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2014年1月27日 (月)

■0127■

チェ・ゲバラの死後から間もない1969年公開の映画、『革命戦士ゲバラ!』をレンタルで。
Sharifandpalanceドキュメンタリー調の演出が、かえってウソっぽさを醸しだして、不思議な味わいとなっている。映画という形態をつきつめると、そこにはカメラと俳優しか残らない。物語は、どんどんチェ・ゲバラが窮乏して追いつめられていく展開なので、キャストや小道具の少なさが露呈して、ちょうどいい具合に画面が貧しくなっていく。

娯楽性を強めようとして、銃撃戦や美女を登場させているが、それがかえってチープさを増幅し、まるで見世物小屋に迷いこんだような気持ちにさせられる。
CGによって後から修正できてしまう逃げ腰ではない、撮れば撮るほど欠乏していくフィルムと戦うゲリラ戦としての映画の姿が、ここにはある。どんな被写体でも、生身の俳優にはかなわない。街頭に出たカメラほど強いものはない。


ガンダムをテーマにした漫画作品には興味がなかったのだが、太田垣康男の『機動戦士ガンダム サンダーボルト』は、発売中の二冊をむさぼるように読んだ。
Photo3僕は、仕事で記事をつくるときは、自身も執筆メンバーに加わった竹書房の『ガンダム画報』を参照している。あれから十数年たって、もともと煩雑だった宇宙世紀年表は、さらに何度も上書きされてしまった。『サンダーボルト』はテレビ放映直前、富野由悠季監督がメモ程度に書いていた簡素な年表のニュアンスまで遡った感がある。
(その年表では、「3日戦争」によって40基のコロニーが地球に落とされたことになっている。落下したコロニーの数が「一基」に絞られたのは、みのり書房『GUNDAM CENTURY』からだったと思う。つまり、テレビの冒頭に出てくるコロニーは、40基のうちの一基に過ぎないはずなのだ。)

メカデザインこそ、バンダイ製プラモデルからインスパイアされてはいるものの、破壊されたコロニーの残骸に、半壊したビルや生活用品まで混じって浮かぶ壮大な空間設計は、富野氏の簡素な宇宙世紀年表を尊重したうえで、丁寧に組み上げられた新鮮な印象がある。


『サンダーボルト』の根底には、「宇宙で暮らす」ことへのシビアな実感がある。破壊された艦船の内部は無重力状態となり、死体の間に血が球となって浮かぶ。スパゲッティやアルコールは、飛び散らないようにパックに入れられ、無味乾燥としている。
宇宙空間で戦う主人公たちの生活感・人生観は、そのような苛酷さの上に成り立っている。富野氏の年表にある「サイド国家主義」は、生活環境の激変を視野に入れて考えだされたものだと思う。それをベースにしているから、かつてサイド4という自治体があった空域を奪還するための民兵部隊が誕生し、難民の貧しい暮らしから脱出したい志願兵が続出する。この作品では、ひとつひとつの悲惨、栄誉、野心が、「宇宙で暮らさねばならない」という人類の巨大な体感のうえに成立しているのだ。

その感覚は、CGで何でも可能になると慢心した日本の映像界が、忘れてしまった知性である。(山崎貴が『寄生獣』を撮るようではイカンのだ。)
富野氏が、簡素ながらも80年分の宇宙世紀年表を書いたのは、映像が貧しくなるのを覚悟してのことだと思う。作家の知恵と工夫が、たまたま年表という形をとったに過ぎない。セル画一枚に説得力を与えるための、膨大な勉強の成果が、あの年表なのだ。だから、やはり映像以上の答えはない。

『サンダーボルト』には、あのザックリした年表と、後半かなり乱れていたテレビの作画とを頼って描いた、一種の殺伐さがある。ハングリーさ、と言いかえてもいい。精神的に飢えていない者がつくると、表現はどんどんいい加減になっていく。


「飢えていない」から、ユーザーは公式だとかオフィッシャルだとか、手近な正解を求めるようになった。手早く、堅実なものにすがりたい。手探りで登山するより、ヘリコプターで安全確実に頂上まで行きたい。それは、本当は自分が何が欲しいのか、分かってない証拠なんだよ。
日本のアニメというのは、文化の端っこから繰り出されたカウンターパンチだったはずなんだ。「ガンダムは衝撃だった」って誰もが言うのは、ようは思わぬところからぶん殴られたって意味なんだ。

だけど今、自分だけは絶対に殴られない安全域から、届きもしない軟弱なパンチをポコッと繰り出す人ばかり増えた。そんなパンチで気がすんでしまうのは、やはり「飢えていない」からなんだよ。

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