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バディ・コンプレックス Blu-ray Vol.1 発売中
●KEY ANIMATION GALLERY 構成
ブックレット内の原画集(16ページ)を構成・執筆しています。
「作画がよかった」と言うと、昨今は「作画枚数が多い」「よく動いている」ではなく、「デッサンが崩れていない」という意味になります。そのユーザー側の変化を意識しないと、行き詰まります。
「絵」として何が面白いのか、美しいのかリセットしないとダメ。影やハイライトを示す色鉛筆の配分とか……その先の工程をあえて無視して、原画段階を「最終完成形」として捉えると、作品全体の捉え方さえ変化していくような気がします。
(自分の評価軸なんてものは、刷新していくためにあるので。)
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昨夜、レンタルBlu-rayで『メリー・ポピンズ』を見て、立川シネマシティで『ウォルト・ディズニーの約束』の朝の回を見てきた。『メリー・ポピンズ』を見ていないと、『~約束』は分かりづらい箇所が、かなり多くある。『不思議の国のアリス』のモデルとなった女性をモチーフにした『ドリームチャイルド』なんて映画もあったね。『~約束』は『メリー・ポピンズ』の原作者、パメラ・トレヴァーズの幼年時代をえぐり出すように描く。別にウォルト・ディズニーを賞賛するプロパガンダにはなっていない。パメラが映画制作にブチ切れながら、父の思い出に決着をつける物語。 『メリー・ポピンズ』の舞台裏を、子細に描いているわけではない(飽くまでプリ・プロダクションまで)。そこがちょっと意外だった。
原題は『Saving Mr. Banks』なので、英字タイトルが出たとき「?」となる。
バンクスといえば『メリー・ポピンズ』の主役一家の苗字だ。そのお父さんを「救う」とは? 『メリー・ポピンズ』のラスト10分ぐらいは、お父さん主役のエピソードであった。ディズニー映画のくせに、リアルな社会人の葛藤をきっちり描いている。あのシーンに、ウォルトやパメラの(理想的とは言い切れなかった)父親像がネガ・フィルムのように重なる構成になっている。『メリー・ポピンズ』と『~約束』で、ひとつの映画という感じ。
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余談だが、『メリー・ポピンズ』をちゃんと知ったのは『スター・ウォーズ』ブームの頃だった。あの当時は、雑誌などで「SFX映画」の文脈で語られることが多かったため。
そもそも、完全無欠の美女が、人工的な空間にいるだけで何ともいえないエロティックな空気が漂う。SFX映画の万能感は、女優が発生させているような気がしてならない。(SFXとSEXが似ているので「SpFX」なる表記が『地球防衛少女イコちゃん』の広告で使われたが、もちろん定着しなかった。)
SFX映画に成人女性が出てくると、「こんな幼稚な映画に、わざわざ付き合ってあげてる」感じがして、何ともマゾヒスティックな気持ちになってしまう。
『ブレードランナー』で、ハリソン・フォードがショーン・ヤングを酒に誘うが、「そんなお店は趣味じゃない」とフラれるシーンとかね。(どうでもいい話だけど、『メリー・ポピンズ』に出てくる少年は、J.F.セバスチャンそっくり。)
ともあれ、『メリー・ポピンズ』がSFXを一切使用していなかったら、ジュリー・アンドリュースがこうまでエロティックに見えることはなかったであろう。
子供たちを寝かしつけてから、メリー・ポピンズが編み物をはじめる。眠りにつくころ、細くあいた扉のすき間から、両親の見ている洋画の音がもれ聞こえてくる――あれは、世界の広がりをこっそり伝える、不思議な安心感のある音だった。
(C)2013 Disney Enterprises, Inc.
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