネットの外へ出ろ」とは、言いづらい。
ただ、名前も身分も一切を隠したまま、自らは社会に対して意見しない、立場の違う者と話そうともしない、まるでリスクを負わない人間の言葉に説得力が出るわけがない。
漫画・アニメに対する弾圧を跳ね返せないのは、まさに「オタクがオタクであるがため」。実社会で行動しない言い訳だけはズラリと並べて完全武装するオタクの性癖ゆえだろう。

それでも、ネットに引きこもっているからこそ、出来ることだってあるはずだ……と、僕は考える。
例えば、被虐待児童を救おうとしている団体は、小さなところほど実効力のある活動をしており、それゆえに人手でもなく資金もない。どこの団体へも、ゆうちょ銀行から寄付できるはずなので、児童ポルノ法を契機に児童への性虐待に憤った人は、千円でもいいから寄付してはどうだろうか、と思う。それなら、顔を出さなくてすむかわり、ネットには「児童保護団体に寄付しました」ぐらいは書けるので、オタクのイメージアップにもなるだろう。
メディアの流布する「オタクはロリコンで変態で、いつも児童を狙っている」屈辱的なイメージを、少しは押し返せるはずだ。

団体の具体名を出してしまうと、それこそ「現実の重力」のないフラットな情報になってしまうので、書かないほうがいいと僕は判断している。
直接会った相手には、「あの団体もいい活動をしてはいるんだけど、告知の仕方で損をしている」「少しだけ寄付したけど、もう十分かな」などと、具体的に話をするようにしている。地道な活動をしている人たちほど、どことなく話が下手で、だけど一生懸命で、僕は親近感をおぼえてしまう。


僕の中で、漫画・アニメへの国内外からのいわれのない弾圧への抗議と、児童への性虐待(とその対応策)は、ゆっくりと別々のものへと剥がれつつある。
ただ、友人とも意見交換したのだが、現実に立脚しない創作物はあり得ない。「犯罪をおかさない代わりに、創作行為をしている」と言える面さえある。それはそれで是非を議論する必要があるだろう。「結論ありき」でなければ、創作物と犯罪の関係を研究するのも構わない。

そのとき、「ネットから出てこない頭でっかちなオタクたち」は、研究対象にされるだけで議論に加われないのではないかという危惧はある。(いま現在、「気持ち悪い」と糾弾の対象にはなっているわけで。)
そんなジレンマを抱えながら、右手でメディアの暴論に拳を突き上げつつ、左手で児童保護活動にかすかな接点を保っているのが、今の状態。

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