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2013年12月12日 (木)

■1212■

生まれて初めて、ディズニーランドへ行ってきた。
Ca4lxrl8僕のディズニーアニメ好きを知った人は、ほぼ間違いなく「じゃあ、ディズニーランドへは何度も行ったでしょう?」と聞く。しかし、「ディズニーランドへ行こう」と約束すると、なぜか相手と縁が切れるというジンクスがあった。女性関係では、「ディズニーランドへ行こう」の一言が、自爆装置のスイッチのようになってしまっていた。

しかし、今回はそういう事情を知る相手からのお誘いだったので、クリスマスの装いのディズニーランドを、ひっそりと楽しむことが出来た。


日が暮れてから、「もう夜だし、最後に、これでも乗って帰ろうか」と、二人乗りのゴーカートみたいな乗り物にのった。これが雰囲気があって、なかなか良かった。園のはじっこにある施設なので、小さなレースカーは、街頭に照らされた夜のハイウェイを走る――もちろん、とても狭いミニチュアのハイウェイだ。だが、薄暗い道は、果てしなく遠い。
コーナーを曲がる瞬間、ずっと小さな頃、誰もいない遊園地でゴーカートに乗せてもらったことを思い出した。自分の人生は、こんな遠くまで来てしまった。でも、少なくとも、ひとりではない。ひとりでなら、こんな寂しい街路を何度でも歩いてきたし、これからも歩くんだろう。でも今日だけは、ひとりじゃなかったんだ。

それと、ディズニーランドは今年で開園30周年なんだけど、「30年前の遊園地」という寂れた雰囲気が良かった。すでに、多くの施設が時代遅れになりつつある。その古臭さが、かえって味わい深さへ繋がっていた。
『カリブの海賊』は、『パイレーツ・オブ・カリビアン』がヒットしてから、ジョニー・デップのアニマトロニクスを、何体か追加したようである。だが、いくら何をしようと、あの蝋人形館のような得たいの知れない後ろ暗さ、見世物くささは消しようもない。
ただ、ヒゲ面の海賊たちが醜く笑い、酒をくらったり楽器をならしたりしているだけの、無限回廊。猫や山羊など、やたら家畜が多いのも、気味が悪くて良い。傑作なのは、「牢に入れられた海賊たちが、鍵をくわえた犬を招きよせようと、口笛を鳴らしたり骨をちらつかせているジオラマ」。もう、かなり意味が分からない。この光景をおぞましいと言いたいのか、笑わせたいのか、アトラクションの意図が不明。
「だから、何だっつんだよ? 何が言いたいわけ?」と苦笑していると、はるか向こうに見えるペンキで描かれた空の色が、怪しい紫色に煌いている――その、無声映画のような不気味な美しさは、狙って出せるものではない。


『ジャングル・クルーズ』も『イッツ・ア・スモールワールド』も、『ダンボ』などで披露されたディズニー特有の人種偏見が、いうなれば生き生きと無邪気にうごめいていた。そのグロテスクさすら、21世紀の今となっては郷愁を誘う。

郷愁といえば、ようやく初めて目にした『キャプテンEO』が、「あの当時の雰囲気のまま」とレトロ感を強調しているのも、印象に残った(日本でのオープンは1987年。当時はSFX映画好きの間で「もう見た?」「なんで見ないの!」と、近年で言えば『アバター』のような扱いだった)。
ところが、リニューアルした『スター・ツアーズ』とは比べるのも可哀想なほどSFXはつたなく、技術の古さが際立ってしまっている。まるでヤン・シュワンクマイエルのような、グロテスクな立体アニメーションが登場するが、それが程よい稚拙美へと熟している――。舌の上で転がすように味わうべき、大人のアトラクションであった。
(『キャプテンEO』の観客たちはおとなしいものだったが、『スター・ツアーズ』では女子高生たちが最初から最後まで拍手喝さい。僕が見たバージョンは、惑星ホスの氷原での戦いだったが、あのシーンが撮られたのは70年代の終わり頃のはずだ。それが、まぎれもない最先端の「今」の映像として楽しまれていることの脅威。コンテンツを使い捨てにせず、30年も40年も生かしてやろうという考え方のスケール感に、圧倒される。)

『スター・ツアーズ』の迫力には、さすがにビックリ仰天したけど、東京ディズニーランド全体が醸す“夢の終わり”感は、 『キャプテンEO』が象徴しているのは間違いない。
(そしてとうとう、僕は旧版の『スター・ツアーズ』を見ることはなかった。)


いわば、東京ディズニーランドと僕の歴史とは、何度も機を逸しながら、遅れに遅れて、今日ようやく交わったのである。遅すぎた。だが、丁度よかった。僕もディズニーランドも、歳をとっていたから。
シンデレラ城まで歩いてきて、「ディズニーランドって、こんなに狭いの?」と驚いた。だが、それは僕が来るのが遅すぎただけなのだ。それは甘美なすれ違いであり、出会いでもあった。

30年前、僕は16歳だった。ディズニーランドへ行くお金も相手も、いなかった。僕は思い出す。どこか遠い遊園地へ連れていってもらった日のこと、まだ僕に家族があった頃のことを。
退屈で憂鬱で、もう帰りたいのに、僕はソフトクリームを持たされ、えんえんと回るメリーゴーランドへ乗せられたままだった。なのに子供の僕は、楽しいフリをしなくてはいけない。

もうそろそろ朽ちてきて、ひょっとして飽きられているかも知れない遊園地。それがクリスマスのために健気にライトアップし、くどいまでに細かな装飾を施している姿は、何はともあれ、大昔に別れた恋人のように愛らしかった。

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コメント

ディズニーランドで『カリブの海賊』が一番好きです。
何故?と聞かれるけれど、うまく説明できないので
「何となく怖い感じが面白い」と言うしかなかったわ。

>牢に入れられた海賊たちが、鍵をくわえた犬を招きよせようと、口笛を鳴らしたり骨をちらつかせているジオラマ
もうほんと狙ってだせる雰囲気じゃないんだよね。ユーモア感出してるんだろうけど?不気味なんだわ...とにかく不気味〜

ヤン・シュワンクマイエルに夢中になった時があったけど、そういえば通じるものがある。

投稿: ごんちゃん | 2013年12月25日 (水) 22時14分

■ごんちゃん様
ディズニーランドのアトラクションは、あまり日本人好みにアレンジしてない気がする。
30年の間に、何度か改装したらしいんだけど、どれもこれも無理があって「一体どう反応しようか」と戸惑ってしまう。そこが面白い。

投稿: 廣田恵介 | 2013年12月26日 (木) 10時37分

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