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2013年12月15日 (日)

■1215■

EX大衆 2014年1月号 発売中
Ex_taishu
●人気アニメ聖地☆巡礼の旅
扱った作品は『あしたのジョー』『機動警察パトレイバー』『頭文字D』『惡の華』『ゼーガペイン』 『東のエデン』『ガッチャマン クラウズ』『聖戦士ダンバイン』『幻魔大戦』『STEINS;GATE』『つり球』『らき☆すた』『ガールズ&パンツァー』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
『あの花』は、斎藤俊輔プロデューサー(アニプレックス)にインタビューもしました。

これは、編集部から「是非やりたい」と持ち上がった企画で、担当編集が『あの花』のファンだったので、そこは1ページ使って重点的に。僕のほうからは、『惡の華』『ゼーガ』『クラウズ』あたりを押し込んで、コラムのアイデア出して……という流れです。(取材写真は貴田茂和さん。)

だけど、二本ぐらいだったか、せっかく取り上げたようとしたのに「DVDの販売期間が終了しているので」と、掲載を断られてしまった作品があった。つまり、売り上げの悪かったアニメは、メーカーが「なかったこと」にしてしまう。
「みんな知らないだろうけど、こういう作品があったんだよ!」と、こちらとしては大声で言いたいわけですよ。なのに、「もう売ってないDVDだから、宣伝してくれなくて良いです」という冷徹な考え方に阻まれてしまう。

実写映画は、見ている人たちの多様性のおかげで、マイナー作品でも救済される。ヒットしなかった映画を愛好して、あえて記事にする人もいる。だけど、アニメの場合は「なかったこと」にされてしまう。長期的視野で商売してないんですよ。


原恵一監督の『はじまりのみち』を、レンタルで。製作委員会に、ちゃんとサンライズが名を連ねているのが素晴らしい。
E2e5b_230_68b48e2cd5698b39e19ef08f7木下恵介の生誕百周年記念映画だから、どうせ「半生を描く」構成なんでしょ?とナメていた僕が悪かった。原監督、ごめんなさい。映画は、木下恵介が病気の母をリヤカーに乗せて疎開させる、たった2日間の物語。いわば、ロードムービーの体裁をとっているのに驚かされた。

この映画を見た人は、誰でも「カレーライスの便利屋くん」を演じた濱田岳の存在感に圧倒されるんじゃないかな。悪人じゃないんだけど、自己都合最優先で、欲望に素直なため他人を傷つけてしまう……という、非常に多面的な、しかし、ありふれた青年。
金と女で、ころころ態度を変える便利屋くんが、繊細な木下恵介に「あんた、変わった人だなあ」と言うシーンで、ちょっとギクリとしてしまった。生命力旺盛なガツガツした人からすると、自分の信条にかたくなな人間なんて、「めんどくさいこと考えてるね」ぐらいにしか思われないんだよね。

母子の愛情を描いた作品に見えるだろうけど、映画監督を休業中の木下恵介と、そんな事情を想像すらしない便利屋くんの価値観が、あざやかに交差する物語だった。恵介に映画監督に戻る動機を与えたのは、ほかでもない便利屋くんだからね。

そして、「映画監督を休んでいる恵介」と「アニメ監督を休んで実写を撮っている原監督」の姿は、いやでも重なってみえる。


ここしばらく日本映画は見てなかったけど、『はじまりのみち』はドンピシャで「大戦末期の戦意高揚映画」……という、今日的なテーマを繰り出してきたな、と恐れ入った。監督が意図してなくても、時代性は、作品に入り込んでしまうんだろうな。

あるいは、今を生きる僕らは、時代性に鋭敏でなければならない。
戦争の話をはじめた恵介に、便利屋くんが「こんな話、誰かに聞かれたらどうする!」と困惑するシーンがあるけど、いま現在、口に出しづらい話題は増えつつあるよね。原発や放射能だけでなく、「こいつは、日当をもらって抗議デモに参加してるんじゃないか?」「愛国心が義務化されるけど、この人は内心どう思ってるんだろう?」とか。窮屈な世の中になってきたよね。
(ついでに言っておくと、僕は何度も、国会周辺のデモや請願に参加してるけど、一円ももらってない。労組の人たちは、何か縛りがあるのかも知れないけど。)

神山健治監督が言うように、「ほとんど全てのアニメが左翼構造」だった。アニメという表現そのものが、体制に迎合しづらいスタイルである気がする。良くも悪くも、個人の内面と親和性が高すぎる表現だよね。「はみ出し者のための娯楽」と、僕は考えていた。
ところが、いま最もお手軽に体制や権威に迎合しているのは、アニメ・ファンではないの? 大震災前から、何となく感じていた齟齬が、だんだん形になってきた気がする。やはり、もっといっぱい、色々な映画を見なくては……。  

(C) 2013「はじまりのみち」製作委員会

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