■スウェーデン旅行記・9■
■4/19-1
午前4時起床。昨夜はカーテンを閉めず、夜空を眺めながら、とろけるように眠った。
五時半にホテルをチェックアウト。お兄さんが「よい時間を過ごせましたか?」というような意味のことを話すが、どう返答していいか分からず、曖昧な笑みを返すしかなかった。「素晴らしいホテルだ」と言いたかったのに……。
フェリーに乗るときも、「ヘイ!」と元気よく挨拶されたのに、何も答えられなかった。この性癖は、おおいに僕を苦しめた。何でもいいからリアクションしようと決めた。
帰りのフェリーは空いていた。朝食として、サンドイッチと飲み物を買ってくる。だが、最初から椅子が後ろに倒されており、直し方が分からない。その状態でイビキをかいて寝てしまったので、後ろの人に申し訳ない気分になる。
すると、後ろの席のオジサンが、「How much ~?」と何か聞いてきた。左手首をトントンと指さすので、時間を聞いているのだろう。「時計は持っていません」と答えたのだが、スマホがあった。振り向いて、スマホを見せると納得した様子で立ち上がり……そのまま帰ってこなかった。どうしたんだろうか。
椅子は、手でガッチャンと押しもどすと、普通の状態にできた。オジサンは席が窮屈だったのかも知れない。
■4/19-2
さて、この旅行最後のホテルは、価格をおさえるため、かなり郊外のホテルにした。
ストックホルムの乗り物はSL社という会社一社が仕切っているので、SLセンターというところで、ホテルの地図を見せる。黒人の受付のお姉さんは「これは分からない……」という顔をする。地図に住所をメモってあったので、「アドレスはこれです」と言うと、ネットで検索してくれた。
「ここから○○行きの地下鉄に乗って、□□で下車、そのままバスに乗って、この停留所で下車。そこから50メートル歩きます。いま、ぜんぶプリントしますからね」と、とても親切。キップを買って、軽く昼食。ハンバーガー屋のお姉さんが、袋にアメを二個、入れてくれた。
さて、地下鉄とバスを乗り継ぐと、「よくもまあ、こんなところにホテルが」と、期待どおりの場所に着いた。
部屋の内装も、それなりだ。ホテルの出口では、女たちがたまってタバコを吹かしている。従業員のお姉ちゃんまで混じっている。「こりゃダメだ」感が、また楽しい。まだ昼過ぎなので、歩いてみることにした。
すると、地元の老人からスウェーデン語で話しかけられる。「Excuse me ?」と聞き返すと、「ワシはな……ええと、この辺りのな」と、手をぐるりと回して、周囲に立つマンションを示して、「コッコッコッ」と口の中で舌を鳴らした。さすがに意味が分からないので、「Sorry.」と言って別れた。納得いくまで聞いてあければ良かった。
バスを使わずとも、30分ほど歩くと、地下鉄駅についた。駅の辺りには公園やスーパー、 レストランもある。橋を渡ると、セーデルマルム島へ出る。橋の向こうは、ビルの密集した大都会だ。今日は暖かい。橋の周辺や洋上のレストランでは、人々が思い思いにくつろいでいる。僕も我慢できず、セーデルマルム島側のレストランに腰を落ち着け、ビールを頼んだ。55SEK。
(この写真は、そのレストランの席から。)
眺めはよくないが、この陽光。雑踏。人々。とろけるような時間がふりそそぐ。
明日、最後の一日、どうやって過ごそうか。
■4/19-3
もう一軒、ぜひ海に面した店でいっぱいやりたいと思って入店すると、「ビールだけなら、店内でどうぞ」とのことなので、さっさと飲んで、さっさと出る。54SEK。
橋を戻る……そのついでに、海に面した公園をながめる。陽光の中、アメフトをしている人々。のんびりと芝生に寝ているカップル。どこまでも自由な光の時間。
橋の「こちら側」に戻ってきて、駅前の小さなレストランに入る。店主は中国人だった。出身地を聞くと、「生まれはスウェーデンですが、日本に一年、中国に二年いました」と胸を張る。なかなかのハンサムだ。
アジア料理の店だったので、スシもある。いちばん安いのを頼んでみた。
翌日知ったのだが、この周辺はスシバーが多くて競争が激しい。そのせいか、味はとても良かった。ビール一杯をいれて、115SEK。
清算のとき、やはり中国人の女の子が「スウェーデンには何日いるんですか?」「一週間だよ」「住んでるのは大阪? 東京?」「東京だよ」「私、渋谷が大好きなんです」と、英語で話した。こうして書くと、ほとんどキャバクラの会話だね。
彼女は、きれいな日本語で「ありがとう」と笑ってくれた。僕も「ありがとう」と返した。
ストックホルムの中華食材専門のスーパーに入ったことがあったが、あのときの中国人たちは、よそよそしかった。
だからって、僕は日本人と群れたいとは思わない。ひとりが好き。ひとりで歩いていると、すれ違いざまに何かボソッと言われることが、何度かあった。それはまあ、気にしない。
スシだけでは足りないので、駅前のスーパーで何か買ったはずだが、メモが残っていない。
明日は、この近くにあるトレカンテン湖に行ってみよう。最後の一日、どうすごそうか。(つづく)
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