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2014年3月14日 (金)

■0314■

明日誕生日でもあるし、ちょっと贅沢しようと思って、初日に行ってきた。『アナと雪の女王』。3D上映すらない吉祥寺プラザは、場所のせいか天気のせいか、かなり空いていた。
98987ディズニーは「絵を実写に近づける」ことと、「実写(というより現実)を理想化する」ことを、両方向から同時に行ってきたスタジオだと思う。それは、『白雪姫』以降、ずーっと続いてきたチャンレンジだった。CGになっても、そのチャレンジの方向は変わっていない。
「本当は焦っているんだけど、愛想笑いしなくちゃいけない」とか、「怒っているんだけど、ちょっとは嬉しい」とか、微妙な感情表現を完璧に美しく描いている。開幕20分ぐらいは、溜め息しかでない。CGだから、変な自我や主観、甘えが入り込まない。全世界に向けて発信するのだ、どこへ出しても恥ずかしくない作品にするのだという気高い理想が感じられて、神々しいぐらい。「全人類を説得する」「世界をくまなく侵略する」勢いだね。凶暴ですらある。

アカデミー主題歌賞の『Let It Go』も、ストーリーの流れの中で見ると、素晴らしく良い(私が見たのは、日本語吹き替え版)。解放感のあるシチュエーションがいい。
……が、溜め息をついていたのは、そこまで。後は冗長。段取りが多い。わざわざ時間差をもうけて、すぐ近くにいるはずのキャラクターを出会わせない(後で出会わせるため)など、「次のシーンのためのシーン」が多い。アクションがつづくので、キャラクターの表情もオーバーに類型化されてしまう。

『風立ちぬ』はアカデミー賞を逃がしたけど、それはハリウッド帝国に「侵略しきれなかった」証だと思う。文学性という意味では、日本アニメの方が30年以上、先を行っている。……というか、私小説みたいなものを何億円もかけて映像化している日本のアニメが、独特すぎるんだよね。
実写映画よりも、アニメを見たほうが、その国の国民が「現実」とどう折り合いをつけているか見えてくるような気がする。


(こういう話の流れで書くと、別の意味が生じてしまうかも知れないけど。)
昨夜、EX大衆の編集者から、お詫びの電話があった。二人で苦労してつくった『タイバニ』の記事、校了日に大きな直しが入ってしまったとのこと。
校了日に「直してください」と言われたら、それはもう呑むしかない。編集は「そこを切ったら、つまらない記事になりますよ」と抵抗してくれたそうだが、何しろ校了日だ。雑誌が出せるかどうかの瀬戸際なので、やむを得なかったという(そりゃそうだ)。

大きく切られた(というか消された)のは、テレビシリーズでシュテルンビルトの街が危機に陥るシチュエーションが『ダークナイト ライジング』とよく似ている……と書いた箇所だ。もちろん、『タイバニ』のほうが先だと注記しておいたが、「他作品と比較するな」という権利元の意向らしい。
だから、アニメ業界は引きこもっているというんだよ。「ハリウッド映画と比べるな」なんて、甘えている。そんな風だから、アニメ・ファンの外にいる人たちを引き込めないんだよ。

現場がどんなハイレベルな作劇や絵づくりをしていようとも、宣伝だの広報だのといったセクションで「僕たちに分かるような記事にしてください」と矮小化される。どうすれば、価値観の違う相手に魅力を伝えられるかなんて、考えたこともないんだろうな。


「オトナアニメ」に書いた『銀河漂流バイファム』のレビュー記事は、サンライズの担当者が大幅に書き直して、そのまま「廣田恵介」名義で出版されてしまった。(このときは弁護士に相談し、告訴の準備までした。)
ライター個人の著作権をないがしろにしておいて、自分たちの作品を動画サイトにアップされたら、たちまち「権利侵害」と怒り出すからね。お子様としか言いようがない。

「組織は守るが、個人は叩く」国民性が、ここでも露骨に発揮されている。
ライターや編集者が集まると、「○○社の宣伝の□□がまた…」「えっ、アイツが担当なの? じゃあ絶対に記事にしない」といった話題は、かならず出る。
それ以上に、アニメ会社のご機嫌をそこねないよう、初めから当たりさわりのない公式サイトみたいなレビューを書くライターが増えている。権利者が「ここを凄いと誉めてほしいな」と思ったところを、そのまんま記事にしてしまう人。外注の広告屋に徹するなら、それはそれでいいんだろうけど、本人は広告をつくっている自覚がなかったりするんだよな。

「業界の中だけで、誰もが損しないように仲良くやろう」と考えると、流れが滞留して、水が濁るよね。……こんな簡単な教訓すら通じない相手ですよ。僕を日々、困らせている人たちは。

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