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TSUTAYAに大島渚コーナーがあったので、『青春残酷物語』をレンタルした。1960年の公開。
桑野みゆき演じる17歳の女子高生が、川津祐介演じる大学生と美人局で稼ぐことを思いつく。だが、桑野の妊娠・堕胎をきっかけに二人は破滅へ向かう。
映画としては、凡庸な出来です。松竹ヌーベルヴァーグなら、吉田喜重や篠田正浩のほうが画期的なことをやっていた。だけど、大島は1960年の東京の街へカメラを出したんだよね。「今」をフィルムに焼きつけたんだ。
例えば、渋谷で学生デモを見ている桑野と川津。デモは本物で、街頭で見ている人たちも本物。望遠で狙っているから、セリフはアフレコだ。
後半には、当時、東京のあちこちにあったであろう建築現場が出てくる。その建築現場も本物。60年末には、所得倍増計画が閣議決定。豊かな時代だったんだろうな。
桑野の姉と、その元恋人が「僕らは学生運動で挫折したが、若い世代は欲望に生きている。だから、彼らは挫折しない」という意味のことを言う。説明的なセリフなんだけど、リアルに聞こえた。
つい先日、ネトウヨについて若い人と話す機会があって。彼によると、若い世代はお金を持ってないから、無料(あるいは格安)で楽しめる小さな娯楽をよく知っている。だから、それほど暮らしに不満は抱いていない。むしろ、社会に苛立っているのは30~40代じゃないですか、と彼は言う。だから、ネトウヨは高年齢であって、お金のない若者と同一視されたら迷惑だって。
いまや、世間知らずは若者ではなく、オッサンたちだって話。
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大震災の前年、肺がんで死んだ映画学科の後輩が言っていたよ。
「廣田さん。日本のアニメにとって、いちばん幸せな状態って何だと思います? 地球の裏側でも、どんな貧しい村の子供たちでも、ネット回線さえあれば日本のアニメが無制限に見られる……その日が来るのが、作品にとっても人にとっても、幸せなはずですよ」。
だけど、今のアニメは放送開始一分もしないうちに「番組の不正利用が多発しております……」。映画館に行けば、「NO MORE 映画泥棒!」 だけど、アニメのブルーレイは2話しか入ってないのに7千円だし、映画は1800円もするし、窮屈な時代だのお!
僕は『ゼーガペイン』のDVDを全巻買ったし、雑誌で何度か記事もつくったけど、最初に海外の違法サイトで『ゼーガ』を知ったことを、しつこく責められたよ。
君らも君ら、不寛容だよね。アニメでも映画でも「ネタバレ禁止」とかさ。ディスクの売り上げが悪かったら「爆死確定w」とかさ。権利者側の決めたルールと価値観だけは死守するのな。
カルメン・マキが東京電力への反発から、電気代を滞納したら「あなたこそ犯罪者ですよ」とコメントしまくる名無しの群れ。
政府や電力会社が決まりを破っても、僕らだけは決まりを守ろう――。敗戦国民の卑屈なアイデンティティは、ひそかに伝播しているのではないだろうか。「全面降伏したのだから、米軍基地は受け入れましょう。嫌がっている沖縄県民たちはワガママです。」「第五福竜丸の被爆をウヤムヤにするためにアメリカから原発が導入されたので、ありがたく使いましょう。」
「え? いま動いている原発はゼロだし、特に東電管区は、真夏のピークを原発なしで三度も乗り切っていますよ?」などと、本当のことを言ってはいけない。
仕方なく、やむを得ず、断腸の思いで、苦渋の決断で、不本意ながら、耐えがたきを耐えるのが大好きな国民なのさ。
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昨年末、山田太郎議員の児童ポルノ法規制強化反対キャンペーンのお手伝いをしたときに知ったのだが、エンターテイメント表現自由の会「AFEE(エフィー)」という組織がある。
このAFEEが、都知事候補者たちに都条例についてどう考えているか、公開質問状を提出した。
僕もうっかりしていたんだけど、SNSで自分の顔写真を載せるべきところに、美少女のアイコンがあるのって、かなり奇異に見えるらしいのね。それは海外だけでなく、国内でも。
だけど、「シナチョンは出ていけ」の排外主義者が「俺たちの趣味や嗜好の特殊性だけは、例外的に認めろ」なんて言っても、説得力ないよね。
明日24日、通常国会召集。児童ポルノ法改正案の提出が懸念される。プラカードを掲げただけで、警察官と自民党員に取り囲まれるご時世、いったい何が出来るだろう?
(C)1960 松竹株式会社
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