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2014年1月 8日 (水)

■0108■

いやいや、面白いぞ、『ゼロ・ダーク・サーティ』。最初は、字幕を追うので精一杯だったが、CIAの地道な捜査が、政治的判断から阻まれていく過程は面白い。
Bestofmovieszerodarkthirty1 9.11後、CIAは数万件の情報をもとに、数百人を拷問にあわせてきたが、ビンラディンに繋がる決定的な情報は出てこない。
ジェシカ・チャステイン演じる捜査官は、拷問に頼らず、現地での捜査に徹する。しかし、アメリカ人をターゲットにした爆破テロに巻き込まれて仲間を失い、彼女自身も銃撃にあう。
遅々として進まない捜査への苛立ちを、ガラス板に「拠点発見から○日目」と書きなぐるカットで見せている。作戦実行を渋る上官がジャバ・ザ・ハットのような体型だったり、ちゃんと視覚的に対立や抑圧を表現している。

ついにラディン殺害作戦が動き出し、ジェシカは特殊部隊の兵士たちと会う。
兵士たちは、馬蹄を投げて遊ぶゲームに興じている。それを見ているジェシカに、作戦実行の電話がかかってくる。目の前で、何も知らされていない兵士が「50ドル賭けようぜ」と馬蹄を投げる。馬蹄は、うまくポールに引っかかる。果たして、こんな風に作戦も上手く行くのだろうか? というより、自分のしていることは50ドルぽっち賭けるゲームに等しいのだろうか? もっと途方もないことが起きようとしているのではないか?
一言でいい表せない予感、不安が、見るものの心に沸き起こってくる。


先日、『星の旅人たち』という軽薄な作品を見てしまったせいか、どうすれば知的な映像が撮れるのか、つい考えながら見てしまう。
Zerodarkthirty33903_8まず、人物の手前や奥に、何か配するといい。絞りは開き気味にして、特に手前にあるものをボカすと深みが出る。遠景をボカすのも情感が出る。光源をハッキリさせ、暗いところは潰してしまう。安定した構図を避け、カメラをかすかに揺らし、カットの意味を膨らます。
また、シーンを最後まで見せない。そのシーンの意味は、次のシーンか、だいぶ後に分からせるようにする。電話の相手を、すぐには誰だか明かさない等、観客の興味を持続させる。

そして、引きの絵は「ここぞ」というシーンのためにとっておく。例えば、作戦が発動して多数の局員がいっせいに動いているようなカットは、1秒でも映れば「大きなことが起きている」と分からせることが出来る。そういう狙いがないかぎり、奥までピントの合った、明々白々とした絵は避ける。

――『星の旅人たち』は、これらの逆をやっている(笑)。ファミリー向けやコメディなら、すべてにピントが合っていて、即座にセリフの意味が分からないとダメだろうけどね。

拷問を担当していた男性のCIA局員が、猿をからかっていて、手にしていたアイスクリームを丸ごと取られてしまうシーンが良かった。意味があるようなないような、観客にゆだねるシーンがないと、現代の映画にはならない。その猿は、拷問されていたテロリストの比喩なのかも知れない。すると、CIA局員が自白した捕虜に、ごちそうを食べさせるシーンに意味が出てくる。
あるいは、まったく意味などないのかも知れない。そのような多義性をもった映像に迷わされる過程で、「映画とはこういうものだ」という先入観、自縛がほどけていく。


児童ポルノ法改正について、ジャーナリストの昼間たかしさんは、かなり悲観的な見方をしている()。
“早い話が、世の中の大抵の人とこの事件について話せば、ただただ「子供に欲情するのは頭がオカシイ」と思われるのが、事実である。なぜなら、具体的に自分の生活にどのような影響を及ぼすかをイメージすることができないからだ。”
まさしく、そういう状況だと思う。「児童ポルノ」という言葉そのものが暴力的なため、うむを言わさず「そんなものは撲滅だ」「法で潰せ」と、短絡的なリアクションしか示せない。
そういう人たちは、児童ポルノの法的定義を知らない・調べないくせに「ハダカはまずいだろう」「どうせ、見るもおぞましい物に決まっている」程度にしか考えていない。

だとするなら、少女のヌード写真を撮っていたルイス・キャロル原作の『不思議の国のアリス』はどうだろう。図書館から追い出さねばならないのではないか。いや、その前にナボコフの『ロリータ』は、問答無用で焚書だろう。キューブリックの『ロリータ』のDVDを持っている人は、単純所持で逮捕してはどうだろうか?

“いくら政治家や取り締まりを行う当局が「そのようなことはしない」といっても、国民の側の過剰な反応が一般化していく現象をとどめることはできない。実際に、まだ法改定も行われていないのに、すでに世の中には「児童ポルノとは何か?」ということを考えることなく、「子供のハダカ自体がダメ」という空気が醸成されている。そうした情勢に抗うことができる人は少数だ。”(前掲リンク先より引用)
アニメ『偽物語』に、忍野忍の入浴シーンが出てきたが、僕は「隠さなくていいのだろうか」と思ってしまった。「テレビでは隠して、DVDで出せばセーフでは?」と愚かにも考えてしまった。
「忍野忍は年齢600歳だからOK」などと、子供じみたことを言っていられる段階は、とうに過ぎたのではなかろうか。


『2014年問題の児童ポルノ法改正と共謀罪、特定秘密保護法に通じるもの』(
特定秘密法や共謀罪に実効性を持たせるため、児童ポルノの単純所持が、いいように使われるのではないか?という話。

だが、「特定秘密保護法に反対しているのは、在日」「サヨク」「プロ市民」と痛罵してきたオタクたちが、今さら児童ポルノ法規制強化に反対の声をあげるとは、とうてい考えにくい。
2010年の都条例改正のときは、多数の漫画家やラノベ作家、研究者、出版社らが立ち上がり、大規模な反対運動を展開した。
しかし今は、あの時と空気が違う。「政府の決めた方針に逆らうのは、ヘサヨのやること」。そういう人たちが連帯できるとは、やはり僕には思えない。

Jonathan Olley (C) 2012 CTMG. All rights reserved.

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