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2014年1月19日 (日)

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NNNドキュメント'14「反骨のドキュメンタリスト 大島渚 『忘れられた皇軍』という衝撃」の再放送を見る。
140112番組は、1963年放送の『忘れられた皇軍』本編と、関係者のインタビューから成る。番組で取材された元日本軍の在日韓国人たちが、その後に起こした訴訟にも大島渚は顔を見せており、当時のビデオも出てくる。

1963年というと、僕の生まれる4年前。『鉄腕アトム』が放送開始され、ケネディが暗殺された年。『忘れられた皇軍』本編には、当時の雑踏に重ねて、谷啓の「愛してタムレ」の陽気なメロディが流れる。
敗戦から20年たって、豊かな時代だったんだろうけど、あまりノスタルジーは感じない。いまの自分にとって生々しく感じるのは、家賃さえ払えずに困窮していた20代のころ。90年代の寒々とした雰囲気を、不思議と懐かしく感じる。その頃、僕より若いのに漫画喫茶に寝泊まりし、一日の大半を路上ですごす若者たちのドキュメンタリーを見た。あの底冷えするような無関心な都会の雑踏に、かえって身をあずけたくなるような濃密なリアリティを感じた。

いま、そういう番組あるのかね? この「反骨のドキュメンタリスト」という番組には、是枝裕和監督が出演していて、「今の政府になってから、ナショナリズムに人々の心情が回収され、それがひとつの救いになってすらいる」と語る。「8割が賛成するなら、残り2割で何が出来るのか。テレビというのは、それを考えるメディア」。「支持されなくても、やる。視聴率が低くても、つくる」。
いまのテレビがそうなっていないから、是枝監督はわざと言ったんだろうね。


それで、『忘れられた皇軍』を見て韓国籍の傷痍軍人たちに心傷むのかというと、むしろ、彼らは今の僕たちに近い境遇なのではないか、とゾッとさせられる。2014年に、この番組を放映するという狙いも、そこにあるんだろう。僕らは国に捨てられつつある、ということね。

「いや、俺はそんなことない」「俺は、国に捨てられてなんかいない」と言う人が大半だと思うよ。負けた人間ほど「まだ負けてない」と自分にウソをつく。敗北を受け入れて消化しないと、次には進めないとサッカーの監督も語っているというのに、日本人にはそれが出来ない。
日本人は、敗戦を「終戦」と呼びかえる欺瞞のうえに、アイデンティティを組み立てた。「実は負けていない」という虚勢から脱しきれない。原発事故が、それを明らかにした。「事故は大したことない」「だから、原発はやめない」「やはり、原発は必要だ」「いや、原発なしにはやっていけない」。言えば言うほど、負けた事実だけが明確化していく。

汚染地域で、わざわざグルメ・コンテストをやる。汚染されたシイタケを、わざわざ給食のメニューに入れる。「ああ、危険なんだな」と分かってしまう。やることがアベコベなんだよ。「食べ物が汚染されてしまって、困っている」と正直に言えば、みんなで救いあう気持ちが生まれるだろうに。
『忘れられた皇軍』の韓国人たちは、とりあえず「俺たちは負けた」ってところからスタートしている。報われなかったかも知れないが、理不尽を受け入れるよりはマシだと、彼らは考えたのだろう。「いやいや、俺らは負けてないよ」と自らを欺きつづけた日本人は、いま膨大なツケ、払わなくてもいいツケまでを払わされつつある。どちらが、精神的にマシなのか?と考えてしまう。

だって、目の前でヤバイことが起きているのに、「大丈夫だよ、こんなの」と事態を過小評価してる人って、一緒にいて怖いもの。そういう人と仕事していると、逃げだしたくなる。ダメならダメと、正直に言う人なら一緒に戦えるのに。


今日は、是枝裕和監督の『歩いても歩いても』も見たんだけど、阿部寛の演じる長男が「俺が失業していることは、親には内緒だぞ」と嫁さんに頼むところが、痛々しい。
携帯電話をとっては、忙しいアピールをする。そういう男、いっぱいいるじゃない。「忙しい」って言うと、安心できるんだよ。自分には役割がある、世の中から必要とされているぞって思い込めるんだろうな。
仕事がなくなったら、それは「世の中から必要とされてない」「自分の役割は終わった」ってサインでしょ。「さて、どうしよう」と、ポケットに手を入れて考えればいい。そういう態度でいないと、自由という広場には立てない。自由とはおそらく、安心の反義語なんだよ。

原発事故以降、みんな過剰に安心を求めはじめた。在日韓国人を差別し、罵倒する人が激増した。誰かを差別しているかぎり、「まだ負けてない」って思えるから。
「負けた」って認めるのって、気持ちいいと思うんだけどな。泣くのって、気持ちいいよ。涙が出ると、救われた気持ちになる。少なくとも、僕は「困ったんです」と正直に告白する人間以外、助ける気にはなれない。

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