■0210■
都知事選が、前回より低い46.14%の投票率で、終了しました。
僕の投票した宇都宮けんじ氏は、第二位で982,594票。ちょっと調べると、お金持ちの住んでいそうな都心の区では、細川護熙氏のほうが上回っています。お金持ちは、家柄のいい有名人に投票したってことだろうね。クソッタレめ。
僕は震災直後から脱原発を言ってきたし、たくさんの脱原発デモに参加してきた。原発の本も読みあさった。だけど、細川の言うモア~ンとした「原発依存をやめ、自然エネルギーで雇用を♪」という主張は、どこか別の国の話を聞いているかのように実感がなかった。
なのに、一万人ぐらいの人々が街頭演説に集まった。みんな、テレビを見ているような感覚なんだろうな。結果、956,063票。
そもそも、いま原発一基も動いていないし。「電力不足で電車が止まったのは、脱原発どものせい」といまだに言う人いるし。原発停めてるのは、原子力規制委員会と電力会社だけの都合なのに、彼らは決して権力側にたてつこうとしない。権力に迎合することで、自分は孤立してないと錯覚したがる。
だが、「寄らば大樹の陰」的な卑屈さ・老獪さは、95万人の脱原発志向の都民にも同じことが言えてしまう。彼らは東京の汚染実態に目を向けようとせず、あいかわらず「福島かわいそー」「地方がかわいそー」という軽薄な優越感から、単なる潔癖と偽善から「原発やだー」と駄々をこねていたに過ぎない。
2011年3月15日と21日、屋外で呼吸していたか換気扇・エアコンを使っていた都民は、もれなく被曝したはずである。必要のない被曝をさせられ、しかもその事実をこの国の行政府はしばらく黙っていた。僕の怒りの立脚点は、自分の身体が無用な被曝させられたことにしかない。
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都民の脱原発志向の浅はかさの他、もうひとつ、気がついたことがある。
田母神俊雄氏に投じられた、610,865票である。20~30代が最も多く、合わせて30%を超えている。「若者は選挙に行かない」と大人たちはいうが、田母神支持者は雪の残る街路を、自発的に投票しに行ったわけだ。この事実に、もっと瞠目せねばならない。
選挙のたびに書いているが、せっかくの日曜日、PCやスマホが普及したご時世、歩いて投票所まで行かなくてはならない――この制度は、早朝の散歩が好きな高齢者には向いているかも知れないが、若者にはフィットしない。彼らは日曜昼間は遊ぶか、休みたいはずだ。
つまり、若者たちは高齢者に有利なルールの中で戦うよう無理強いされているのであり、投票率が低いのは当たり前のことなのだ。
ところが、田母神氏に投票するために、61万人が自発的に行動した。田母神氏は、原発も放射能も安全だと主張している。靖国神社に参拝もしている。安倍晋三が参拝で世界的に叩かれているというのに、まるで空気を読まない、わが道を行くのが田母神という男だ。
「戦争する国、絶対反対!」と、僕もデモや抗議活動で叫んだが、田母神の耳にはまったく届いていない様子だ(笑)。「デモはテロ」などと怯えてもいない。これは強敵である。彼の言動には100%反対だが、彼の頑迷さが若い世代に支持された事実は、厳粛に受け止めるべきと思う。
「戦争反対」「原発反対」では、若者は動かない。リベラルな人たちは、「若者は政治に無関心」という。いや、違う。戦争も原発も大賛成な若者たちが、確かに存在するのだ。彼らの意志は固い。
その固さの理由を知ろうとしなければ、本当の日本のリアル、お花畑ではない生々しさに触れることはできない。
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宇都宮氏は75歳以上の医療費を無料化すると公約したが、同時に18歳以下も無料にするといった。若者を使い捨てるブラック企業を規制し、最低賃金を底上げすると宣言した。
実情に即しているし、若い世代の生活を支えるにはベストな政策。これはこれで、まぎれもないリアルなのだ。大人の示しうる精一杯の良識だ。
ところが、高齢の有権者どもは舛添要一に投票してしまった。若者の未来より、てめーらの現在を優先した。国を滅ぼすのは、いつだって現世利益にすがりつく老人たちなのだ。
ジジイたちはこう言っているのだ。「国が滅びるとしたら、政治に無関心な若者たちの自己責任だよ」と。怒れる若者たちの答えは、選挙への参加拒否。押井守流に言えば、「自分たちが勝てもしないゲームに乗るものか」というわけだ。
もうひとつが、田母神氏への61万票である。……これは盲点だった。いや、僕は自分の盲点を発見しては喜ぶ癖があるのだが、あまりにも強固な事実だ。「原発はもちろん、戦争まで行ってしまえ」という若者たちが、顔の見えないネットでほざくのではなく、旧態依然とした投票行動の中に存在している――。体系化しえない、何かが起きている。
舛添都知事の誕生などより、「田母神61万票」は、僕の心を揺さぶる。戦慄というより、感銘に近い。あいかわらず、僕は原発を容認できないし、反対活動はつづけるだろう。しかし、原発も戦争も積極的に肯定する若者たちの存在は、僕の胸に刺さって抜けないトゲとなった。■
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