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2013年10月15日 (火)

■1015 クロアチア旅行記・5■

小さな古都・ロヴィニ、2日目。朝7時、教会の鐘の音が町中に響く。
Cimg0176(←左側の建物が、僕の泊まったホテル。)
朝食をとるため、ホテル一階のレストランへ降りる。お姉ちゃんが「コーヒーと紅茶、どちらにしますか?」と、にこやかに聞いてくる。笑顔を見せる美女は、クロアチアでは初めて見た気がする。
朝食はいまひとつボリューム不足だが、なんとスイカがあったので、味わって食べた。スイカ、日本ですら何年も食べていない。

明日の朝、バス・ターミナルまでタクシーで行きたい……と、フロントで話をする。しかし、白髪の知的な感じのフロントの女性は「それは無理です」と言う。ここまでタクシーで来たのだから、呼べないはずがない。「じゃあ、ターミナルまで歩いて行かなくてはならないの?」と途方にくれていると、「そうではなく、タクシーは、乗る当日に呼ぶ決まりになっているのです」。すごく丁寧に説明してくれた。「Thank you.Hvala.」と、お礼を言う。


朝9時すぎ、旧市街へ出かける。
Cimg0224_4どうしても、教会へ足が向いてしまう。雨がぱらついてきたので、一時間ほどで、いったんホテルへ戻る。
掃除の女性(僕より少し若いぐらい)が、部屋の扉をノックする。「ドアノブに掃除するかしないか、カードを出しておいてください」とのこと。この女性、何とも人懐っこい笑顔をしている。

昼近く、もういちど外出。簡単なパンとコーラを出す店に寄りたいのだが、朝からずっと、カウンターでオジサン2人が酒盃を傾けている。近寄りがたいので、小さなスーパーでビール、ベーカリーでパンを買い、海を見ながら立ち食Cimg0193い、立ち飲み。パンくずを投げると、すごい数の海鳥が寄ってきた。
僕が買い物したスーパーもベーカリーも、ザグレブに同一チェーンの店があった。都会と変わらない味が、このような小さな観光地でも楽しめる。その辺りの、いわば必然的に俗化している部分には、まるで抵抗をおぼえない。


また教会に行き、60メートルの鐘楼に登る。
Cimg0140うっかり、ポケットに入れていた札を落としてしまったのだが、係の青年が追いかけてきて「あなたのお金ですよ」と、届けてくれた。彼もまた、なんとも爽やかな笑顔をしていた。

教会内部の、クリーム色の有機的な内装に見とれる。胎内にいるかのような安らぎ。われわれの住む世界は、実はまだ母親の胎内であって、“本当の”外の世界はステンドグラスのように、きらきらと眩いのかも知れない。

トイレに行きたくなると、ついついホテルへ戻ってきてしまう(公衆トイレの使用料が高すぎるのだ)。
先ほど、ドアをノックした掃除の女性が、「本当に、部屋を掃除しなくていいの?」と聞いてくる。タオルは2セットあるし、こうやってちょくちょく戻ってこられなくなるので、掃除は必要ないのだ。
「じゃあ、明日は掃除するわね?」と言われて、答えに困る。明日は、もう帰る日なんだよなあ……。女性は、「あ、分かった」という顔をすると、人差し指と中指でトコトコトコッと、歩いて帰る仕草を見せた。とてもキュートだった。


午前中、小雨だった雨は、とうとう、どしゃ降りとなってしまう。
Cimg0200僕は、南側の港のカフェへ入り、ビールを頼んだ。ここで見張っていれば、遊覧船が動いたとき、すぐ乗れるはずだ。

すると、ただ一隻、港についた船に、人々がどんどん乗っていくではないか。僕も、彼らにまじって、その船に乗り込んだ。
……しかし、お金は? タダってことはないだろ? 船が少し離れた島につくと、客は全員、降りてしまった。どうやら、この島にあるホテルに人を運ぶためのシャトル便のようだ。
勝手に乗ってしまったので、ホテル客を誘導していたオヤジに「僕はチケットを持っていない」と言うと「チケット? そんなもんは必要ないよ」。じゃあ、乗ったままでいいんだな……と、二階の眺めのいい席につく。

船が動き出すと、さっきのオヤジが来て、「いや、悪かったな。チケットはいらないと言ったCimg0211が、実は、ひとり40クーナとることになっているんだよ」。40クーナなら安いものなので、その場で払った。
(←この荒海の中、ひとりでカヌーを漕いでいる猛者。)
オヤジは「Have a goodtime.」と言って、去っていった。……いや、その一言が余計なんじゃない? それは商売っけがありすぎるでしょ。飽くまで、ホテル客用のシャトル便なんだから。

是が非でも、ロヴィニでは船には乗るつもりでいたから、ぜんぜんいいんだけどね。


あれだけ激しく降っていた雨が、急にやんだ。お別れのつもりで、また教会へ行く。
Cimg0184もう夕方なので、観光客は少ない。教会付近は、犬の散歩にくる人が多いのだが、茶色い中型犬をつれたオジサンが「ハハハ!」と楽しそうに犬に話しかけながら、「チュッ!」と音が聞こえるぐらいのキスをしていた。つい、笑ってしまった。

しばらくして、桟橋へ移動すると、そのオジサンが愛犬とまったり和んでいたので、また笑ってしまう。どんだけ犬好きなんだよ、と。

夕景が、いい感じになりそうなので、ケバケバしい看板のカフェに入り、ビールを頼む。
Cimg0237
旧市街は、すっかり寂しくなったが、港のほうには、まだ大勢の人が歩いている。子供の声がすると、何だかホッとする。僕の隣の席では、60歳ぐらいの夫婦が、仲良くソフトクリームを食べている。
Cimg0238_2


さて、今夜も安そうなレストランを厳選して、夕食をとることにする。
魚料理が食べたかったが、背が高くほっそりとしたボーイは「今日は、魚料理はできないんです。パスタの中から選んでください」と言う。パスタは好きじゃないので、ムール貝のリゾットにした。

先にきたビールを味わっていてると、背の高いボーイがやってきて、「どこから来たんですCimg0239か? ひょっとして日本?」「東京ですか? 東京には、百万人ぐらい人が住んでいるんでしょ?」
話し好きの若者だなあ、と思っていたが、そうではなかった。彼は『ラストサムライ』を見てから侍に魅せられ、叔父さんと一緒に刀の模型を自作してしまったほど、日本好きなのだ。
彼がケータイで見せてくれた写真には、着物をきた彼の肖像画まであった。「僕は日本に行って、刀職人になりたいんだよ。東京には、刀職人はいるの?」

僕は、なんとか、この青年の喜ぶことはできないだろうか?と、考えた。彼の名前を聞き、メモ帳に日本語で、「○○よ、君はクロアチア最高の侍だ」とか適当なことを書くしか、思いつかなかった。
彼は、日本語で「ありがとう」と何度も言っていたが、あまり嬉しそうではなかった。チップを渡すとき、「円はないの?」と聞かれた。ああ、日本円か……! ホテルに戻れば、スーツケースの奥にあるけど、この店からでは遠すぎる。無理してでも、とってくれば良かったんだろうか。今でも、悩む。
「いいんです、気にしないで」と、彼は笑ってくれたのだが。


僕たちは、外国人が「サムライ」「ニンジャ」と言うだけで、「プッ」と笑ってしまう。しかし、自分たちだって侍や忍者について、きちんと説明できるわけじゃない。自国の文化なのに、自分たちが最もバカにして、何か分かった気になっている。ただ、覚めているだけだ。
そして、今の日本は、とても海外から人様を呼べるような状況ではない……。

明日は、この小さくて控えめで、人間くさい人たちの住む、静かな都を離れる。
階下のレストランから、昨夜も今夜も、趣味のいい音楽が流れてくる。ペトゥラ・ クラークの『恋のダウンタウン』のような、古いポップスや、ジャズ。それらを聞きながら、僕はまどろむ。

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