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2014年6月15日 (日)

■0615■

ひどい夢で、目が覚めた。
僕は二匹の犬を連れて、林の中の小屋に住んでいる。犬たちは二匹とも足を骨折していて、一匹はかなり具合が悪そうだ。たまに元気に走ったかと思うと、一本の足を折り曲げて歩き、さみしそうに座りこんでしまう。
僕は、「そうか、痛いのか」と彼の足をさすってやるのだが、それすらためらわれるほど、犬は辛そうにしている。ちょっと探せば、獣医ぐらい近くにあるだろうに、僕は犬を医者に連れていくのが面倒なのだ。
ある夜、二匹の犬たちがぐっすりと眠っているのを見た。足の悪いほうの一匹は、とくに気持ちよさそうに寝ている。「このまま死んでくれたら、こいつも僕も幸せなのに」……犬たちの寝顔を見ながら、僕は罪悪感に胸がつぶれそうになり、うずくまって泣いた。

――夢の中とはいえ、覚えのある光景だった。僕は自分の飼っていた犬たちを、十分に見てやれなかった。苦痛をやわらげてやることが出来なかった。彼らの苦痛を知っていながら、見て見ぬふりをしていた。
何より怖ろしいのは、大変な事態が起きているのに、「大丈夫、まだ大したことはない」と自分を欺いたまま、取り返しがつかなくなるまで(半ば故意に)放っておくことだ。そして、「こんなはずではなかった」という諦観と失意のうちに、一生を終える――僕は何より、それを怖れている。


東小雪『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』。あんな署名キャンペーン(『児童ポルノではなく、【児童性虐待記録物】と呼んでください。』)をやっておいて、 実際に性虐待を受けていた人の手記を読まない理由はない。
Untitled大きく三つのパートに分かれている。宝塚音楽学校時代の理不尽な暴力の数々。実父からの性虐待をカウンセリングで明らかにしていく過程。最後は、同性のパートナーとのディズニー・シーでの挙式、レズビアンとしての自己分析。
サラッと読める割に、やはり重たい本だった。

ショックだったのは、小学生だった著者を風呂場で犯しつづけた父親の社会的立場。金沢市の演劇活動の中心的人物として、いまだに有名なのだという(現在は故人)。
「少女に性犯罪を行うのは、社交性に欠ける独身男性」――誘拐・殺人などの重大事件では、それは確かに間違ってはいない。だが、圧倒的多数とされる家庭内での性虐待は、ほぼまったく表面化しない。僕の知り合いにも、幼いころ、父親に性行為を迫られていた人がいる。周囲に告げられないだけで、実は何万人といるのではないだろうか。

そのような社会背景に想像をめぐらすと、「被害者のいない二次元なら、何をしてもいいだろう」とは言いがたい。「たとえ創作の中であっても、子供に性欲を抱いてほしくない」という気持ちも理解できる。
「人の心に、命令はできない」――『ベルサイユのばら』の中のセリフが、僕の人間観の根源にある。実際の性虐待被害者と、空想的な趣味として少女愛を抱いている人は仲良くできないだろうが、互いに距離を保ったまま、双方が生きつづける社会は実現不可能なのだろうか。

今の社会、今の法律は、空想的な少女愛・少年愛を獰猛に狩りだす一方、いまこの瞬間にも沈黙を強いられている幼い性虐待被害者たちを見捨てているかに見える。
僕は表現規制に敢然と戦いを挑むいっぽう、性虐待被害者の救済活動を行っている団体にもアプローチしている。両方やらないと、自分の中でバランスがとれない。


『児童ポルノではなく、【児童性虐待記録物】と呼んでください。』の署名簿は、昨夜、全721通の梱包が終わり、今は宅急便の集荷を待っているところです。
結局、僕ひとりで721通を手作業で梱包、添付資料は3人でコピーして運んだわけですが、「ここまでなら個人レベルで出来る」と言えるし、逆に「大勢で助け合いながら表現規制に対抗する」イメージが遠のいたとも言えます。

表現規制については、少数精鋭で対抗していくしかない。僕は精鋭のうちに入らないかも知れないけど、規制している相手は空想ではなく実在してるので、直接会う方法を考える。
もう、ネットで愚痴っているレベルではないと思います。

「児童性虐待記録物」という言葉は、Twitterで検索してみると、それなりに広まってきたように感じられますが、実社会では認知されていないでしょう。
また、表現規制に反対しているのはオタクの人が多いと思いますが、Googleの言葉狩りを見れば分かるように、海外まで巻き込んで急速に「オタク包囲網」が形成されようとしています。それに対して、オタク本人たちが何もしないことには、もはや驚きません。いちばん怖いのは、地域社会で「オタクっぽい外見の人は即通報」のような運動が起きたときです。
そうなったとき、昼間からブラブラしている独身中年である僕は、住む場所を失うかも知れない。そこまでの最悪状況を想定したら、実社会に働きかけていく以外、生きのびる方法はないかと思います。

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