■1013 クロアチア旅行記・3■
帰国した夜から、原稿修正の依頼があり、さっそく仕事に追われています。
以下、クロアチア旅行記、第三弾です。
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モスクワで一晩、クロアチアの首都ザグレブで二晩を過ごした。旅行4日目は、貿易港のあるリエカという町へ移動。
アパートメントをチェックアウトしたのは、お昼12時ぐらい。長距離バスが出るのは14時なので、バス・ターミナルまで、ゆっくり歩いていくことにした。……が、これが大失敗。荷物が重たい。トラムの乗車券はキオスクで売ってるんだけど、キオスクがないんだわ、この通りには。
ザグレブ中央駅に着いたときには、もうヘトヘト。駅前で果汁入り飲料水を買って、休む。宗教勧誘のオバチャンが来る。「Sorry」と断ると、「Dobro(Goodという意味)」と言って去っていった。
一時間もかかって、ようやくバス・ターミナルに到着。17クーナのハンバーガーを買って、ターミナルで食う。ちゃんと温めてくれる上、「ケチャップかマスタードかける?」と英語で聞いてくれる。高いだけあって、美味い。で、我ながら呆れはてるんだけど、ターミナルのメディアショップで『Winx Club』の本が売っていたので、買ってしまう。アホ。
着せ替え遊びのできるマグネットが付いて、25クーナ。コミックがメインでありつつも、『Winx Club』のキャラが、ファッションや音楽を紹介している雑誌のような体裁。もちろん、すべてクロアチア語という珍本。
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ザグレブのバスターミナルは立派で、鉄道よりバスのほうが圧倒的に発達しているのが、よく分かる。
『地球の歩き方』には、ザクレブからリエカまで、バス代は最低91クーナと書いてるけど、実際には86クーナだった。タクシーとは比較にならないぐらい安い。
で、リエカ行きのバスには、お客さんがいっぱい乗っていて、席の番号が分からない。すると、周りのオバチャンたちがクロアチア語でいろいろ話しかけてくれて、なんとか自分の席が見つかる。「ハワラ」と、頭を下げまくる私。何を言ってくれていたのか、さっぱり分からなかったけど、ありがたかった。
バスの車内は、オバチャンたちが楽しそうに会話していて、すごく和やか。あと、ケータイの着信音があちこちから聞こえ、みんな普通に長電話してます。
リエカまで、3時間。少しずつ、車窓からアドリア海が見えてくる。
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そして、片側にクレーンなどの湾岸施設、もう片側に町の喧騒が見えてきて……この町 は、ザグレブとは違う! バスの中から、もう心がざわついてきた。リエカには一泊するだけなので、この町の空気は、今夜のうちに吸わなくてはならない!
ダッシュで、明日のロヴィニ行きのバス・チケットを買う。立派なターミナルなどなく、なんとなく事務所っぽい受付っぽいところへ駆け込み、「ここでバスのチケットも買えますか?」と聞く。OK、買えた。
そして、ホテルまで歩いていけるだろ……と、大きな荷物を引きずって、ホテルとは逆方向へ歩き出してしまう。すると、『時をかける少女』のポスターが! ザクレブで国際アニメーション映画祭が開催されていて、『おおかみこどもの雨と雪』が上映されたのは知っていたけど、リエカでもやってるの?
どうやら、この町の映画館では毎年、日本映画の特集上映をやっているらしく、『時かけ』以外では『わが青春のアルカディア』『銀河鉄道999』『太陽の王子 ホルスの大冒険』『カフカ 田舎医者』を上映! この町、気に入った!
とりあえず、ホテルの場所が分からないので、バスの止まった辺りへ引きかえす。この界隈のざわつき感、普通ではない。
タクシーにホテルの名前を告げ、部屋に入るやいなや、荷物を置いて飛び出す。早くしないと、この町のザワザワした感触を味わえない!
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ホテルは、タクシーでは数分だったけど、さっきの騒がしい辺りからは離れている。もはや、勘をたよりに歩くしかない。多分、絶対にあっちだ!すると果たして、すっかり暗くなった広場のあちこちに、若者たちが黒い塊をつくっているのであった。店頭で、サッカー中継を流している店がある。ゴールが決まるたび、ビールを手にした若者たちから歓声があがる。
子供たちが、通りで赤い風船を蹴飛ばして、笑っている。閉まったオモチャ屋のショーウィンドウを熱心に見ている子供もいる。19時すぎ、たいていの店は閉まっているのだが、まだ誰も帰ろうとしない。エネルギッシュだ。ザクレブの整然とした空気が、この町にはない。今夜こそ何かをぶっ壊してやろうと、町と人とがケンカをはじめようとしている……そんな真夏の夜のような雰囲気だ。
そして、広場のあちこちに、また『時かけ』のポスターが。僕はキオスクでビールを買って、酔いを楽しんだ。夕飯を食べていないことに気がつき、マクドナルドが雑然とにぎわっているのを発見した。駆け込んで、「BIG TASTY」をテイクアウトで注文。ビッグマックとフライドポテトのセットだ。
マクドナルドもまた、親子連れや若者でごった返しており、注文の列がとぎれないのであった。
何かイライラとした情熱が、町からあふれ出ようとしている。僕は広場の石垣に座り、ビッグマックをビールで楽しんだ。今日は日曜日だ、と気づく。それで親子連れが多いのか。
僕の前に、誰かが座る。注意をひくように、咳ばらいしている。無視してポテトを食べていると、何かブツブツと言って、立ち去った。「ジャポネ」という単語が聞こえたので、ひょっとしてフランス人?
20時近く。明日は早いので、まだ熱の冷めないリエカの町を後にすることにした。きっと、彼らには、まだまだ娯楽が足りないのだろう。小さなアートスペースがあったが、そんなものでは足りないのだろう。
リエカには、古城や大聖堂などもあるという。だけど、僕には、何かを楽しみたくてイライラしている若者たちの発する熱、それだけで十分だった。
泊まったホテルは、手でエレベーターの扉を押して開けねばならないほど、古い建物だった。
翌日は、いよいよ最終目的地のロヴィニへ向かう。
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